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第一話 天使様が少女とベッドでスキンシップしたいようです。

時は現代、春の大型連休が過ぎ、暑さが感じられるようになった頃。

とある住宅の、二階にある女子高生の部屋。

そこから始まる奇妙なお話し。

 中小のビルの合間を抜ける路地裏迷路。

 夜の冷たい空気の中、全力で足を動かす。

 自分の吐息と、地を蹴る音が耳の奥に妙に張り付く。汗がベタベタして気持ち悪い。が、それを気にする暇はない。

 自分を追う様に迫る爆発音。

 それが近付いてくる。それとともに足裏に少しずつ、しかも段々と大きく、振動も感じられてくる。

 それから逃げなきゃ! と思うが、どんなに全力で走ってもまるで距離を引き離せない。

 爆発音は、さらに自分との距離を詰めていき……


「ふあぁぁぁ~っ、ダル~~い」

 天井をぼーっと眺めながら、わたし天竺愛香てんじくまなかは、声を上げた。

 口に出して言ってみたら、ほんとーにダル~く感じてきた。

 目を開けて、声も上げてみたけど、起き上がる気力は沸かない。まだまだ、ふとんの柔らかい感触を堪能したい。夢の中で走って疲れたのだ。

 八畳ほどの空間。

 ベッドに勉強机にタンスに本棚。

 ちょっとした女子力アピールのつもりの、ピンクのウサギ柄パジャマは、汗まみれでしわくちゃだ。

 寝ていた時に抱いていた鉄火巻きのぬいぐるみは床に落下して、顔を地面に向けている。窒息しそうな体勢だな。鉄火巻きのマキちゃんかわいそう。

 汗まみれで気持ち悪い。シャワー浴びたいけど、すぐには起き上がりたくないなと思っていると……

 下半身に違和感。

 掛布団が絡みついてるのかーウザいなーとか思っていたが、意識がハッキリしていくにつれ、違うことが分かる。

 背筋に冷たいものが走る。

 何かがしがみついている感じ。

 ココはわたしの部屋で、わたしは一人で寝ていた。両親も仕事で家にいない。

 てことはあれだ、コレ、

(お、おばけ……!?)

 いやいやいやいや、怖い怖い怖い! 怖いのだめだって! 見たくない動けない、いやそんなこと起こらないよね! なんかじっとしてたら消えるよね! おばけはいないって、どこかの偉い人が言ってたもんね! 偉い人はすごいんだよね! 最高バンザイ! いややっぱ怖いから偉い人たち世界中からきて退治とかお祓いとかエクソシズムとかオーメンとかアッラーとかガンバレ! 応援するから、おねがいしまあああすうう!!

 頭の中で謎の呪文を唱えまくっても、やっぱりしがみついてる感触は消えない。

 消えないどころか、お尻にスリスリされた~!?

「ひにゃっ!」

 思わず自分の下半身を見る。

 掛布団から顔だけ覗いている、そいつと目が合った。

 それは、悪霊とかオバケではなく……天使だった。


 その頭には天使の輪っかがあった。熱も感じず、存在感も肌に感じられないが、確かに見えている。

 どことなく幼さの感じられる顔立ちに、こちらに向ける好意と好奇心の入り混じった眼差し。流れるようなストレートな黒髪は、どう手入れをしているのだろう、まるで枝毛などなく綺麗な光沢を放っている。その顔には見覚えがあり、それは、まさに……

「わたし?」

 そう、毎朝鏡で見ているなじみの、わたしの顔そのものである。

 その子は目を閉じて、わたしのお尻に頬を擦り付けながら、

「いや~惚れ惚れするお尻ですな~」

 感触を堪能していた。

「わたしのお尻気持ちいいの?」

「ほどよいボリューム!ふわっふわの感触!すりすりな感触……はパジャマの生地か。そう、すなわちヘブン状態!」

 わたしのお尻を絶賛する天使。

「それはどーも天使様、っで、いいのかな?」

 なんなんだろうこの子は?

「わたしですか? わたしは、そう! あなたの天使なのです!」

 突然立ち上がり、ガッツポーズで不敵な笑みをこぼす、自称天使様。

 掛布団から飛び起きたその体は、中学生くらいの身長で、ほどよい起伏が見て取れる。わたしと同じ体型? いや起伏はちょっと天使様のがいい感じかな?

 そのスペシャルな肢体を、白を基調としたローブで包んでいた。

 そして何より目を見張るのが、一対の羽。純白の白鳥の羽とでも言うのか。

「夢の中で会ったはずよ、愛香!」

「憶えてない……」

「え~っ」

 口をへの字にして声を漏らす。

 そして、何を思ったのかにんまりと笑みをこぼし、そのまま覆いかぶさってくる。

 目と鼻の先まで近付いてくるわたしの顔。

「ね、ね、愛香、ちょっと耳貸して」

 ささやき声が耳に気持ちいい。って、声もわたしそっくりだ。

「うっと、うん」

 耳を天使様に向ける。

「えっとねえ……」

 ――ちゅっ

「ほええええっ!? な、なぜにキスするのおおお?」

「ぷっくりしてて可愛いほっぺが見えたから」

 何の脈絡もなく突然キスされ超ビックリ!

「そそ、夢の中で、わたしは超エキサイティングであったのだ!」

 何が、そそ、なのだろう? ガッツポーズで語り始める天使様。

「夢の中、とはいえ、ドッカンドッカン片っ端から爆発させることが出来て、ちょー快感だったのだ!」

「あ、夢の中で爆発音聞こえたけど、あれ、天使様だったんだ」

 爆発しちゃう天使様なのだろうか。

「わたしって、爆裂系天使? なので、爆発にすべての思いを込めて欲望の限りを尽くすのがまさに本能のおもむくままに快楽を貪る儚き天使の叫びでシャウト! な感じだったのですよ素晴らしい!」

 よくわからないけど、出してスッキリって感じなのかな?

「天使様、気持ちよかったのは良いことですが、わたしはすっごく怖かったんですよお。夢の中で走り回ってなんか疲れて起きるのダル~いって感じになっちゃってるし」

「そーなのかー、大変だったんだねー。ごめんねー愛香ちゃ~ん」

 わっしゃわっしゃと頭をなでられ、ちょっと気持ちよくて、自然と笑みがこぼれる。

「えへへぇぇ~っと、天使様のこと何て呼べばいいかな?」

「天竺愛香でいいよ」

「それ、わたしの名前ですー」

 うーん、と悩みだす天使様。名前無いのかな?

「わたしが付けてあげましょうか?」

「愛香ちゃんが付けてくれるの?」

「ヘブンで」

「ヘブン=天国、ある意味まんまな気が……。よし、間を取って天竺・ヘブンって名前にするわ」

 間なのか。

「それで、ヘブンちゃんて何者なの? どして一緒に寝てるの?」

 腕組みして不敵な笑みを浮かべるヘブンちゃん。

「ふふふっ、よくぞ聞いてくれたわね、愛香。わたしはあなたの心の天使と悪魔、その片割れの天使様なのよ!」

「それが出てきたってこと!?」

「そっ、理由は分かんないけどね」

「分かんないのか」

 わたしの天使だから同じ顔なのか。

「ヘブンちゃんが出てきて、何かわたしに影響ある?」

「たぶん無い」

「たぶん?」

「おそらく」

「おそらく!?」

 ちょっと考え込むヘブンちゃん。

「う~ん、じゃあねえ。愛香の前にプリンが1つあります。それは友達のだけど、友達は今この場にいません。愛香はすっごくプリンな気分です。どーする?」

「食べて後で、ごめんなさい気付いたら食べてました。まだ足りないのでもう一個買ってくださいって言う」

 ヘブンちゃんが満足そうにうなずく。

「うむ、善悪を判断する心は失われてないようね」

「今の回答で天使な答えだったのか」

 私の心の中の天使って、こんなものなのか。

「そーよー。もし悪魔しかいなかったら、3人は死んでるわね」

「今の例題で、どこから3人出てくる!? そして何で死んだ!」

 恐るべし悪魔!

「うーみゅ、とりあえず納得することにします~」

「偉いぞ、愛香」

 またもなでなでしてくれるヘブンちゃん。

「なんか目が覚めちゃったな。朝ごはんにしよう。ヘブンちゃんも食べる?」

「食べる!」

 私たち二人は部屋を出て、一階へと降りていくのであった。

愛香とヘブンを中心としたドタバタ活劇(ゆるい百合描写多め)を始めます。


みんながみんな相思相愛だれもが笑顔な世界を書いていこうと思います。

初めての投稿です。よろしくお願いします。

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