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第十一話 天使様に興味津々のお姉さま。

 その日も、学校はいたって平穏だった。

 校門が壊れてても、図書室が瓦礫になってても、この教室で天使がわたしに抱き付いていても。

 特に大きな騒ぎになったりせず、平穏だった。

 何故なのだろう。

「なぜなのか」

愛香まなかどうかした」

 学校のあっちこっちがぶっ壊れる元凶となった天使様から、お声がかかる。

「ヘブンちゃんが、いつも通り元気だなーって思ってただけだよー」

「ふふふっ、わたしが元気な理由、教えてあげようか?」

 不敵な笑みを浮かべるヘブンちゃん。

「わたしから養分でも吸い上げてるの?」

「おしいね君! たしかに愛香ちゃん成分を吸収することで、脳汁がどぱどぱ溢れ出て、ヘブン状態になるのが理由ではある! しか~し、それと同時に、わたしからもヘブンちゃん成分が愛香へと注ぎ込まれていくことで、二人の愛は共鳴し合い、互いに高みへと昇り詰めていくのよ」

 謎理論が展開された。

「わたし元気出ない~、ヘブンちゃんからの成分供給不足なのかな?」

 自分の机にふせぎ込みつつ、チラリとヘブンちゃんを盗み見る。

「まーなんということでしょう! よし、これは皮膚接触だけではなく口径摂取も執り行えという、天啓であると我は見たり!」

「何を見たのかはわかんないけど、教室でのキスはダメだぞ」

 ただでさえ、家で何度も求められてしまっているのだ。

「ダメなのかー」

 なおも駄々をこねるヘブンちゃんの口に、アメ玉を放り込んでやった。

 コロコロ鳴らしながらも、静かになった。

 静かになったところで、ため息が口をつく。

 隣の席を見やる。そこには空いた席が一つ。

 今日は輝乱きらんちゃんがお休みなのである。

 昨晩、図書館ふっ飛ばした後、ヴィズちゃんが血を出し過ぎたーと言って輝乱ちゃんに吸い付いたのだ。どんだけ吸ったのか知らないけど、それで今日は貧血でお休みという訳だ。

 流石は悪魔、加減というものを知らない。

 そんな物思いにふけっていると、クラスメイトからお呼びがかかった。

天竺てんじくさーん、お客さんだよー」

 クラスメイトが指す先には、扉の前で手を振っているめぐりちゃんと、もう一人、背の高い女性がいた。

「あ、廻だー」

 先に飛んでいくヘブンちゃん。

「こんちわ、廻ちゃん。こっちに来るとは珍しいね。それと……」

「わたしは案内役。会長が興味あるらしくて、連れて来たの」

 その会長さんが軽く会釈してきた。

「お久しぶり、てんちゃん」

「こんにちわ、輝乱ちゃんのお姉さん」

 そう、魔法研究会会長こと輝乱ちゃんのお姉さんである。

星乃法界ほしのほうかい。法界さんって呼んでね」

 法界さんは、流石は三年生な落ち着いた笑みを浮かべた。

「法界かー、ならわたしはヘブンちゃんって呼んでね」

 両のほっぺに人差し指を当てて小首をかしげ、可愛いアピールでヘブンちゃんが名乗る。

「えっとー、この子に用ですかね?」

 ヘブンちゃんの頭をペチペチ叩いて尋ねた。天使が現れたと聞いたら、会ってみたくなるのが一般ピープルである。

「お、おおお……」

 ヘブンちゃんを見た法界さんは、よだれの垂れそうな表情を浮かべつつ、ヘブンちゃんへとにじり寄っていく。

「へっ?」

 ヘブンちゃんから間の抜けた声が出たのと同時、法界さんはその羽に頬擦りしだした。

「ふぁぁぁぁっ、ほんものだぁぁ、本物の天使の羽だぁ~」

 感極まるとは、まさにこれのことか。

「ちょっと法界ちゃん、くすぐったいよ~」

 ヘブンちゃんの声に、動きがぴたりと止まる。

「性感帯とか?」

 公衆の面前で、真顔での発言だ。聞いてるこっちが恥ずかしい。

「そ、そんな感じかな」

 恐る恐るといったヘブンちゃんの返答。

 それを聞いた瞬間、頬擦りが加速して再開された! 指でも羽をまさぐっている。

「うえっふぇふぇふぇ、法界ちゃん、がんばっちゃうぞぉぉぉっ……」

「ひにゃああぁぁぁぁっ、が、がんばんないで、く、くださあぁぁあいぃぃぃ」

 身もだえするヘブンちゃんに、がんばる法界さん。

 確か、輝乱ちゃんも似たようなことしてたような……やはり姉妹か。

「えっと、法界さん、ヘブンちゃんの羽を触りに来たんですか?」

 わたしの問いに、動きを止めた。

「それもあるけど……」

「あるんだ」

「魔法研究会会長として、やはり異常現象に触れておきたくてね」

 確かに、めいいっぱい触れてはいる。

「ヘブンちゃん、その、もしよければ、わたしたちの会に入らない?」

「愛香がいないところには行かないよ」

「天ちゃん!」

 法界さんの視線がこっちを向く。期待のこもった眼差しを向けられが、これは、やばい流れである。

「たしか、今どの部にも入ってなかったよね、どう? 同じ図書委員の弦月げいげつちゃんも入ってることだし。 今ならサービスするわよ」

 やはり勧誘が来たか。

「えっとーセンパイ、わたし帰宅部で忙しいから……」

 パワーの有り余っているヘブンちゃんと違い、こっちは普通の乙女である。だるいことはしたくない。

「サービスって何?」

 こっちは断ろうとがんばってるのに、ヘブンちゃんが余計な発言を挟んできた。

「えっとー、そうねえ……」

「法界さん、なんも無いですよね。無理しなくていいですよ」

 無いなら入る理由はないし、例え洗剤や福引券をもらったとしても行くものか。

「校門や図書室を壊した犯人が誰なのか、言わないでおいてあげる」

「えええっ!? 知っているのですか法界さん!」

 廻ちゃんの方に視線を向ける。

 廻ちゃんは必死に首を振って、わたしじゃないアピールをした。となると……

「輝乱ちゃんから聞いたとか?」

「違うよ、輝乱からじゃない」

「なら、どこから?」

「それを知りたくば、魔法研究会に入るのだ~」

 両腕を広げ、あらぶるライオンのポーズを取る法界さんを見つめる。

 何か陰謀とかあるのだろうか? いや、そんな風に見えない。ポーズだってアホっぽいし。よだれを垂らして天使の羽を愛撫する変態さんだし。

「えっとー、天ちゃん、深く考えなくていいよ。うちの会って、お菓子とか持ち込んでわいわいおしゃべりするような所だし」

「ぐだぐだしてるだけなのか」

「たまに、降霊会とかサバトとか魔法書の解読とか魔法の実験とかするくらいで」

「そこがちょっと濃ゆいね」

「サバ?」

「サバじゃないよヘブンちゃん、サバト、悪魔の集会よ」

「もうひと押しね」

「全然もうひと押しじゃありませんよ法界さん。今はぐでぐで真っ最中です」

 わたししか突っ込みがいないと疲れる。

「ならば奥の手!」

 何をする気だ!

「今日だけでいいから、仮入会ってことで、だめ?」

 手を合わせて頭を下げてくる法界さん。拝み倒しに来た!

「うーん、まー今日だけならいい、かな」

 いい加減疲れて来たので、このやり取りを終わらせたくなった。これが世間でいう押し売り詐欺の現場というものか。

「ヘブンたち、今日お菓子持ってきてないよ?」

「わたしたちのお菓子分けてあげるからね」

「わーい」

 廻ちゃんに言われて喜ぶヘブンちゃんは、なんか子供みたいだ。そいえば、ヘブンちゃんとわたしは同じ顔だった。最近、今のヘブンちゃんみたいな表情したことあったかなーと思い、無いかなーとちょっと反省。もう少し、無邪気に生きてもいいじゃないか。

「今日の放課後、天使連れて行きますね」

「よっし、オーケー。ありがとう天ちゃん。ヘブンちゃん、放課後楽しみにしてるからね」

「お菓子の用意忘れるなよー」

 魔法研究会、さて、どんなところなんだろう。

自宅パソコンが壊れ、続きが書けず一週間。やっとパソコン買い換えられました。

この土日で再開します。

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