教会の片隅で
月曜日の夜、僕は教会の片隅にある懺悔室にいた。
僕は、今日もこの想いを断ち切れなかった。
_男でありながら男に想いを寄せてしまった。_
彼は、僕の叔父にあたる人。 いつも寝癖がぼさぼさで、口も悪い。
だけど、面倒見が良くて、優しくて、かっこいい人。
僕は跪き、願うように手を組んで、懺悔を始めた。
「ごめんなさい、神様。僕は今日も罪を犯してしまいました。
僕は今日も、叔父さんへのこの想いを、捨てられませんでした。
ごめんなさい、ごめんなさい。
僕はこのまま、叔父さんを想い続けてしまいます。
これからずっと、彼を愛し続けてしまいます。
僕はきっと、この心を何かに支配されているのです。
だからせめて、この想いを彼に気づかれないようにします。
この想いを、閉じ込めます。
だからどうか、お許しください。」
僕は懺悔を終えて、懺悔室を出た。
するとそこには、叔父さんが立っていた。
「よぉ。全部聞いちまったよ…。」
彼は、苦笑していた。
僕の顔はどんどんと熱くなっていった。
恥ずかしい。
ただそう思った。
「…」
僕は俯いてしまった。
この人に、すべて、伝わってしまった。
一番伝えたく、なかったのに。
「…なぁ」
「…何…?」
「顔、上げろよ。」
もう全てが終わったと諦めていた僕は、素直に顔を上げた。
そのときだった。
叔父さんは、僕にキスをした。
「!?」
それも、濃厚な。
抱きしめられた。きつく、力強く。
僕は、そっと抱き返した。
叔父さんは唇を離し、僕の耳元で囁いた。
「悪いな。今まで叔父さん、気づけなくって。」
その言葉を聞いたとたん、涙がぼろぼろとこぼれた。
さっきまでの悔しさはどこかへ消えて、
恥ずかしくて、安心して、嬉しくて、僕は泣いた。
叔父さんはきっと悪魔だ。
時折見せる優しい微笑と、甘い甘い言葉で、
僕を、こんな気持ちにさせる。
でも僕は、そんな悪魔と、関係を結んでしまった。
教会の片隅で。