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FANTAGOZMA―空が割れた日―  作者: 無道
始動する黒龍
36/64

仲間

翌日、昨日と同じように学園へと向かう途中でアジトに寄った。昨日は結局家へと戻れたのは午前四時過ぎ。大技を使ったせいもあって街に着いたときには流石に疲労困憊で、家に直行し少しでも睡眠を、と仮眠を取った。

あくびを噛み殺してアジトのドアを開ける。


「お兄ちゃん!」


すると中からシーナが俺の胸に飛び込んできた。


「もうっ、心配したんだから!どうして無事なら無事って一言連絡してくれないの!?」


「…昨日は帰ってきたらクタクタでそのまますぐ寝ちまってな。それに、俺を尾行している奴がここを突き留める可能性もあった」


「だからって!それでも俺たちスゲー心配で夜も眠れなかったんすよ!」


居間からアレンも姿を現す。確かにその目元にはうっすらと隈が浮かび、疲労を色濃く感じられた。


「アレン。そっちはあれから大丈夫だったか?」


「はい。あれから何度か散発的に敵と遭遇はしましたが、坂本さんが全部速攻で倒してくれました」


「楓ちゃん達はともかく、問題はお兄ちゃんだよ!なんかすっごい強い人と闘ったんでしょ?大丈夫だったの?」


「…ああ、次はこうはいかないだろうがなんとかな。それで、楓は奥にいるのか?」


「あ、はい。さっき兄貴が帰って来ましたよって教えたんすけど、私は心配などしていませんでしたからって今はお茶飲んでるっすけど、すっごい手元が震えてます…」


「…シーナ、悪い」


俺はシーナの体を離すと、居間に上がる。そこでは確かに、まるで何事も無かったように楓がお茶を飲んでいた。…手をプルプルとさせて。

俺が来ると、楓はさも今気づいたかのように俺を見る。


「…おや、集ではないですか。昨日はお疲れ様でした」


「ああ…」


「ま、まあ?私はお前が帰ってくると信じていましたし?全く心配はしていませんでしたよ?そこは誤解しないでくださいね?」


「…俺は何も言ってないぞ」


「し、しかし、格上の敵相手に単身で迎え撃つという行為は、確かに多少は部下を心配させる行動であるのは確かです。いえ本当にちょっとだけですよ。アレンとシーナは昨日はお前が心配だーとぴーぴー泣いていましたが、私は最悪の事態を想定してちょっぴり涙目になったくらいです」


「…悪かったな」


「…そう思うなら昨日は有耶無耶になってしまった約束、今日果たすというくらいはあってもいいと思いますが…」


「昨日そんな話したか?」


「なっ、忘れたというのですか!?見損ないましたよ立花集!私がお前の刀で無かったら今ここで斬り捨てたところです!あくまでも女である私との約束を反故するどころか無かったことにするとは…、恥を知りなさい!」


「…えー」


突然鬼のような剣幕で怒り始める楓に、思わず理不尽さを覚える。こっちは昨日命がけで皇女陛下と闘ったんだ。その前の日常の些細な約束を忘れただけでこんなに俺怒られるの。遠巻きに見ていたアレンがあちゃー、という顔をする。シーナは少し苦笑気味だ。

しかし、約束を忘れた点は確かに俺の落ち度だ。そこはきちんと謝罪する。


「…すまない楓。それで、よかったらその約束をもう一度言ってくれないか?」


「こ、こんな皆が聞いている状況では言えません!それくらい考えなさい馬鹿者!」


「…」


面倒くさい。自分の気持ちを表に出さないようにするには少し苦労した。楓はたまにこうやってよく分からないところで怒るからなあ。一つ嘆息し、提案する。


「わかった。今度お前を一回呑みに連れてってやる。それで今回の件は無しにしてくれないか?」


その提案を聞いた楓の肩がぴくりと揺れる。


「…それはお前と二人で、ということですか?」


「?ああ。でも楓が嫌って言うなら《黒龍》全員で行っても――」


「いえ、二人で大丈夫です!いいですか、聞きましたからね!今回は絶対に忘れないでくださいよ!」


「あ、ああ」


予想以上に喰いつきに少し驚く。だが、それで機嫌は直してくれたようだ。ぬるくなったお茶を淹れなおし始める。


「…こういうことをサラッと自然に出来るところが兄貴が好かれる理由なのかな」


「そうだね。まあ、私は他にもお兄ちゃんの良いところいーっぱい知ってるけどね!」


「…あれ、よく考えたらここって俺の居場所なくないか?」


シーナとアレンが何か話しているが、俺はもう時間がない。それじゃあな、と言葉を残して足早に靴を足にひっかける。


「あ、今日も頑張ってきてくださいね兄貴!」


「いってらっしゃいお兄ちゃん」


「先ほどの約束、忘れないでくださいよ、集」


部屋からそれぞれ声が掛かり、それに片手を上げて答える。今日から学園では俺も晴れてBクラスだ。昨日の感じからあまり気乗りはしないが、仕方がない。頑張ってこよう。


俺をあそこまで心配してくれる仲間の顔を見た俺の足取りは、昨日の下校の時よりだいぶ軽くなっていた。


気づけばこの話で10万字突破…。一ヶ月でこんなに書けるとは思いもしませんでした。それもいつも読んでくださる皆さんのおかげです。ありがとうございます。

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