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鋼師  作者: 宰相トマワ
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大相撲初場所 後編

「ひが〜し〜と〜も〜し〜び〜にし〜かつらこ〜は〜る〜」

呼び出しが呼んだ。九日目の相手はアメリカ合衆國出身の中ノ関部屋、前頭6枚目の燈だ。身長201cm体重194kgの超巨漢の突き押し主体の力士で、同年齢だが対戦経験は微妙なすれ違いでまだない。横綱天馬を押し出した映像を見た時は衝撃だったが、どのくらいのものなのか見当もつかない。正直、嫌な予感は既にしている。安重峰と天城富士に続いて3人目の超大型力士だ。小兵の僕に耐え切れるのだろうか?

 そしてその不安は現実のものとなった。なるべく低く当たろうとしたが

「ドスン‼︎」

と鋭く鈍い音で上体はめくり上げられ僅か3発で土俵の外まで飛ばされた。僕は遂に黒星をつけてしまった。

 僕は部屋に帰ると一人で四股やてっぽうを繰り返した。横綱や師匠が何か言ったような気がしたが止まらなかった。負けると思っていてもやっぱり悔しい。こんなところで止まるべきではないのに。何も成し遂げれていないのに。

 明日は小兵の安賀島(あがしま)だ。技巧派だが、体格差がない分かなりやりやすい。少し冷静になった後、まだ残る熱と共に寝た。

 「ひが〜し〜あ〜が〜し〜ま〜にし〜かつらこ〜は〜る〜」

呼び出しが呼んだ。十日目の相手はエストニア共和國出身の資賀川部屋、前頭二枚目の安賀島だ。身長182cm体重133kgと小兵だが、技巧派で頭は低くまず上がって来ない。しかしそれはこっちも同じである。僕はより低く当たり喉輪を突いた。案の定簡単には上がらない。しかし僕は次々に突き上げ、徐々に安賀島の体は土俵際の方へ動いていった。安賀島の足腰が僕の突く力では簡単に土俵から離れることはないことは分かっていた。しかしここで引けば逆転されるかもしれない。突っ張ってる間はあり得ない。だから僕は辛抱よく最後まで突っ張った。そして僕は遂に安賀島を外に出し連敗を回避した。しかし明日からは遂に大関戦だ。僕は翌日に備えた。

 「ひが〜し〜は〜く〜と〜ざ〜ん〜にし〜かつらこ〜は〜る〜」

呼び出しが呼んだ。十一日目の相手は東京特別市出身三子羽部屋、大関伯勝山だ。身長188cm体重175kgの恵体でとんでもない腕力で意図しない怪我をさせてしまう怪力力士だ。組めば勝つのは望み薄だが、大量に塩を撒く為、よく滑って自滅している。横綱になれないのはそういうところなのだろう。僕は立ち合い数発突っ張った後引いたらあっさり勝った。

 「ひが〜し〜あ〜し〜の〜さ〜と〜にし〜かつらこ〜は〜る〜」

呼び出しが呼んだ。十二日目の相手は兵庫県出身の大所脇部屋、大関芦の里だ。身長189cm体重185kgのでっぷりと出た巨腹から繰り出される寄りは破壊力が強く、ここ一番で弱く優勝は未だ無いものの準優勝14回で37歳で大関に君臨している辺りから横綱クラスなのは間違いない力士である。しかし立ち合いの速度ではこちらの方が上の為、速度を出していけばまだ勝機はある。僕は芦の里に突き刺さった後廻しを取り、下から上へ突くように必死で寄って寄り切った。

 「ひが〜し〜こ〜と〜の〜し〜ん〜にし〜かつらこ〜は〜る〜」

呼び出しが呼んだ。十三日目は六甲湖部屋、プリモルスキー大公國出身の大関琴ノ心だ。身長198cm体重192kgの怪力超巨漢力士だが、正直天城富士とそこまで変わらない。結局実際の取り組みも全く同じ展開となり下手投げで破った。

 「ひが〜し〜う〜りゅ〜にし〜かつらこ〜は〜る〜」

呼び出しが呼んだ。十四日目は飾磨部屋、モンゴル國出身の大関雨竜だ。身長187cm体重145kgというやや痩せ型の、大体標準的な体格だが、モンゴル力士にありがちな足腰の強さが厄介だ。組んで良し、離れて良しのオールラウンダーだが引き癖があり、そこを逆手に取れば勝てるはずだ。僕は敢えていつも通りの速いスピードで突き刺さり、かわされたところで翻り、後ろから廻しを取った。そのまま送り吊り出した。

 こうして僕は13-1となり、大関の千風(せんふう)と並び明日の千秋楽で優勝争いをすることが決定した。燈は僕が落ちる際にうっちゃりを狙い手を引っ張られ脱臼してしまい休場となってしまった。申し訳ないことをしたなと思った。しかしこっちも負けたく無いのである。

「気負わないでいいわよ。」

横綱が言った。今更緊張することもない。僕は千秋楽に備えた。

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