終わりの始まり
ここまでの長い間、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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『よお主様。長旅ご苦労さん。今回の旅はどうだったよ?』
どこからか聞こえる懐かしい声。誰かは分からないが、『私』はこう答えた。
悪くなかった。
『……ふん。死んでもその捻くれた言い回しは相変わらずか。』
ほっておけ。
相手が誰かも分からないが、『私』はそう返すのが当然だとでも言うように、自然に言葉を投げかけている。
『……ふん。威勢がいいのは結構なこった。それでよ、主様、物は試しに質問なんだがよ、――テメエ、こんな中途半端なところで終わるつもりかよ?』
……。
『テメエが死んだこの後、世界がどうなるか教えてやろうか? ――まず楓たちは死ぬ。セシリアが必死に擁護し、楓とアレンも奮闘するが、最後はやっぱり物量の前で押し切られ、王都の奴らに拘束される。そのあとは悲惨だぜえ。アレンとシーナは、割と早々に死ねるが、楓は貴重な異世界人のサンプルとして、毎日体を弄られ、王宮直属の神官たちのモルモットにされる』
……。
『アリサとセシリアは、その楓たちを庇いすぎたなあ。厄介者扱いされて、いずれは消される。セシリアは実現不可能な討伐任務を命じられて名誉の戦士。アリサは奴隷として市場に流される』
……。
『無論、そんな調子だ、異世界侵攻も結局行われるぜ。お前が見たあの光景がもう一度再現されて、やがて地球とファンタゴズマの戦争が始まり、どちらも大勢死ぬ。寿命を全うできるなんて、いつも一握りのお偉いさんくらいだ』
……。
『要はテメエが中途半端なところで死んだせいで、皆が不幸になるっていうことだ。どうだよ、お前の臨んだ終末はこんなんなのか?』
……黙れよ。
『はん、粋がった所で、もうおせえ。テメエは死んだんだよ。俺への魔力供給もいずれ途絶えて、こうして会話することも出来なくなる』
……何か、方法は無いのか?
『……は、ははははははははははははは。流石は立花集。死んだ後でもこの悪あがきっぷりは流石だぜ! アセムにもこれと同じように『現界問答』をしたが、あいつは「私が出来なかったことは、シュウが全てなんとかしてくれる」って言って逝っちまったからなあ』
……『現界問答』?
『おう、簡単に言えば、テメエが俺の生まれ変わりとして、つまり黒龍の始祖として、ファンタゴズマに現界するってことだよ。始祖になれば大概の龍種は眷属として使役できるし、人間の頃よりも力は段違いに増す。まさに龍になるってことだな』
それを俺にしろ。
『……まあ立花集ならそう言うと思ってたがな。いいのか、ファンタゴズマはまさに地獄だ。そこから解放されて、やっとあの世に行けるって言うんだぜ? 現世なんて正に地獄の体現だ。九十九%の苦痛と、一%の快楽で構成されてるようなもんだ。それならまだ地獄に行った方がまだマシかもしれねえぞ?』
皆を途中で放って、自分だけむざむざ死んでいるのは間違っている。
『……は。記憶ももうほとんどないはずなのに、まだそんな理由で生まれ直すって言うのか。相変わらずテメエは、とことん自分の「道理を曲げない」奴だなあ。――よし、いいぜ! テメエにならくれてやってもいい。その代り、もうリトライは出来ねえぞ。気ぃ引き締めてかかれよ!』
直後、何か暖かいものを感じる。それが徐々に、『俺』という存在を、再構成していく。
『いいか。現界はその都合、どうしてもテメエの死んだぴったり二年後にしか生まれ直せねえ。また、生まれる場所も龍種の大陸と、限定されている。ま、テメエがこの世界に来たときは、人間のまま東の荒野のど真ん中に堕ちたって言うから、それよりはマシかもしれないな』
ありがとう、俺は徐々にはっきりと認識できる自分の体を実感しつつ、そういう。
『ふん。礼を言うのはこっちの方だぜ。黒龍は歴代、こういう方法でしか、真に死ぬことは出来ない。肉体が滅びようと、魂がまたどこかで肉体を構成し、輪廻から抜け出せねえからだ。そういう意味では、やっと俺はこのくそったれな世界からおさらば出来る。感謝するぜ、最後の主様』
「……ああ、じゃあな、カリラ」
俺の久しぶりに出た肉声に、カリラはふっと、笑った気がした。それきり、カリラは消えた。存在が、もろとも霧散した。
徐々に意識がはっきりとしていく。夢から醒めるような、あの感覚に近い。
「……」
俺は、ただ黙々と、その瞬間を待つ。そして、遂にその瞬間は来た。
目の前が暗転し、やがて瞼の上から、あの紅い光が差し込んできた。
第一部 完
と、最後のように、物語は次の章へと進みます。
FANTAGOZMAはここでひとまず終了です。これからナ○トのように続きを書くか、スラムダ○クのようにほぼ完結の流れに持っていくかはまだ考え中です。
そういう意味でも、皆さんの感想やら御意見などの応援で、これからどうするかを考えたいと思いますので、続きを希望される方などは、ぜひ、評価なり感想なりをお願いします笑
それでは、またいずれどこかで。




