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第十二話 天使様は魔法陣の上で紅茶を堪能したそうです。

「なんで、わたしが呼び出されることになったのか」

「どーせ暇でしょ。呼んであげたことに感謝しなさい」

 愚痴をこぼしながらついてくる来る悪魔に、呼び出した天使が大仰に答えた。

 なぜかヘブンちゃんがヴィズを呼び出したのである。曰く、大勢の方が楽しかろうっと。

「こんな大勢に来てもらえて、今日は楽しい会になりそう」

 嬉しそうなめぐりちゃんの言葉。

 これから彼女の案内で、魔術研究会へと向かうところなのだ。

「そういえば、魔術研究会って何人いるの?」

「えっと、十人だけど、みんな不定期に来るんで全員が揃うことはないよ。少ないときは会長だけ出てたりとか。今日は何人来るかな?」

 会長一人だけ出てるときがあるのか、寂しそうである。それは勧誘もしたくなるだろう。

「みんな女子高生?」

 どこに興味を示すのか、ヴィズの問い。

「確かに、男性会員はいないです。こういう、おまじないとか占いって女子の方に人気があるせいかもです」

「血を吸わせてもらえないかな?」

「ヴィズは今日も貧血なのか?」

 わたしの質問に、ヴィズは首を横に振る。

「今は足りないわけじゃないけど、食べれるときに食べるべし! これがわたしの信条よ」

輝乱きらんちゃんは、吸われ過ぎで休んじゃってるんだから、ほどほどにね」

「ほどほどというか、なるべくならご遠慮願いたいかと」

 引きつり笑顔で廻ちゃんが返す。

「ここです。ここで活動してるんです」

 廻ちゃんが案内してくれた場所は、工事現場の横というか、元図書室の横。何も表示はないが明かりが付いてるし、人の気配もする。

「会長~連れてきましたよー」

 返事を待たず、廻ちゃんが扉を開けた。

 開かれた扉の向こうは、なんというか、明かりは付いているが暗かった。

 黒い厚手のカーテンで窓は隠され、壁も黒い布で覆われている。

 床には直書きで五芒星の魔法陣が書かれているが、あとで掃除するとき消すの大変そうだなと思ってしまう。

 五芒星の各頂点には背の高いローソク立て、その中央に黒いローブ姿があった。

 長身のローブ姿がこちらを見る。

「おお、愛香まなかちゃん、ヘブンちゃんいらっしゃい! 今から紅茶入れるからね! っと、そちらの愛香ちゃん似の子はどなた?」

 魔術研究会の会長こと、星乃法界ほしのほうかい先輩が、わたしたちの後ろの人影を指す。

「こんにちは、法界さん。こちらはわたしの悪魔、メルヴィズことヴィズちゃんです。特技は貧血で好きなものは女子高生の体液ですー」

「愛香ちゃん、貧血は特技じゃないってー」

 わたしの的確な紹介に、茶々を入れるヴィズちゃん。

「おお、輝乱から聞いてるわ。ヘブンちゃんと同じ不可思議生物だって?」

「不可思議生物なのか、わたしたち」

「そーらしいね」

 ヘブンとヴィズが半眼で見つめ合う。


「ささ、冷めないうちにドーゾー」

 会長の入れてくれた紅茶が全員に配られる。

 教室にあったテーブルを囲み、皆でしばしティータイム。

「いただきます」

 明かりは付いてるんだが、周りが黒だらけなせいで、紅茶の色合いがいまいちつかめん。

 淹れたててで熱そうなので、息を吹きかけちょっとだけ口に含む。

 ほのかな甘みと、やや強い苦み、けどすべてがそっと溶け消えてすっきりした感じがする。

 ちらりと横を見ると、熱さとか関係無いのか、一気に飲み干してるヘブンとヴィズ。一気に飲まれてしまうと、いい紅茶の入れ甲斐が無いというものだ。

「学校内でお茶を淹れて飲むというのが初めてで、なんだか不思議な感じです」

「なんか、いけないことをしてる感じで、いいでしょう?」

 わたしの感想に、廻ちゃんが笑みで答えた。

「なんか、紅茶飲んだ感じ」

「鉄分……具体的に言うと女子高生の血液とかが入ってると、なお良かった」

 変な感想の不可思議生物たち。

「えっと……もっと飲む?」

 法界さんの問いに、

『いただきます』

 二人の声がハモった。

「法界さんは、ここで何をしてたんですか?」

 床の魔法陣を見ながら質問する。

「いい質問ね愛香ちゃん」

 法界さんはわたしを指さし、不敵な笑みを浮かべた。

「わたしたち魔術研究会では、今現在、召喚についての研究が盛んなのよ」

「召喚……ですか」

 魔女が悪魔と契約してるのを思い浮かべる。

「召喚で魔術というと、世間一般では悪魔の召喚を思い浮かべるようだけど、わたしたちはいろんな対象を扱ってるの」

「なんか呼び出したりできたんですか?」

 わたしの質問の声に、ヘブンちゃんのお茶をすする音が重なる。また飲み干したのか、自分で急須からお茶を注いでいる。あ、テーブルの上にあったお菓子を、断りもなく食べてる。始めてきた場所なのに遠慮がない。

「あーえっと、なんか召喚できたりとか?」

 気を取り直し、改めて同じ質問をしてみた

「えっと、うん、成功例は二つだけあるわ。ひとつは降霊会で、怪獣の幽霊を召喚できたときね」

 え? 怪獣の幽霊って……なんか嫌な予感がする。

「えっと、降霊って、もしかして誰かに霊が乗り移ったりとか?」

「いい感ね、愛香ちゃん。そのときは、たまたま輝乱が来てて、あの子に降臨したのよ」

「えっと、それでどうなったのかなーっと……」

 恐る恐る聞いてみる。

「奇声を上げて、どっかへ走って行っちゃった。後で、ボロボロになって自宅に帰ったと連絡あったけど」

 校門が壊れた事件は、法界さんのせいだったのかー。いや、直接壊したのはヘブンちゃんだけど、原因はあっちだよね。

「はぁっ……まあ、終わったことだし、もーいいですかね……」

 ため息ついてあきらめ声のわたしを、不思議そうな目で見ながら、法界さんは話を続けた。

「もう一つは、タロット占いと妖精導きのハイブリッドね」

「ハイブリッド?」

「わたしが、妖精を呼び出そうと儀式してる横で、別の会員がタロット占いしてたの。そうしたら、どう干渉したのか、タロットの大アルカナ魔術師から絵柄が消えて、大量の魔女が出てきたの。どうにかしようって思ったけど、あっとゆう間にどっかにいなくなっちゃった」

 あー、これもこの人の仕業なのか。

 今は工事中となっている図書室の方に視線を向ける。

 いや、これも図書室をぶっ壊したのはヘブンちゃんとヴィズだけど、原因は法界さんである。うむ。

「えっとぉ、つかぬ事をお聞きしますが、最近、校門が破壊されたり、図書室が壊れたりしてますよねぇ……」

「そう、ね。なにか、想像もつかない怪奇現象が起きているのではないかって、何人かの会員が原因究明の調査に乗り出したりしてるけど、今のところ、まったくの謎ね」

 気にはしてるけど、関連性にはまったく思い至ってないようである。

「愛香、むつかしい話してるー」

 食い飽きたのか、抱き付いてほおずりしてくるヘブンちゃん。

「むつかしい話じゃないし、さっきの話でヘブンちゃん、なんか思わない?」

「思わなーい」

 この子はまったくもって気楽である。

 ヴィズの方は、廻ちゃんと血を吸わせてもらえないかの交渉中である。

「さて、愛香ちゃん。今日呼んだのは、新しい召喚術に付き合ってもらいたいからなのよ」

 どうしよう、すごく帰りたい。

「あと会員が二人来たら始めようと思ってるんだけど、何をしようとしているか分かる?」

「えっとぉ、魔法陣があるからぁ、もしかして……悪魔でも、召喚するとか?」

「おしいわね! 悪魔じゃないわ、神を降臨させるの!」

 また騒ぎが起きないか不安である。この場にヘブンとヴィズがいるし。

「今まで何度か試したんだけど、失敗だったの。さすがは神! そう簡単にはいかないようね。けど今日は違う! なにせ天使と悪魔が儀式に参加するんだから。なんか魔力とか不思議な力が働いちゃってうまくいっちゃったりとかするかも!」

「けっこう、てきとーなプランなんですねぇ……」

 テンションマックスな法界さんとは逆に、下がりまくってるわたし。どうしよう、止めるべきかな~。


 やがて会員が二人現れ、儀式が決行されることとなった。


大変遅くなりました。

執筆環境揃ったのでまた再開です。

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