表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

prelude白雪姫

この話しは、

日向が『白雪姫』の物語に入る直前の、学校での話しです。


なので、「prelude」

その前に、って事ですね。


学校の名前とか、軽く適当に考えて出しました。


あと、他の絵本部部員とか。


「prelude」が終わったら、本格的に『白雪姫』の話しに入ります。








「ぐぅあー…眠い」


日向紘ひなたこう

16歳。

只今絶賛部活動中。



「ちゃんとやろーよ、紘君」

「もーいいじゃん。

どうせまたやられるって」


イタズラ。


「そんなことないよ。今度は『綺麗に読んで下さい』って紙張っとくし」



笑顔でそう言う男に、

無駄だと思うけどねー、と日向は心の中で思う。







ここは日向の通う高校。

『第三北高校』


夏休みも終わり、新学期が始まっている。


だが、

まだ夏休み気分の浮かれ野郎がいるらしく、日向達絵本部が作った制作物、その名も『姫夢の明るい1日』が壊されるという被害を受けた。


「壊されるって言っても、少し落書きとかされただけじゃない」


日向と同じ絵本部部員、

坂木悠太さかきゆうたが「そんな大袈裟なー」と笑いながら言う。


坂木悠太は日向と同じ1年の絵本部部員仲間。おっとり系のぽっちゃり系で、

モテるかモテないかで言えば、『モテない』方の人種だ。



そんな坂木を見ながら、日向は腕を組み「気に入らないんだよ」と言う。


「俺の描いた絵に落書きしやがったんだぞ。壊されたと言っても過言じゃない」

「一応僕や咲さんも書いたんだけど」



咲さん、とは。


同じ絵本部部員で、一つ上の先輩、山本咲やまもとさき先輩のことだ。

坂木と山本先輩は幼馴染みらしく、昔から仲良しらしい。

なので「咲さん」「悠君」呼び。


ちょっと羨ましい。

とか、決して思ってないぞ。




「まったく。俺の描いた絵を馬鹿にしやがって。

見つけたらただじゃおかねー。誰だか知んねーけど」

「ただじゃおかないって、何するの?」

「なんかだよ、なんか」



夏休みの制作物。

『姫夢の明るい1日』

ちなみに、当たり前だが絵本だ。


いわゆる飛び出る絵本的な物で、夏休みの部活中はずっとこれを作っていた。


絵本部として始めての大イベント、活動大作としてこの絵本は学校に展示される事となったのだが。

その絵本に落書きを発見したのは、つい1週間ほど前の事だ。


見つけたのは日向の担任の、金髪先生。偶然廊下を通りかかった時に見つけたらしく、日向に教えてくれたのだが。






活動大作、『姫夢の明るい1日』に力を入れていたのは、なにも日向だけではない。

坂木も山本先輩も日向と同じぐらい、

もしかしたらそれ以上の力をこの絵本に入れていたのだ。


いくら落書きが少しだけで、直すのにも時間がかからないからといって、

絶対に許してはいけない。




「ところで、山本先輩はまだなのか?」


授業が終わってから、もうすでに30分以上はたっている。学年が違うので、何か別の授業でもあるのかもしれないが。



「今日はトイレ掃除だから遅くなるって言ってたよ」

「そっか」


トイレ掃除か。

じゃあ遅くなるだろうな。




この学校がトイレ掃除にかける気合いは、実は半端ない。

隅から隅まで、

まさに、地面から天井まで綺麗に掃除をしないといけなく、

掃除が終わると、先生の最終チェックが入るという最後の難関つきだ。


なので、

トイレ掃除の担当になった生徒は、必ず部活に遅れる。




「できたー」


坂木が絵本修繕を終わらせたらしい。


「おつかれ」

「ありがとー」

「無駄な努力にならなきゃいいけどな」

「大丈夫だってば。

先生達も学校中に注意してくれたし、貼り紙もバッチリ貼ったから」


見ると、『姫夢の明るい1日』が置かれている机の端に、


『イタズラするべからず!綺麗に読んでね』


と、書かれた可愛いイラストつきの貼り紙が貼ってあった。



「貼り紙なんてものはな、女が使ってるダイエットの薬ぐらい効果がないもんなんだよ」

「それはあまりにも偏見すぎだよ」

「うるせー」


ぷいっとそっぽを向く日向に呆れながらも、坂木は苦笑する。



「じゃ、戻ろうか」

「あぁ。新しい絵本の続き、作らないといけないしな」

「話しは考えたの?」

「んー……。

まぁ、そこそこ」



絵はいいんだが、

問題はストーリーなんだよなぁ。



「はぁ」とため息をつきながら、坂木と教室に戻ろうとした日向だったが、

同じクラスの月島月菜つきしまつきなが日向に声をかけてきたので、足を止めざるをえなかった。


「日向!ちょうど良かった」

「月島、どーかしたのか?血相変えて」


何かあったのか?


「あれよっ!あれが出たのよー!!」


あれ?


「あれって何だよ?」

「あれはあれよっ。いいからこっち来て!」


月島に引っ張られるようにして日向は走り出す。


「月島っ、ちょ…坂木っ、悪い。先行っといてくれっ」

「うん。わかったー」


のんびりと手を振る坂木を残して、

日向は月島に、ある場所へと連れて行かれるのであった。










「おい……何で俺が」

「いいから早くっ」

「いや、でも、ここは」

「私達がいいって言ってんだから大丈夫!だから早く……って、ギャーーァァ!!

飛んだ飛んだとんだぁぁー!」

「……………」



生徒が使うトイレのうちの一つ。

北校舎の一階、女子トイレ。

そこに「あれ」は現れた。


「綺麗にしてる、ってのに何で出るんだよ」

「し、知らない。外からでも入ってきたんじゃないの?」


ぐいぐいと日向の背中を押しながら、月島は手に持った『○キブリばすたー』を思いきり振る。


「それ、あるんなら俺じゃなくてもいいだろ」

「駄目よ!これは近付かないとかからないんだから。無理よ、近付くのは無理よ」


月島と同じトイレ掃除の他の女子達は、トイレには一切近付いてこず、遠巻きに日向と月島を見ている。


「がんばれ」

「男でしょ」

「早くしてよ」

「あんたしかいない」

「さっさとやれ」


などなど、


様々なエールを受けながら、日向は月島から「○キブリばすたー」をもらい、一人女子トイレへと浸入していくのだった。



なんで俺がこんなこと……。





日向は壁に張りついている「あれ」に近付く。




ブシューゥゥゥゥゥゥ。




黒い「あれ」は動かなくなった。

日向は任務を達成した。



「終わったぞー」

「捨てて」

「は?」

「捨ててっ!」



何で俺がそこまで。



トイレに備え付けてあるほうきと塵取りを取り出しながら、日向はぶちぶちと文句をいいつつも、

「あれ」を塵取りの中に入れ、トイレから出る。



そして、一人トイレの近くで見守っていた月島に塵取りを突きつける。


「ほい」

「ギャーー!!

馬鹿!こっちに持ってくんなっ」

「……あのなぁ」

「早く外っ、外に捨ててきて!」


はいはい。

解りましたよ。


日向は女子達にお礼も言われぬまま、外へと追いやられてしまったのであった。










「ったく」


日向は、黒い「あれ」を外にあるゴミ収集場に捨ててから一息つく。


何で女はあんなに煩いんだろう?

あんな物ぐらいでギャーギャーと騒いで。

疲れないのかねー。

疲れないんだろうなぁ。


「はぁ…」


日向を女子トイレへと無理矢理連れて行った、同じクラスの月島を思い出す。

月島だけは、日向が「あれ」を退治するのをトイレ近くで見守っていた。

連れて来た者の使命感なのか、それとも日向がちゃんと「あれ」を退治するのを見張るためなのか。



ぼけっとそんな事を考えていた日向が、さてそろそろ戻ろうかと思った時、

持っていた塵取りに何か光る物が引っ掛かっているのが見えた。


「なんだ?」



なんの気はなしに、




日向がそれに触った瞬間、






強い光が、

辺りを包みこみ、




日向はその場から消え失せた。







「prelude」終わりです。

こんな感じで、日向は物語の世界へと入って行きます。



そして、次から『白雪姫』が始まります。



うん。


多分。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ