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鋼師  作者: 宰相トマワ
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危ない綱渡り

「ッッッ!!」

俺は強烈な痛みで目が覚めた。目を開けると眩しかった。

「まずい!麻酔が切れた!」

俺の周りに居た人相の悪い医者の一人が言った。どうやら俺は手術されていたようだ。しかしこの健康体を体現したような俺に手術して何をしようとしたのだろうか。大怪我をする程の喧嘩だった記憶もない。臓器売買かチップを埋め込まれようとしたのか。いずれにせよ俺の筋肉量が多すぎて失敗したようだ。震えるほど痛いが、それでも不幸中の幸いだ。

 俺はゆっくり起きて、周囲を睨みつけた。医者たちは震えて腰を抜かした。近くに冷凍バッグが何箱かあった。臓器を売り飛ばそうとしていたようだった。それなら妹も...と最悪の事態が頭をよぎった。喧嘩する猶予もないだろう。冷凍バックを医者の頭に被せ、手術用のナイフを奪って自分の腹に包帯を巻いて抜け出した。

 手術室を抜け出すとそこは暗くじめじめした廊下だった。ここも会の本部か?正直そんな雰囲気ではない。近くに如何にも古そうなエレベーターがあったので乗った。今いたのはどうやら地下一階のようで、七階まであった。会の本部は豪邸で、七階もなかった。つまりここは別の事務所なのだ。

 俺は一階に行き、外に出た。日は沈みかかっている。麻酔で眠らされたのだから当然ではあるが、随分と時間が経っていたようだった。場所もよく分からない。しかし木ノ華はここには居ないと思う。俺は途方に暮れた。

「夏殿のあんちゃん!?どうしたんやそんな格好で!!」

声の主を見ると林さんだった。林さんは倉山浜部屋のタニマチだが、広墨組には一切関係のない、京城の飲食チェーンの社長だ。飲食店チェーンとはいっても10店舗程の決して大きいとは言えない会社だが、倉山浜辺屋のタニマチをし、それどころか桜狼の友達でしかない俺にまで目をかけてくれるくらいにはゆとりがあるらしい。

「なんちゅう怪我しとんや!誰に刺されたんや!?はよ病院行くで!!」

林さんにそう言われ車に押し込まれた。木ノ華を一刻も早く探したかったが、あまりにアテが無く自分の体力的にも限界だったので大人しく従うことにした。

 病院に着くと緊急手術をした。のちに聞いた話だが少しとはいえ腹筋が切断されたままだったらしく、歩いて会話もできたのが不思議なくらいの状況だったらしい。俺は病院で晩飯を食べ、夜を迎えた。

「事件性があるから、明日警察の方とお話しさせてもらいますね。」

俺の担当の看護師がそう言った。腹を開かれたんだから当然だろう。しかしここで警察と関わるのは少々面倒くさい。俺は真夜中に逃走して木ノ華を救出することに決めた。

 午前3時、俺はこっそり病院を抜け出し八星会の本部に単独で乗り込むことにした。俺は少しでも回復力を上げるためにたらふく食べて仮眠するという賭けに出た。賭けは無事成功し、ちょうど午前3時に起きることができた。八星会本部への経路は林さんから借りた予備のスマホで分かった。体の痛みは全力で休憩したためにない。俺は八星会本部へと向かった。

 八星会本部は意外にも近かった。10分ほど小走りしたら見えてきた。これだけ対立したら警戒されて尾行されそうなものなのに意外にも尾行はされている気配は無かった。しかしだからと言って正面突破が無謀であることに変わりない。俺は死角を探した。しかし流石は外地最大の反社組織。全く死角がない。なんとかして突破する方法を考えなければ...

「パン!!」

銃声が聞こえた。俺のことがバレたか?俺は物陰に身を潜めた。

「なにもんじゃワレェ!!」

怒号が聞こえてきた。何者か分からない?それならばターゲットは俺では無いのだろうか?

「ウチのシマで何やったか覚えてないんか!!」

また別のヤクザの声が聞こえてきた。抗争のようだ。しかしそれは俺に有利だ。俺は抗争している正門を避け、裏庭から入り木を登り二階のベランダに飛び乗った。二階は流石に鍵がかかってないようで簡単に侵入できた。そこには服を脱がされかけた木ノ華が怯えた顔で横たわっていた。

「お兄!?」

木ノ華が叫んだ。

「しーっ。行くぞ。」

俺は木ノ華をおぶって木を降りて敷地の外に出た。

「走れるか?」

俺は木ノ華にきいた。木ノ華はこくりと頷いた。俺たちはここから離れようと走り出した。その時だ。

「なんやお前ら!!待てごら!!」

ヤクザの一人にバレた。まずい。銃声響く中俺たちは走った。その時だ。

「キーっ」

車が俺たちの前に止まった。万事休すかと思った。しかしその運転手は俺たちに聞き覚えのある声で

「はよ乗れ!!」

と叫んだ。その声の主は林さんだった。俺たちは乗り込むと、車は急発進した。

「どういうことやゴラ!!」

林さんは俺たちを怒鳴った。

「...ごめんなさい。」

俺は小声で謝った。それしか出る言葉が無かった。しかしどうしてここが分かったのだろうか。

「ふん、俺にバレないとでも思ったんか。」

林さんは言った。

「...どうして分かったのですか?」

俺がきいた。

「病院から連絡あってな。巡回してたらお前がおらんくなったってな。それで俺はまさかと思ってGPS見たらこの八星会の前におったんや。ほんまに何しとんや。」

林さんが言った。

「このスマホGPSついてるんですか?」

俺はきいた。そこはあまり考えていなかった。

「当たり前や自分のスマホやねんから。ほんまなぁ...お前らは俺の子供みたいなもんや。心配でならん。後ででいいから何があったか説明してみい。」

林さんはそう言った。そしてこう続けた。

「今から内地に行くで。こんなとこおったら危なくてしゃーないしそもそももうすぐ初場所や。とりあえずゆっくり見に行こうや。お前の大の仲良しは新大関やぞ?ちゃんと見たり。」

こうして俺たちは東京へと向かった。

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