第一の試練②
「ん……?ここって……」
目が覚めた彰はどこかデジャブを感じる。どこまで続くのか分からない真っ白な空間と自分が寝ている畳。
「ああ、俺また死んだのか…試練は失敗で地獄行き決定か…でもなんだこれ?」
銃を撃たれて死んだ時と同じ状況から、自分がまた死んだことを悟る彰であったが、その時とは自分の状態が違うことに気付く。力が漲っている感覚。今までの自分の存在とは遠く離れた存在になったような感覚を感じていた。
「あ、神様……」
ふと近くに神がやって来たことに気付くと、神はフルフルと震えながらこちらを見ている。当然だろう、第一の試練の、しかも1日も経たない内に死んでしまったのだから怒るのも当然だと考え、謝ろうとする。
「期待に応えられずすみませ……」
「すまんかった!!!」
「え?」
彰は神のいきなりの謝罪に動揺する。7つの試練を超えて神を継ぐ。なんて言った自分がこんなにもあっけなく死んでしまったというのに、どうして神が謝るのか分からなかったのだ。
「怒らんで聞いて欲しいんじゃがな?本当は第一の試練に送る前に神から力を与えるのが習わしだったんじゃ…ついすっかり忘れておってのお……」
「ついすっかりじゃありません!ほらもっとちゃんと謝ってください!」
突然表れたユーフィリアが神に向かって怒鳴りつける。主従関係とは一体…と彰が戸惑っているとユーフィリアの怒りはヒートアップしていく。
「主様が私を呼ぶ前に力を与えたのだと思って、無責任な発言ばかりしてしまったじゃないですか!!神堂様なら大丈夫とか言って!あんなに危険な目に合わせて!」
いつもは慈愛に満ちた表情で怖さなど微塵も感じないユーフィリアであったが、その時だけは少し肝が冷える彰。だが自分を危険に晒したことにここまで怒ってくれるユーフィリアに少し嬉しさも感じてしまう。
「す、すまんかったユーフィリア。」
「謝るのは私にじゃありません!」
「も、申し訳ないのう彰よ……」
謝らせて少しは溜飲が下がったのか、怒りを収めてこちらへ向くユーフィリア。
「神堂様、誠に申し訳ありませんでした。私も主様にしっかりと確認しておけばこんなことにはならなかったはず……」
「い、いえ、でも試練失敗には違いありませんし、俺ってこのまま地獄行きなんですか?」
「いえ、今回はこちらの不手際でしたので試練は不成立です。ですので神堂様の気持ちが変わらないのであれば再チャレンジが可能です。ですよね主様?」
ユーフィリアは笑顔で神に問いかけるが、いつもの優しさは消え、有無を言わさぬ表情であった。……ちょっと怖い。
「う、うむ、お主が望むなら力を与えた状態でチャレンジが可能じゃ。ワシのミスじゃから少しネタばらしをするんじゃが、あの森林ではワシが与えた力を使えるようにならねば生き残れないようになっておるんじゃよ。あそこのモンスターなど普通の人間の状態のお主には絶対に倒せん。そのままならかすっただけでも致命傷になりかねんからの。」
(ん……?かすっただけでも致命傷?猪にモロに体当たりくらったんだけどな……いやでもユーフィリアさんも何も言わないし、アレはモンスターじゃなかったってことか……?)
一瞬怪訝に思うが、試練を見ていたはずのユーフィリアが何も言わないことから勝手に自分で納得する。
「何はともあれ、すまんかった。お主が望むのならば力を与えて再チャレンジさせることができる。どうする?」
あの男のことが知れるのであれば是非もないと思った彰は考えることもせず答える。
「俺はもう1度やるよ。しかも神様、俺がそう答えるの知ってて、もう俺に力を与えてくれてるんでしょ?さっきから何か力が漲ってるんだ。自分が自分じゃなくなったみたいな。」
さっきから漲っている力は神が自分が寝ている間に与えた物だと彰はそう結論付けた。
「主様、見直しましたよ。そこまで神堂様を信頼してくださっていたのですね。では神堂様、善は急げとも申します。もう1度第一の試練に向かいましょう。」
「はい、ユーフィリアさん。行きましょう。」
「あ、え、ちょ?まだワシは……」
神が何かを言いかける前にユーフィリアと彰はその場から姿を消した。
「力……与えてないんじゃがのう……?」