クラス入れ替え戦
今回は少しショートストーリーです。
この学園の一日は至ってシンプル、午前は座学、午後は実戦、それだけだ。
そして今日は一ヶ月(日本で換算すれば三ヶ月だが)に一度行われるクラス入れ替え戦だった。クラスの上位者が、上のクラスの下位者と模擬戦を行い、勝てば昇格か残留が決まる。
俺は今回、Cランクの上位者として出場し、Bランクの生徒と対戦が行われる予定だった。
今行われていた模擬戦が終わる。どうやら勝ったのはBランクの生徒のようだ。やはり、レベルが一気に上がるBランクへの昇格はなかなか難しいらしい。
『次は主様の番だな。何、困ったら俺を呼べばいい。速攻で相手の体を爪で引き裂いてやるからよ』
(だから出さねえって何回言えば分かるんだよ…)
「次、Cランク、シュウ・タチバナ、Bランク、ブラート・ノックス。両者前へ」
呼ばれた俺は模擬戦の広いリングに上がる。俺の先には、相手となるブラートと呼ばれた男が立っている。入れ替え戦ではいつも使う模擬刀などは用意されず、各々の武器で闘うことが決められているため、この日はいつも怪我人が多いと聞く。目の前の男も、大きな体格に見合った長大な大剣を担いでいる。アレを頭からもらえば真っ二つだろう。
「勝負、始め!」
審判の合図と同時にブラートは疾走する。下位者とはいえBランク。流石にいつも闘うCランクの生徒に比べ、動きは速い。
(だが、楓ほどではないな)
十分見切れる速さだったため、まずは魔法なしの身のこなしだけで大剣による一撃を大きく避ける。
「なにっ!?」
ブラートは驚いたような声を上げる。魔法による能力向上の隙を与えず、先制して倒すつもりだったのだろう。
(その見通しは甘いな)
「『補強』、『疾風』」
「ッ!やらせるかよ!」
攻撃の隙を突いて、次々と体に魔術が掛けられていく俺に、ブラートは焦ったように攻撃を仕掛ける。しかし、いくら全力を出していないとはいえ、能力向上系の魔術二つで倍速で動けるようになった俺を捉えることは難しい。見ればブラートのがっちりとした体格とその大きな大剣は、一撃の重さに比重を置くように特化している。つまり自分のスタンスを捨てて、合わない戦略をとって来た時点で、彼の敗北は決まっていたようなものだ。
(パワーとスタミナは申し分ない。普通に戦っていたら危なかったかもな)
そこまで考えたところでようやくブラートの攻撃に隙が出来る。その瞬間を逃さず、俺はあらかじめいつでも発動できるようにしておいた魔法を発動させる。
「『重力』」
「…!?ぐっ…!」
突然重さを増した自分の体に、ブラートは思わず体を傾ける。しかしそこはBランク。Cランクならばすぐに地面に伏してしまう所を、そこは根性でなんとか膝を屈しない。
「…大した根性だが、ここまでだ」
「そこまで!」
「ッ!?」
俺が人差し指を立ち尽くすブラートに向けたところで審判からやめの合図がかかる。俺が『電撃』を撃つつもりだと分かったのだろう。今のように、勝敗が明らかな場合は審判が止めに入る。
「勝者、シュウ・タチバナ!」
悔しさからか、対戦相手のブラートが床に膝を着く。場内からおおっ、と声が漏れた。どうやらBランクへの昇格は、今日は俺だけのようだ。やっと出来たCランクの知り合いと別れるのは少しだけ惜しかったが、情報提供先はまたBランクの生徒の中から探せばいい。このとき俺は、その程度の考えしか抱いていなかった。




