愛されて終わりたかった
おや?
バックヤードに女の子が一人戻ってきた。なになに、騎士サマがお呼びだと。
まいったね……とうとう嗅ぎつけられたか。
はいはい、今行くよ。騎士サマにも支度したらすぐ行くと伝えておくれ。
バレてしまっては仕方ない。いつかこうなる日が来るとは思ってたけど。
まぁいいさ、どうせもう死んでるようなもんだ。毎日死んだように生きている。
だから、死ぬってことに抵抗はない。
むしろ殺して欲しかったんだから……あれからずっと。
だけど、これで本当に終わってしまうのかと思うと……こうも寂しくなるなんて。
いざ自分の終わりに直面するとなにかしら後悔するもんなんだって、そう話には聞くけど……やっぱり私もそうなのね。
色々過去を思い出してきて。今さらもう遅いって分かってるのに。
ああ、一度でいいから……誰かに愛されてみたかった。
その場限りのとかじゃなくて。本当の愛情。
もしできたなら……そうやって愛されて、殺されたかった。
本当に愛してくれる人に……アタシを想って、アタシのために、殺してほしかった。
アタシのために、このグズグズに腐りきってどうしようもなくなった命を終わらせてほしかった。
今となっちゃ叶わぬ願いさ。
結局誰からも愛されることはなく、人知れず勝手に死ぬ。
まさかこれほどまで寂しいとはね。
いや、いるにはいたか……たった一人だけ、アタシに想いを寄せていた男が。
恋仲とまではいかなかったけど。
まぁずいぶん昔の話だし、もう相手は綺麗さっぱり忘れちまってるだろうがね。
気さくで面白い人だったわ。まだ騎士見習いの若い男でね、大怪我してたから介抱してたら仲良くなって。
本人は隠してるつもりだったんだろうけどアタシにはバレバレだった。
挙動不審でちょっと近く座っただけで顔真っ赤にしてさ。
でも当時の私は執事に夢中だったから……
ああ、そうだ。思い出した……ジェームズだ。
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