十七話 カオス
遅くなりましたm(_ _)m
「ただいまー」
「「お…おかえりなさい!あなた」」
「「「「おかえりー!パパ」」」」
うちは大世帯だなぁ…
妻が……2人、子供が男の子1人、女の子3人、ペットの犬が1匹だ。
「わんわん!」
「よしよしぃー」
お犬さん役の男の子が抱きついてくる。
その子を抱っこしてやり頭をナデナデする。
「わんわん♪」
「あー!パパわたしもー」
「パパー!だっこしてー!」
うちの子供たちが俺の足にひしっとくっつく。か…可愛い…
「こらこらだめでしょ?パパを困らせちゃ」
ママ役の園長が子供たちを窘める。
「「ごめんなさーい。パパ」」
「パパは大丈夫だよ?」
俺は子供たちを撫でてあげる。
すると子供たちはにまーっと笑顔を見せる。
「さぁ、ご飯にしましょう」
どうやら、みくママがみんなのご飯を用意したらしい。
もちろんフリだが…
「ぴんぽーん!」
「はーい!あなた!今手が離せないから出てもらえる?」
みくちゃん再現度高いな…
俺は返事をしてインターホンが鳴った方向を向く。
ここで一つ、園長と俺は、園児達と視線の高さを合わせるためにしゃがんでいた。つまり上など見えていない。
「はいはーい」
「こんにちは!おとなりさんですー」
「はいどうぞー」
「ーーそれと…東雲 冬華です」
ーーーえ?
俺は恐る恐る顔を上げる。
そこには、目に光が入っていない冷姫が俺を見下ろすように立っていた。
「あ!お姉ちゃん!」
みくママは笑顔で出迎えた。
ーーー
【冷姫side】
私はパンダ組の中を覗き見ていた。
みくちゃんは………あっ、いた。
どうやらみんなと話し合っているらしい。
いつ見ても天使だわ!みくちゃん!
あんの男は園児たちを優しい眼差しでみている。みくちゃんは見るな!
これから何をするのだろうか…
話し合いは終わったらしく、みんな位置に着く。
「ただいまー」
……なるほど、おままごとか。
みくちゃんの役は何なのかしら!
「「お…おかえりなさい!あなた」」
ーーーっ!!
みくちゃんは妻役!?
しかも園長と2人で!?
………………ハァハァハァ……息をするのも忘れてしまっていたわ。
ちょっ…落ち着きましょう。
ステイクール…
…ふぅ……
…………………あなた呼びっ!?
みくちゃんにはちょこちょこ読み書きなど教えているけどそんな言葉教えた覚えはないわ!
そっそれにあんなに顔を赤くして…恋する乙女じゃない…!
「ぴんぽーん」
「はいはーい」
こ、これはすんなりここに入るなら今しかない!
私は急いでインターホンを鳴らした子の後ろに行く。
「こんにちは!おとなりさんですー」
「はいどうぞー」
あの男はしゃがんでいて私に気づいていないようだ。ここではあくまで自然に挨拶を。
「それと、東雲 冬華です」
あの男は少しビクッとすると、ゆっくり顔を上げてきた。
彼と目を合わせた瞬間、自分の中の負の感情が前に出てしまい、少し睨んでしまったかもしれない。
危ない危ない…園児たちの前だし、何よりみくちゃんがいるからね。
なるべく怖い顔しないようにしよう。
……できる限り。
ーーー
【春斗side】
なっ…何故ここに冷姫が……
俺はなるべく平然を装いながら、お隣さんと冷姫を招き入れる。
「え!みくちゃんのおねーちゃん?」
「あれれ?役はどうなるのー?」
園児たちが互いに見合って戸惑う。
「みくちゃんのお姉さんだから、みんなのおばさんになるのよー」
ここで園長先生が園児たちにナイスなアシスト。
まぁ、普通にいけばそうなるけど…
「…ってことは俺からするとおねえさん…」
ーーギロッ
ひいっ!冷姫が俺の呟いた言葉に反応してきた。
「お姉ちゃんはそのままお姉ちゃんなんだねー」
「そうねー」
みくちゃんが笑顔で冷姫に話しかけると俺に来る鋭い視線は消えた。
……ふぅ…どうしてか俺は冷姫に嫌われているようだ。
ちょっと後でみくちゃんに冷姫のことを聞いてみようかな…
「いまからごはんなのー」
「おとなりさんもいっしょにたべよー?」
「いいですねー」
話はどんどん進んでいく。
「ママのおねーさんも、どーですか?」
「そ…それいいわね!」
冷姫は戸惑いながらも返事を返す。
「もぐもぐ…おいしーねー」
…あれ?冷姫の言葉使いが優しい…
もしかして…冷姫は子供好きだったりするのかな?
みくちゃんに優しかったのは見たことがあったが他の子にも優しいんだなぁ…
その優しさを一ミリでも分けて欲しい。
「あっ…あなた…食後はお休みになりますか?」
「あ…あぁ…」
いやだから、みくちゃん再現度高いって…
ーーーぞわっ
なんか寒気が……
「そっそれじゃあ…こっち来てください」
「お、おぉ…」
…なんか…本当に夫婦みたいだな。
ーーーひょあっ
さらに寒気が…
「わ、私も…」
「は?」
え、園長っ!?
ーーーうぺぇっ
ここは南極ですか?
ーーー無視してたけど…やっぱり冷姫だよね。
もうガクブルなんですけど…
「お姉ちゃん?どうしたの?」
「いいえ?なんでもないわよ」
みくちゃんの言葉を冷姫はひらりと躱す。
いやいやーナチュラルに嘘つきすぎでしょー
お隣さん役の園児が、手をあおぐようにしてママ役のみくちゃんと園長に話しかける。
「おくさん方、きいたとーりですねー」
「「なにをです?」」
ん?なんのことだろう?
「だんなさんと、らぶらぶ、なんですって」
「えへへー」
「ふぇ?」
「は?」
頭をかいて恥ずかしがるみくちゃんに、間抜け面になる園長と俺。
園長は少し顔が赤いような気がするけど…
ーーーうおっとぉ
氷塊が飛んできたと思って頭を下げてしまった。
もう心がもちません…誰か助けてぇ…
「あっ!いけない。結構時間たってしまっていたわ」
慌てて園長が立ち上がった。
「みんなごめんね。園長先生これからやらなくちゃいけないことがあるの。また今度遊ぼう?」
「「「「「「「えー」」」」」」」
園児たちは悲しがるが、また遊んでくれると聴くと渋々了承してくれた。
俺的にもそろそろ氷漬けにされそうだったのでここで終いにしたい。
「園長先生が来た時にまたしよう?」
「「「「「「「うん!」」」」」」」
俺は園児たちの誘導に成功し、おままごとをやめる事ができた。
おままごとが終わった瞬間、逃げるように1度教室を出る。
「はぁー…疲れた」
俺は空を見て呟く。
園児たちは元気で、たまについていけなくなるけど、今回はおままごとの設定や冷姫のせいで、どっと疲れた。
「へぇー…疲れた、なんていいご身分じゃない」
俺は上を向いたまま声のした方に首を傾けると、そこには、冷姫が腕を組んで睨みつけるようにして立っていた。
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