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鋼師  作者: 宰相トマワ
19/27

有事

桜狼と離れた後俺達は基地への帰路に着いた。この感じだとちょっとした観光で終わって帰国かな...ちょっと名残惜しいな...という風にぼんやり考えながら歩いていると突然団長から電話があった。

「君たちは今どこにいる?至急戻ってきてくれ。“例の物”が出現したらしい。あと30分後には出発する。では。」

と言って切られた。

「大丈夫かなぁ?」

あおちゃんが言った。大丈夫な保証はどこにもない。結末がどうなるかの予想もできない。ひょっとすると、俺たちのせいで世界が滅んだりするかもしれない。少なくとも人間を倒すのとは訳が違うだろう。

「まあなんとかするしかないでしょ。急ごう。」

俺は言った。あおちゃんはこくりと頷いた。

 俺たちは基地に着くと団長が待ち構えていて

「もう行くから後ろに乗って。」

と言って装甲車を指差した。俺たちが乗ると車は出発した。

 車は小窓がついていて外を見ることができたが、見たところで今どこにいるか分からなかったので見るのをやめた。そしてあおちゃんは車酔いで俺の横で潰れていた。俺の不安は加速した。

「もう着くぞ。この村のはずだ。」

1時間くらい揺られたあと団長が言った。ジャングルの中の農村だった。周りに何も気配を感じなかった。

「何も居ないように思えますが...?」

俺は団長に言った。居ないならそれに越したことはない。しかし何故か俺はこのまま上手くいかないと思った。嫌な予感がした。

「伏せろ!!」

団長が叫んだ。少しだけでも訓練をしておいて良かった。俺達は即座に伏せることができた。するとジャングルからぞろぞろと男達が出てきた。八星会か?と俺は思った。しかしそれは違った。

「流石は師団長様や。ええ勘しとる。でももうおしまいやで。」

広墨組若頭の皐月山だ。皇軍側は俺たち2人の他、団長と隊員5人程なのに対し広墨組側は武装した組員が50人はいる。幾ら俺や洗練された軍人でも流石に敵わない。でも後方で1個大隊が丸々待機してるはずだ。

「我々皇軍は屈しない。構えろ。」

団長が言うと軍人達が構えた。すると皐月山は

「ほう、もうやんの?そいつらをこっちに引き渡してくれるならそれでええのに。」

と言った。概ねそんなところだろうなとは思ってた。まあ俺を殺めずどうやって引き留めるつもりなのか気になるが。

「我々は私人を守る義務がある。お前達に引き渡す訳にはいかない。」

団長は言った。俺は惚れた。

「後方が来るまで時間稼ぎしようとは思わんかったんか。まあ足止め食らってるから無駄やったけどな。じゃあやれ!!」

皐月山がそう言うと組員達は拳銃を取り出した。その時だ。

「ドスッ!!ドスッ!!」

組員達が撃ち抜かれていった。後方部隊が到着したのだ。

「山本参りました!!」

山本中佐が言った。すると団長は

「ああご苦労だった。」

と少し微笑みながら言った。心強かったが思ったより展開が早かった。ひょっとして広墨組が居たことを知ってたのだろうか?

「もしかして組員が待ち伏せしてることをご存知だったのですか?」

俺は団長に聞いた。団長は

「なんとなくな。しかしこんな早く突破してくるとは思わなかった。恐らく数が少なかったのだろう。奴らもまさか大隊が待機してるとは思わなかったのだろうしな。」

と言った。すると皐月山は

「やっぱあかんかったか...」

と小声で呟いた後

「お前らあかんわ!!撤退や!!」

と言った。余りにも呆気なかった。組員は全員車に乗り込み、出発した。去り際に皐月山は

「“皇軍様”は自分の役割忘れとるんとちゃうかねぇ!!」

と言った。

「何のつもりだ!!無駄な抵抗はよせ!!」

と団長が言った。態度を見る感じ、はったりと言うわけでもなさそうだ。

「団長!連絡が入りました...」

軍人の1人が団長に何かを伝えた。

「そういうことか...」

団長は舌打ちをした後、大声で

「有事だ!!至急前線へ向かえ!!場所はカジウェルだ!!」

と言った。有事...?ってことは戦争か...?まさかこの国でも戦争が勃発することになるとは思わなかった。

「君達は私が責任を持って日本に送り届けよう。」

団長が言った。何がなんだか分からない。その時嫌な考えが頭を巡った。

「木ノ華は?桜狼は?林さんは...?」

彼らはこの国にいる。戦争が起きたことなど知る由もない。頭が混乱し俺は足が動かなかった。

「何をしている!!行くぞ!!」

団長の叫び声で我に返った。するとその時

「いぎゃああああああ!!」

ジャングルの方から組員達の悲鳴が聞こえた。声の方を見ると巨大な黒いモヤが見えた。間違いなく“例の物”だ。

「本当にあるのか....すまない、私たちもできる限りはサポートするつもりだがいかんせん状況が状況だからサポートしきれる保証はない!!だがどうか、頼む!!」

団長が頭を下げた。ここまで来てそのまま帰れる訳が無かった。

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