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御伽話

 昔々あるところに、女の人が大嫌いな王様がおりました。

 その王様は女の人というのはすべからく愚かで信じるに値しないのだ、と思っておりましたので、どんな女の人にも興味すらありません。けれど国のためには世継ぎが必要と家臣たちは次々と美しい娘たちを王様の寝所に送りこみました。

 始めの内は追い返していた王様も、いつしか面倒になったのか、一晩だけと条件付きで娘たちを迎え入れるようになりました。

 その言葉通り、王様は一度夜伽をした女の人をもう一度呼ぶようなことは決してありませんでした。何故なら、夜を過ごした次の朝。娘たちがまだ眠っている間に、王様は彼女たちを殺してしまっていたからです。

 自分の娘が運よく王子を産めば、などと考えていた者たちも、これにはたいそう慌てました。つい昨日までは確かに生きて動いていた娘たちが、次の日には冷たく硬くなって家に帰ってきたのですから。

 心ある家臣の言葉も、王様の頑なな心には届きません

 今度の娘なら、もしかしたら。あの娘なら、あるいは。そんなかすかな希望に縋って、何人もの娘たちが王様の寝所に送られます。けれど次の朝には変わり果てた姿で運び出される彼女たちを見て、誰もが落胆のため息を吐きました。

「もう、養子をお迎えになるしかないのではないか」

 めぼしい娘たちがことごとく帰らぬ人となり、誰もがそんなあきらめの言葉をこぼし始めた頃でした。あるひとりの姫君が、いつものように王様の元へ送られた翌朝、変わらぬ姿で再び現れたのです。

 それは初めてのことでした。でも、その姫君の父親が王宮内でも大きな力を持つ大臣であったことから、王様も配慮したのではないか、と皆が思いました。この娘のことを王様が気に入ったのではないかと考えるには、あまりに多くの娘たちが犠牲になっていたからです。

 けれど、二晩、三晩と娘が召され、また次の朝無事である姿に、もしや、とようやく希望が生まれたのです。

 はたして、その姫君は毎夜の寝物語としてたいそう愉快な物語を王様に語って聞かせるのだそうで、その続きが気になって、王様は姫君を殺さずにまた次の晩も召しだしているとのことでした。

 姫君のお話に夢中になった王様は、凍った心を少しずつ溶かしていきます。

 いつ自分を殺すかわからない、現に今までたくさんの娘の命を奪ってきた王様に対し、姫君は心をこめて仕えました。けして王様のことを裏切ることをせず、いつだってなによりも先に王様のことを考える姫君を、王様もだんだんと信じていきました。

 時は流れて、千と一夜目の晩。

 自分の負けだと苦笑して、王様はその姫君を王妃に迎えました。

 新たな王妃様の誕生とほぼ前後して判明した彼女の懐妊に、王宮どころか国中が喜びにあふれました。

 そうして、王様と結婚した心優しい姫君は男の子と女の子をひとりずつ授かり、いつまでも幸福に暮しました。

 めでたし、めでたし。










 ……本当に?


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