二十一話 みくちゃんの不安
月曜の朝、俺はだるい心持ちで目が覚めた。
理由は、土曜日にあんな料理(?)を食わされたせいでせっかくの日曜日を休むことなく寝込んでしまったからだ。
俺の体感としては休日無しで2週間学校に行く気分だ。
すると、誰かが俺の部屋の扉を開く。
「お、お兄ちゃん、起きた…?」
琴音がビクビクしながら俺の部屋に入ってくる。多分俺に怒られると思っているのだろう。
…もちろんそのつもりでいたんだが、ビクビクしている琴音を見てると可哀想になってきた。一応琴音たちだって一生懸命に作ってたらしいし、俺と同じく日曜日寝込んでいたからな。疲れてるだろう。
「起きてるぞ。それと琴音、こっちに来なさい」
琴音はビクッとするとトボトボと俺のベットの横にペタンと座った。
俺はベットから起き上がっていた状態なので見下ろす形になっている。
俺は俯いている琴音の頭を優しく撫でる。
すると、琴音が俺を上目遣いで見てきた。
「琴音が頑張って作ったのは分かったし、気持ちもちゃんと伝わったから。怒ったりしないよ。…料理なら今度教えてやるからさ」
「お…お兄ちゃん!ありがとぉ…」
抱きついてきた琴音を優しく撫でる。
琴音は頭を撫でられるのが好きだからな。
俺は琴音が離れるまで撫で続けた。
下に降りると母さんが、あんた達は朝から元気ね~なんてニヤニヤしながら言ってきた。
え?俺はオムライス(?)のせいで逆に疲れてたんだけどな…
琴音は顔を真っ赤にしている。なんかあったのだろうか?
ーーー
学校も終わり放課後になった。
高校二年生の勉強に入り始めたが、幸い俺はどうやら地頭が良いのでついていけそうだ。
俺は保育園に急いで向かう。戦隊ごっこをすると約束した子を結構待たせてしまっていたからな。
今日は職員室に挨拶はしないで直接パンダ組に向かう。本当は向かう教室の先生に挨拶するだけでいいのだ。
でもなるべく職員室には行くようにしている。まぁ礼儀としてなんだが、行かない日が続くと、園長が不機嫌になってしまうからだ。一回そんなことがあって園長がいじけてしまった事があった。
そんな、子供じゃあるまいし…
「こんにちはー!」
俺は元気よくパンダ組の教室の扉を開きながらあいさつをする。
「はるとおにーしゃんきたぁ!」
「だっこぉー!」
「せんたいごっこだぞ!」
俺の周りに園児達が集まってくる。
後ろの方にみくちゃんもいた。
あっ…そうだった。冷姫にみくちゃんに近づくなとかなんだとか言われてたな。
よく分からないけどなるべく近づくのは控えよう。
俺は抱っこをせがんできた子を抱っこしながら戦隊ごっこの約束していた子の話を聞く。
どうやら俺は敵役らしい。…いいだろう。敵役として極悪非道の限りを尽くそうではないか!
俺は戦隊ごっこをする子たちと場所を移動するらしく引っ張られながら歩いていった。
ーーー
【未郁side】
はるとお兄さんが来るのはいつも自由時間の時間だ。だから多分きっともうそろそろ来るはず。
ーーガラガラガラ
「こんにちはー!」
あっ、きた!!
はるとお兄さんの声を聞いただけで私は胸が暖かくなってきて、顔なんか見ると口がニマニマしてしまう。どうしてだろう?
「はるとおにーしゃんきたぁ!」
「だっこぉー!」
「せんたいごっこだぞ!」
お兄さんは人気で来ると直ぐに他のみんなに囲まれてしまう。
私は少し勇気がないのでいつも後ろの方で眺めているだけだ。
それでもいつもはるとお兄さんは笑顔で見てくれているから嬉しい。
今日も後ろからはるとお兄さんを眺める。
あ!目が合った!
すると、はるとお兄さんはすぐにフッと視線を外してしまった。
……ど…どうして…?
お兄さんとはまだ会ってそこまで経ってないけど、こんな事は1度たりともなかった。毎回私に微笑んでくれた…
わ、わたし…嫌われたの…?
そう思った瞬間、急に胸が苦しくなった。
いたい、これは…なに?
お兄さんは他の子を抱っこして男の子たちと一緒に行ってしまった。
私はいつもより遠いところから、他の子たちに笑いながらこちょこちょしてるお兄さんを眺めた。
どこも怪我してないはずなのに、いたい…
私は何もすることが出来なくて、その場で立ち尽くしていた。
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