予測可能回避不可能
アタシには不思議な夢を見る力がある。現実と全く同じ世界を動ける夢。使いようによってはいくらでもおいしい思いができる。
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ふと目を開くと、ベッドに寝転んでスマホをいじっているところだった。ここは夢の世界、動画を見ている最中に寝落ちしたらしい。
せっかくの休日だが、どうせ今は金欠気味だし夢の中に来たなら丁度いい。電車…いやタクシーに乗って遊びにでも行こうかな。映画を観て、欲しかった漫画買って、目覚めるギリギリまで読もう。タダで読むことへの罪悪感はもうとっくに失くした。徹夜明けだし、かなりの時間こっちの世界にいられるはずだ。
アプリでタクシーを呼ぼうと、スマホを充電器から外して持ち直すとやけに厚みがあった。見ると端末の背面がパンパンに膨らんでいる。
「もしかしてバッテリー膨張ってやつ?このiPhone使って長いからな~。やだ、金ないのに…」
てゆうか危ないしキャリアショップ持って行かないと、と思ったところで気が付いた。
現実のスマホも今まさに同じような状態になっているはず。
寝落ちする直前までいじっていたのだから、当然寝ているアタシの顔の近くにある。長尺の動画を流しながら、既に百パーになっているのに充電しっぱなしで。充電器は安価で買った規格外のものだ。
(ヤバいヤバいヤバい、今すぐ起きないと)
先ほどまでのお出かけ気分は消え去りひたすら焦りが募る。髪を掻き毟り、拳で壁を滅茶苦茶に殴って目覚めようとする。
しかし、この夢から出ることはできなかった。夢で何をしても意味はない、起きるには現実で刺激を受ける必要がある。そして家にはアタシ一人、アラームはかけていない。
頬のあたりが熱い。この世界では熱さは感じにくいはず。恐怖による錯覚か、現実の熱が伝わってきているのかは分からない。
「起きて起きて起きて、起きてよぉ…」
泣きながら自分の頭を壁に打ち付ける。額が割れて血が視界を邪魔するが痛みは全くない。普段は便利なそれが今は恨めしかった。
シュー、バキッ。
近くて遠いところから音が聞こえた気がした。




