二十話 お料理対決
「さー始まりました!まず両者ともに冷蔵庫からオムライスの材料を取り出します!」
うんうん。二人ともちゃんとレシピ通りに材料を取り出している。
「まずチキンライスからつくるようです!」
用意するのは基本的に…ご飯、トマトケチャップ、鶏肉、玉ねぎ、バターだな。
最初に熱したフライパンにバターを入れる。そのあと鶏肉と玉ねぎを炒め、玉ねぎを飴色にして、その後ご飯を入れてパラパラになってきたらトマトケチャップを入れる。
酸味が抜けるまで炒める。
これでチキンライスの完成だ。
2人とも少しぎこちないが今のところおかしなところは見られない。
これは安心して食べることができそうだ。
「ここで琴音選手!トマトケチャップを投入します!……おや?何かをポケットから取り出したようです」
…ん?トマトケチャップだけでいいはずなんだが…
多分、塩コショウとかだろう。味を整えるための。
「琴音選手、ポケットから取り出した調味料を惜しみもなくドバドバ入れていく!」
…えっ?あれなに?
なんか黒っぽくてドロドロしてるんだけど…
あれ食べ物?
「おっと!あちらでは向日葵選手、何やら不思議な粉を入れているようです!」
…は?ちょっ
何やら金色の粉を振り掛けてるんですけど…
…やばい薬じゃないよね?
「両者共にオリジナルの調味料をいれるようです!これに対して春斗さん、どう見ますか?」
「いや、何入れてるの!?どう考えても調味料じゃないでしょ!」
「そうこうしているうちに両者、卵に取り掛かるようです!」
「おい!ちょっと待てって!」
二人は自信満々な顔で卵を二つ割り、ボウルにいれてから、また謎の物体を入れ始めた。
卵1、謎の物体3、位の割合で入れている。
「両者同時に卵をかき混ぜ始めます!すごい!あの大量に入れた調味料がみるみる溶けていくぅ!」
あれって調味料なのか?
うわっ…琴音のボウルが黒い光を放ってる。
向日葵はボウルから放つ金色の光で姿が見えない。
2人が放つ黒い光と金色の光はぶつかって、争うようにせめぎ合う。
…………うん…なにこれっ!!
「チキンライスに卵をのせる工程が光によって見えないー!おーっと!見えていないうちに盛り付けも終わり、完成していたようです!」
琴音は真っ黒くテカテカに光ってるの何かを皿に乗せて、向日葵は金色に光った謎の物体を乗せてこちらに向かってくる。
それはさながら死へと誘う死神のように。
すると母さんがスっと立ち上がった。
「これはこれは~、あ、お母さんこれから用事あるの思い出したわ。んじゃ!」
母さんは光の如き速さで玄関から外へ消えていった。そ、それはずるいだろぉ!
「そ、そういや俺もこの後用事が…」
俺は椅子から立ち上がりそろりそろりと抜け出そうとするが、琴音と向日葵がガチっと俺の服を掴んで阻む。
「お兄ちゃん?どこに行こうとしてるのかな?」
「春斗?逃がさないよ?」
迫ってくる二人の目が怖い…!
なんで俺にだけそんなに固執するんだぁ!
母さんは!?追いかけようよ!!
いきなり琴音が俺の背中によじ登ってくる。
「お、おい!そんなことしたら危ないだろって…」
俺は腰を屈めて姿勢を低くする。
それが琴音たちの目的だと気づかずに。
「んぐっ…」
いきなり重くなった。何かと思いチラッと後ろを見ると向日葵がさらに登っていた。
小柄な女子でも二人はさすがに重く、耐えきれず俺は地面に倒れ伏してしまった。
「琴音ちゃん!今のうちに!」
「はいっ!」
琴音が俺の手首と足をを縄で縛っていく。
二人の絶妙なコンビプレーに為す術もなく、拘束されていく。
本当は仲良いだろお前ら!
「ちょっ…やめろぉ!」
俺は椅子に座らされ料理を迫られる。
だが俺は断固として口を開かないぞ!
「どうしてそんなに嫌がるのでしょう?」
「頑張って作ったのに…」
琴音と向日葵は少し悲しそうに言う。
そんなのと言われると本当に申し訳ないけど、このオムライス(?)を見てみればわかる。
これ食ったら死ぬ!
「と、途中まではよかったんだ!けど二人とも、変な調味料いれたよな!?あれ何!?」
俺は必死に二人が作ったオムライス(?)が普通ではないものだと教えようとする。
「あれ?気づいちゃった?琴音の好きな食べ物を全て詰め込んだの!隠し味として少し入れてみたけど、少し黒くなっちゃったかな?」
「私はねー、なんかどっかでやってた元気になる?サプリ?それらをいっぱい集めてすり潰したの!金色を光ったし成功したのかな?」
いや…気づかない方がおかしい。
光ったから成功ってどこの世界の話しだ!
見事に二人ともやばい。
「なんでそんなもの入れたんだ?」
俺は二人のオムライス(?)を見ながら尋ねる。
「だってそのままじゃ向日葵さんに勝てないかもしれないし…お兄ちゃんに私の好きなもの食べて欲しかったから!」
「琴音ちゃんに勝つため!そして春斗に元気になって欲しかったから」
そうだったのか…
そんなこと言われると余計に食べないのが心苦しい。
「お兄ちゃん!だから食べてね?」
「春斗!あーん」
二人はそれぞれ作ったオムライス(?)をスプーンですくって俺に近づける。
いやだぁ!食べたくないぃい!
俺は口を塞ぎ首を曲げて抵抗する。
「しょうがないね」
「うん、琴音ちゃんお願い」
すると琴音は俺の鼻をつまんできた。
い…息ができない…
このままじゃ…口を開けるしか…
俺は耐えきれず口を開けてしまった。
そこを琴音と向日葵が我先と自分のスプーンを俺の口に入れる。
な…なんだこれは…目の前が暗くなっていく…
ーーーー
「あれ?お兄ちゃん?寝ちゃったの?」
「そんなー!感想ききたいのに!」
二人は気を失っている春斗をつんつんとつつく。
「しょうがないからお互いに交換して食べ比べしない?」
「いいですね、それ」
向日葵の提案に琴音は頷く。
ふたりは自分のオムライスを互いに交換する。
「「いただきます」」
ーーはむっ…………どさっ…
ーーー
「しゅたっ…お母さん、帰還しましたー!ん?あれ?みんなー!どこにいるの~?んおお!!寝転がってる!?」
彼らが目覚めたのは翌日の昼だった。
幸い日曜日だったから学校に行けかったということは不幸中の幸いである。
何があったのか彼らに聞いてみると、誰かが川の向こうで手を振っていたのが見えたと言う。
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虐められていた女の子を助けるお話
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