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眠醒パラレル  作者: 安静
3/13

体育倉庫の掃除

 授業中の居眠りの罰として放課後に体育倉庫の掃除を命じられた。

 だがその掃除開始時間すら居眠りですっぽかしてしまい、青筋を立てて教室に迎えに来た野木先生により叩き起こされ体育館へ連行される。


「お前な、人のこと舐めてんだろ。どうでもいいと思ってるからそんなに寝こけるんだよ。社会に出たら通用しないぞ、言っとくが俺が学生の頃はもっと…」


 道中、かなりの声量で説教を食らう。そう捉えられるのは仕方ないし全て僕が悪いが、決して舐めているわけではないのだ。意思の力で眠気に抗えない。それは突発的に来て意識を連れて行く。耐えていてもいつの間にかあちらの世界にいる。僕自身、この体質にうんざりしているのだ。幼い頃からずっと。

 だから舐めているわけではない。意味がないとは分かりつつも、せめてもの義理として先ほどまでいた夢世界ではちゃんと時間通りに体育倉庫に行った。


 だからこの先、倉庫で何があるのかも分かっている。


 野木先生がガラッと倉庫の扉を開けると、湿気高く薄暗い中に埃が舞い散った。

(…誰もいない?もう終わって出て行ったのか?…いや)

 奥にある跳び箱の一段目が若干ズレており、カゴから盛り上がったバスケットボールが一つ転がり落ちた。どっちがどっちに隠れているのかは分からないが…。

「いいか、十五分も遅れて俺の時間無駄にしやがったんだから簡単に帰れると思うなよ。塵一つなくなるまで掃除しろ。たるんだ性根を叩き直してやる」

 僕を倉庫内に入れ、入り口に仁王立ちしている彼は、まだ体育用品に息を潜める人の気配に気付かないようだった。

 

 十五分前に夢の世界で野木先生と僕が扉を開けたとき、マットの上で男子生徒が女子生徒に覆い被さっていた。多分三年生の先輩だと思うが、よくこんなリスクが高く不衛生な場所でできるなと思う。校内でやる背徳感とスリルがたまらない、というやつなのか?教師に現行犯で目撃された二人がどうなったかは言うまでもない。


 居眠りにより遅れて来た分、出て行ってくれていることを僅かに期待していたが、健全な高校生が十五分で済ませるのは難しかったらしい。

 遠くからでも聞こえる野木先生の説教のおかげで、僕達が入ってくる前に隠れることは出来たようだが、見つかるのは時間の問題だ。男女二人でかくれんぼしてましたは無理があるし、脱ぎ散らかした服を集めることは間に合っていても着替えが完了しているのかは心許ない。掃除は一人で完璧にやりますので任せてください!とでも宣言して先生を追い払おうか?いや、この僕が信用されるわけがない。それでもし奇跡的に先生が出て行ってくれたとしても、今度は僕に弱みを見られた先輩方が口封じとして痛めつけてくる可能性がある。


「じゃあ、まずはバスケットボールを拭いていけ。床掃除もしてもらうから跳び箱動かしとけよ」

 隠れている二人にとっては処刑宣告であろう声が響く。仕方ない、と心無しか震えているボールに手をかける。

 現実で最中を見ずに済んだのはマシに思えたけれど、僕の手で見つけさせる羽目になるとはより悪化しているかもしれない。夢の世界で何も見ていなければこんなに悩むこともなく、掃除しに来たら修羅場に巻き込まれただけの第三者でいられたのに。本当に僕自身、うんざりしているのだ。

 

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