表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/26

十八話 決意

ーーおかあさん?どこいくの?


「おじいちゃんと一緒にちょっとお買い物行ってくるから、お家で待っててね」


ーーその言葉を最後に母と祖父は帰らぬ人となった。



私、東雲 冬華は祖母一人に育てられた。

母と祖父は交通事故で亡くなり、父親は離婚していない。


離婚した理由は父親の不倫だった。


私は離婚しても特に悲しくはなかった。父親はあまり私と遊んでくれなかったし、小さい頃だったのであまり記憶もない。


だが、今の私は父親を恨んでいる。

成長してからだんだんと恨む気持ちが生まれてきた。多分不倫というものを理解してきたのだろう。


今思い返すとあの男はクズだった。

亡くなったお母さんとおじいちゃんの葬儀にも来ることは無く、養育費も払われたこともなかった。


それからだろうか、私は男というものが全て父親のようなものだと思い、嫌いになった。

そして、男は不埒で最低なものだと思い込んで生きてきた。

男子がしつこく話しかけてきたり、いやらしい目でみてくるのは、この性格に拍車をかけていただろう。


だから私は勉強も運動も完璧を演じ、近寄り難い雰囲気をだし、冷たく接して男を近づけないようにしている。まぁ…素で冷たく接しているのだが…

それでも近づいてくる輩がいるのだから本当に男は嫌いだ。


もちろん、完璧を演じる理由はそれだけではない。私を一人で育ててくれたおばあちゃんに心配は掛けないようにするためでもあった。

そのために家では勉強をして、走り込みもして、頑張って学年上位をキープしている。



ーーそんな時だ

みくちゃんがうちにやってきた。


みくちゃんは父親……あの男と不倫した女との子供だ。

みくちゃんはあの男と不倫した女に捨てられた。育児放棄だった…

父親が逃げて、母親は一人で育児に耐えられなかったらしい。

まだ3歳だったみくちゃんは、おばあちゃんに引き取られた。


この事実はみくちゃん自身まだ知らない。

たまに「お母さんはどこ?」と聞いてくるので胸がズキッと痛む。


やはり男はクズだ。



ーー私は男に頼らない

一人でも生きていける人間になるんだ

そして、私がみくちゃんとおばあちゃんを支えていく


ーーー

【春斗side】


「し、東雲さん…」

「こんにちは、寺坂さん」


何やかんやこうやって対面して話すのは初めてかもしれない。席隣なのに…


「な、何か用ですか?」

「いいえ、少し話がありまして…」


ーー怖いなぁ…

俺は気を引き締める。

あの冷姫だからな…どんなことが話されるのか分からない。


「迷子になっていた未郁を助けていただきありがとうございます」

「ああ…どういたしまして」


冷姫はスっと頭を下げる。

そういやお礼も言われていなかったなぁ…

今まで冷姫が何故か怖かったので気に出来なかった。


「未郁を助けていただいたことには本当に感謝しています…」


お礼が遅れたことについてはそこまで気にしていない。そんな何度も言われなくても…


「……ですが…」


ーーー!!

いきなり雰囲気が冷たくなった。


「未郁を誑かすだけのだけはやめていただきたい」


冷姫は俺を睨みつけて言う。

……誑かす?俺がみくちゃんを?

そんな覚えないんだが…


「あのぉ…俺…そんなことしました?」

「なにを今更そんなこと言っているのですか?」


えっ!?そこまで言われる!?

ーーマジで覚えがない…


「未郁は………いえ、なんでもないです」


冷姫は一度言いかけた言葉を飲み込んだ。

……みくちゃんに何かあったのだろうか


「とにかく今お付き合いされている方がいるのに、ほかの女に手を出すのはやめてください。……本当に嫌いです」


冷姫は苦い顔をして、早歩きで行ってしまった。

…最後の言葉は本当に心の底からの言葉だったように感じる。


………ん?俺、付き合ってるの!?

俺…モテないし、告白されたこともないよ!?

人なりにお付き合いしたい気持ちはあるけど、残念ながら出会いがない!


結局、あれこれ考えてみたが冷姫が言ってることはよく分からなかった。

だって…みくちゃんを誑かしてないし、付き合っている彼女もいない。

ほかの女に手を出す?

もってのほかだ。


「まぁ、出来るだけ冷姫とみくちゃんに近寄らなければ大丈夫か…」


また冷姫に何か言われるのは嫌なので、関わらなければ問題は起きないだろう。

みくちゃんには少し悪いけど…


そろそろ行かないと怒られるな…

俺は遊ぶ約束をしていた園児たちのもとに向かった。

読んでくださってありがとうございます!

よかったら評価、ブクマよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ