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Heavell  作者: 瓜N
プロローグ Heavell
2/2

始点

 不意に意識が覚醒する。目を開けると、そこには草原が広がっていた。


「あ、ようやく起きたんだね」


 声が聞こえる方へ顔を向ける。すると、一人の少女が立っていた。

 銀髪碧眼。顔は氷を連想するような整った顔だが、笑顔が太陽のように眩しい。とても印象的だ。


「ここは、どこなんだ?」

「そうだなー、君たちの言う、《あの世》ってところかな。正式名称は《Heavell》って言うんだけどね」

「ヘイブル……」

「まぁ、今まで君が生きてきた《つまらない世界》よりは面白いと思うよ」


 つまらない世界。俺はそう思いながら、死んだはずだ。


「残念ながら君はもう死んでいる。けど、この世界でもう一度生きることが出来る権利を持っている」


 もう一度生きる権利。その言葉が、何故か突き刺さる。


「君は、本当に死を望んでいたの?」


 この時、俺は何を考えていたのだろう。膨大な時間が、僅か数秒で流れたような息苦しい感覚が、全身を支配する。

 気付けば立ち上がって、案内人と名乗った少女の胸倉を掴んでいた。


「……やめてほしいな。僕は別に、君と敵対するつもりはないよ」


 はっとして、手を放す。


「すまない」

「いいんだよ。今のは君が心の奥底に秘めていた感情だからね」

「感情?どういうことだ?」

「うーん……そうだ、試しにやってみようか。とりあえず目を瞑ってみて」


 言われるがままに、俺は目を瞑る。


「それじゃあ、今から言うことをそのまま実行してみて。絶対目は開けちゃだめだよ」

「……分かった」

「まずは、光を想像してみて」

「随分と抽象的だな」

「いいんだよ。君が思う、光をそのまま想像してみて」


 そう言われても、と思っていたが、とりあえずやってみることにした。

 光。まずは空から降り注ぐ太陽の光を想像する。


「次は、その光の中に立っている人を想像してみて」


 まるで見透かされたようなタイミングで言われたが、それを気にすることなく続ける。

 自分と同い年くらいの少女の影が思い浮かぶ。光のせいで細かい特徴は捉えられない。だが何処かで見たような容姿だった。


「最後に、その人を殺してみて」


 人を殺す。そんなことが


「出来ない、じゃないよ。やらなきゃいけない」


 やらなければならない。誰かも分からないような少女を、いきなり殺さなければいけない。

 そんな状況があってたまるか。

 気づけば俺は、剣を握っていた。

 無色透明の刀身を持つ、長剣だ。

 少女の影はただ動くことなく、じっとこちらを見ているように思える。


「何で、殺さなきゃいけないんだ?」


 ふと思ったことを、呟く。

 その時、どこからともなく声が聞こえる。


『お前自身が、助かるためだ』


 何処かで聞いたような、忌々しい声。

 それは、俺の心を掻き乱すには十分すぎた。


「っああああぁぁぁぁぁぁァァァァァァァアアアアアアアア!」


 絶叫。同時に俺は、剣先をその少女の心臓に突き立てる。

 刺した時の音と感触が、聞こえたような気がした。


◆◇◆◇◆


 気付けば俺はその場で倒れていた。

 起き上がろうとすると、右手に何か乗っかっているのが分かった。


「おはよう。そしておめでとう。君はこの世界で生きる権利を得た。手に持っている武器が、その証明だよ」


 鞘に入った、一振りの長剣。

 鞘から抜くと、その美しさに目を奪われる。

 刀身の先端は透明で、柄の方に向かって次第に血のような赤色に染まっている。その中に、無数の黒点が散りばめられていた。


「さて、ここで長話も無用だから、僕が住んでいる家に招待するよ。日が沈むまでに戻らないと。急ごう」


 長剣を鞘に収めた瞬間、案内人の少女に手を引っ張られる。

 俺は仕方なく、少女の後を追うように走りだした。

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