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鋼師  作者: 宰相トマワ
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大相撲夏場所 〜新横綱の芽吹き〜

横綱昇進したにも関わらず、状況が状況なので思ったよりマスコミやイベント勧誘はやって来なかった。しかしそれが幸いして十分に稽古ができた。

 今場所は二場所連続休場していた横綱・天馬(てんま)が今年初めて出場するらしい。関脇以下で対戦して5戦全敗の相手である。しかしまだまだ小さいとはいえ、当時の僕と違って体格はかなり大きくなった。かなり楽しみだ。

 横綱ということで初日対戦相手は小結の潟元風(がたもとかぜ)だ。潟元風は小兵力士で下から突き上げるようなおっつけが脅威だ。大関時代は身長差を感じず通用しなかったが、徐々に僕の方が高くなってきている。つまり今までどおりに行くとは限らず下から持っていかれる心配が出てきた。なので僕は速攻で突き出し白星発進をした。

 2日目の新小結の安賀島(あがしま)は潟元風と似てるので初日と同じように行こうとしたが左前みつを掴まれてしまった。しかしそこから巻き替え左上手右四つで胸を合わせて寄り切った。

 3日目の東前頭筆頭、安重峰(あんじゅうほう)は231kgで幕内最重量となったが今場所はびっくりするほど腰が軽かった。速攻で寄り切りスムーズに勝った。勝てるとは思っていたものの、余りにも状況が悪そうで余り心地良くは無かった。

4日目は西前頭筆頭、能島(のじま)と当たった。安重峰より痩せてはいるがフレームのよく似た規格外の力士だ。立ち合いの威力は凄まじく吹き飛ばされそうになった。しかし僕は能島の右脇を抱えながら相手の右上手が取れないように体を捻り転がして勝利した。

5日目は東前頭2枚目の全州道(ぜんしゅうどう)と当たった。案の定立ち合いで速攻僕の喉輪を狙ってきたが、身長が伸びリーチも伸びた僕は突かれる前に前みつを取り一気に寄り切り難なく勝利した。

6日目は西前頭2枚目の博多富士(はかたふじ)と当たった。177cm194kgの典型的な豆タンク力士だ。単純な馬力だと能島以上だろう。案の定僕は飛ばされた。しかし右に避けそのまま上手を取って投げ勝った。

7日目は東前頭3枚目のニ山田(にやまだ)と当たった。博多富士を一回り大きくしたような力士だ。昨日と同じように勝ってもしょうがないと思い前みつを取って勝とうとした。しかし取れず吹き飛ばされた。土俵際でも諦めきれなかった僕はもう一度前みつを掴んだ。すると相手の動きは止まり寄り切った。

中日は西前頭3枚目の灰龍(はいりゅう)と当たった。灰龍は両小結よりもさらに小さい小兵力士だ。僕は鋭い出足で頭から当たっていき、吹き飛ばして勝利を掴んだ。

中日を過ぎた時点で全勝は僕以外では横綱・天馬と関脇・燈、一敗は大関・雨竜と関脇・天城富士となった。ベテランの実力者と若手のホープで綺麗に別れた形だ。そして明日と明後日は大関時代に僕に土をつけた両関脇と立て続けに対戦することになる。僕はここを全力で乗り切ろうと思った。

9日目は東関脇の(ともしび)だ。僕だけではなく明らかに燈もデカくなっていた。同い年なのだからあってもおかしく無い話ではあったが。立ち合い燈は案の定突き飛ばそうとしてきた。威力が確実に増している。だがしかしこっちの腕っぷしも増したのだ。前みつを掴んだ右手を頼りに一気に胸を合わせた。燈は慌てて四つに組もうとしたが無意味だった。僕はほぼ吊るように寄り切った。単純に力で上回った形となった。

10日目は西関脇の天城富士(あまきふじ)だった。千風に次ぐエチオピア出身力士だが体格も相撲内容も千風とはまるで違う。不思議な感覚に陥った。天城富士は立ち合い僕の予想と反してがっぷり四つに組んできた。燈と違い手足の太い天城富士は四つ相撲を取れるようになれば正直厄介だろうなと思っていたので慌てそうになった。しかし落ち着いて身体を捻ると天城富士の上手は思ったよりあっさりと切れた。そこで上手を投げに行くと1回目は耐えた。そこで僕は前みつを放し首を抑えてもう一度投げた。すると耐え切れず倒れた。

両関脇の山を超えた僕は最高に相撲を楽しんでいた。全勝へと順調に近づいていたが逆に拘らなくなってきた。

11日目は東大関2の琴ノ(ことのしん)だった。両関脇に続く超大型力士だったが拍子抜けする程に手応えが無かった。怪我で下半身は思うように動かないのが見て取れた。怪我を悪化させないようにそっと寄り切った。

12日目の西大関2の芦の(あしのさと)はより悲壮感が漂っていた。何故なら既に角番で既に七敗、今日負ければ52場所務めた大関から陥落することが確定していたからだ。立ち合いの威力は案の定イマイチだった。胸筋がやられ思うようにおっつけができないようだった。僕は思わず顔を背けながら寄り切った。この二日間の取組は体への負担はなかったがあまり気持ちの良いものではなかった。

13日目の東正大関の雨竜(うりゅう)は現時点で10勝2敗とそれなりに好調だった。しかしメンタル的には悪く無かったがそれでも実力差が空いてきていることを感じた。中に入ってきて両差しとなった雨竜に対し僕は上から極めるように吊り出した。天馬の様な相撲だ。実際土俵を降りると天馬からも睨まれた。

14日目の西大関の伯勝山(はくとざん)だった。9勝5敗という何とも言えない成績だったが、雨竜より手強く感じた。立ち合いまず突っ張ったが動かない。差そうとしても脇が硬かった。そこで僕は何発も追加で突っ張り、後ろに回り込んだ。反応は追いつきかけていたが完全に追いつく前に押し出した。

 僕はこうして初めて全勝で千秋楽を迎えることができた。土俵下で天馬の取組を見たが昨日僕がやったのと全く同じやり方で雨竜を吹き飛ばして全勝していた。

 明日はいよいよ横綱・天馬戦。平成末期から令和初頭に無双した横綱・桂大錦のせいで霞んでしまっているが15度の優勝を重ね6連覇もしている大横綱だ。現在まで5戦全敗。それでも半年にも渡って対戦していないので楽しみだ。新横綱としてここに芽吹く覚悟をした。

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