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役立たずスキル《返品》を押し付けられて追放された俺、実は世界すら返品できる最強能力でした  作者: 久遠


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第一章 勇者候補の返品、および不良品の自覚

「……は?」


 目の前の水晶板に浮かび上がった文字を見て、俺――高杉カイトは思わず声を漏らした。


 豪華絢爛な王宮の広間。召喚されたクラスメイトたちが『聖剣術』や『爆裂魔法』といったチート能力に沸き立つ中、俺のステータス欄には、たった一行。


固有スキル:《返品ヘッピン

効果:所有したものを元の場所に戻す


「なんだ……そりゃ?」


 豪華な椅子にふんぞり返った国王が、値踏みするような目で俺を睨んだ。


「《返品》だと? 勇者ではなく、ただの店員かお前は」


「ぎゃははは! 返品だってよ! カイト、お前現実の世界でもコンビニでバイトしてたもんな!」


 クラスの主導権を握る連中が腹を抱えて笑う。

 俺たちを召喚した側の王女までもが、扇子で口元を隠しながら冷たい視線を送ってきた。


「戦えない者は我が国に不要です。幸い、他の皆様は素晴らしい『アタリ』でしたから」


 そうして俺は、召喚からわずか三十分で、着の身着のまま城の外へと叩き出された。手渡されたのは、刃こぼれしたなまくら剣一本と、わずかな小銭だけ。


「……あーあ。最悪だ」


 俺は城下町の武器屋の軒先で、ため息をついた。

 試しに、腰に差したなまくら剣を抜いてみる。そして、頭の中でスキルの発動を念じた。


(《返品ヘッピン》)


 その瞬間。俺の手にあったはずの剣が、シュン、と霧のように消えた。視線を上げると、目の前の武器屋の陳列棚に、見覚えのあるなまくら剣が律儀に突き刺さっている。


「……マジか。本当に『元の場所』に戻っただけだな」


 店主が「おい、何だ今の手品は!」と怒鳴ってくる前に、俺は逃げるようにその場を去った。


 攻撃力ゼロ。射程ゼロ。ただの「お片付け」能力。異世界に来てまで、俺は不良品ハズレ扱いかよ。


 そのままあてもなく歩き続け、気がつくと俺は街の外の森へと迷い込んでいた。今の俺には、魔物を倒して稼ぐ力も、生きていく術もない。

 そんな絶望に浸っていた時――。


「――グルルッ!!」


 背後から、血の匂いが漂ってきた。振り返ると、そこには体長二メートルを超える巨大な狼、『キラーウルフ』が鋭い牙を剥き出しにしてこちらを睨んでいた。


「ひっ……!」


 腰に剣はない。さっき返品しちまったからな。逃げようとしたが、足がすくんで動かない。

 魔物が一足飛びに跳ね、俺の喉元へと食らいつこうとあぎょを開いた。


 死ぬ。そう確信した瞬間。

 俺の脳裏に、妙な思考がよぎった。


(待てよ……『所有したもの』を戻す、だよな?)


 今、この魔物は俺を「獲物」として捕らえようとしている。なら、俺の体に触れた瞬間、こいつは一時的に「俺の持ち物(所有物)」としてカウントされないか?

 ダメ元だ。俺は喉元に迫る牙に、震える手を伸ばして叫んだ。


「《返品ヘッピン》ッ!!!」


 その瞬間――。

 目の前から、巨大な質量が消失した。


「……え?」


 ガチガチと震える俺の腕。しかし、そこには魔物の感触どころか、毛一本残っていない。


 数秒後。

 遥か遠く、森の深部の方から、

――ドォォォォォォンッ!!

 という、空気を震わせるほどの凄まじい爆発音が響いてきた。


「なんだ……? 今の……」


 俺は呆然と立ち尽くす。後で知ったことだが、あの時、魔物は「元いた場所」……つまり、この森の最深部にある『ダンジョン』の玉座へと強制送還されていた。

 それも、凄まじい加速度を伴って。


 俺は自分の掌を見つめ、ニヤリと口角を上げた。


「これ……使い方次第じゃ、とんでもないチートなんじゃないか?」


 武器を返せば武器屋に戻る。

 魔物を返せばダンジョンに戻る。

 なら、もし俺を捕らえようとする『盗賊』に使えば?

 ――おそらく、牢屋かアジトに直行だろう。


「返品、完了だ」


 ハズレスキルと笑った奴らに、いつか教えてやりたい。この世のすべてには「帰るべき場所」がある。そしてその運命を決めるのは、この俺の手だということを。

 これが、後に「帰還の勇者」として世界を震撼させることになる俺の、最初の第一歩だった。

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