表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

博士と冬を探す少女

作者: 車馬超

 エス()はとても(あたま)のいい博士(はかせ)だった。

 だから(まち)(ひと)たちは(なに)(なや)みがあると(かれ)(もと)()相談(そうだん)するのだ。

 ある()町内(ちょうない)()(おとこ)(ひと)(たず)ねてきました


博士(はかせ)(くつ)片方(かたほう)()としてしまいました」

「あはは、それは簡単(かんたん)だ……(のこ)った(くつ)をそこの(かがみ)(うつ)したまえ」

(たし)かに(かがみ)(うつ)った(くつ)反対(はんたい)()きに……()くなったのと(おな)(くつ)になりましたが……」

「そうしたら(した)についている()()しを()けてごらん」

「あっ!? (かがみ)(うつ)した(くつ)ができあがってるっ!! ありがとう博士(はかせ)っ!!」


 (おとこ)感謝(かんしゃ)して(かえ)って()きました。

 博士(はかせ)満足(まんぞく)そうにうなずくと、(あたら)しい研究(けんきゅう)(つづ)けます。

 (つぎ)()(おんな)(ひと)がやってきました。


博士(はかせ)(わたし)旦那(だんな)がお(さけ)()みに()ったまま(かえ)ってきません」

「あはは、それも簡単(かんたん)だ……そこの(かがみ)(した)にある(はこ)(なに)かご主人(しゅじん)()()けていたものを()れてごらん」

「はい……あぁっ!! (かがみ)(なか)景色(けしき)()わりましたっ!!」

「ご主人(しゅじん)(にお)いなどを()()って、その()のご主人(しゅじん)(うご)いた景色(けしき)をまるで(いぬ)()いかけるように()せてくれるのです」

「いました、こんなところで()ているなんて()ずかしいわ……ありがとうございます博士(はかせ)


 (おんな)(ひと)感謝(かんしゃ)して(かえ)って()きます。

 博士(はかせ)満足(まんぞく)そうにうなずくと、(あたら)しい研究(けんきゅう)(つづ)けます。

 (つぎ)()はお年寄(としよ)りがやってきました。


「ふが……ふががぁ……ふがぁ……」

「あはは、簡単(かんたん)簡単(かんたん)……そこの(とり)かごに入れてある機械(きかい)(とり)(かた)()せてみてください」

「ふがふがぁ……」

(わたし)()()()くなってしまったのです、どこにあるかわかりませんか?』

「その(とり)はどんな言葉(ことば)もわかりやすくしてくれるのです……それでしたらその(とり)()れていくといい、そして(さが)(もの)(おも)()かべればその場所(ばしょ)()んで()ってくれますよ」


 博士(はかせ)言葉(ことば)に、お年寄(としよ)りは感謝(かんしゃ)して(かえ)って()きます。

 博士(はかせ)満足(まんぞく)そうにうなずくと、(あたら)しい研究(けんきゅう)(つづ)けます。

 (つぎ)()若者(わかもの)がやってきました。


博士(はかせ)、もうじきクリスマスだというのに(ぼく)には一緒(いっしょ)()ごす彼女(かのじょ)()ないのです」

「あはは、簡単(かんたん)(はなし)じゃないか……そこのドアを(ひら)いてみたまえ」

「ああっ!? ど、ドアの()こうで可愛(かわい)らしい女性(じょせい)(ぼく)()かって微笑(ほほえ)んでくれていますっ!!」

「ドアノブが意識(いしき)()()って、(きみ)(のぞ)女性(じょせい)()世界(せかい)へとつなげてくれるのだよ」

「ありがとう博士(はかせ)っ!! (ぼく)はこの世界(せかい)(あたら)しい人生(じんせい)()きてみますっ!!」


 若者(わかもの)感謝(かんしゃ)して(いきお)いよくドアの(なか)へと()()んでいきました。

 博士(はかせ)満足(まんぞく)そうにうなずくと、(あたら)しい研究(けんきゅう)(つづ)けます。

 (つぎ)()少女(しょうじょ)がやってきました。


博士(はかせ)(わたし)(ふゆ)(さが)しているの……どこにあるか()らないかしら?」

「あはは、簡単(かんたん)だとも……そこの玩具(おもちゃ)のピストルを(そら)()かって()ってごらん」

「あら、(そら)(きゅう)(くら)くなったわ……まあ(ゆき)だわっ!!」

「この(ゆき)はしばらく()(つづ)くのだよ、そうすればまさに一面(いちめん)雪景色(ゆきげしき)だ」

「だけどそれって(ふゆ)なのかしら?」


 少女(しょうじょ)疑問(ぎもん)(こえ)()いて博士(はかせ)()()まります。


「ふむ、簡単(かんたん)(ふゆ)()えば(ゆき)だとイメージしてしまったが……なるほど(たし)かに(べつ)季節(きせつ)でも()らないとは()()れないなぁ」

「じゃあやっぱりこれは(ふゆ)じゃないのね……博士(はかせ)(ふゆ)ってどこにあるのかしら?」

「むむむ、これは(こま)ったぞ」


 博士(はかせ)(むずか)しい(かお)をして(なや)みました。

 (いま)までどんな相談(そうだん)解決(かいけつ)してきた博士(はかせ)にとって(はじ)めてのことでした。


「ごめんなさい、(むずか)しいことを()いてしまって……自分(じぶん)(かんが)えてみますわ」

「いやいや、()ちたまえ()ちたまえ……(わたし)()からないことを(きみ)のような子供(こども)がわかるとは(おも)えないのだ」

「じゃあどうしたらいいのかしら?」

「また明日(あした)()たまえ、それまでにはこの(わたし)(こた)えを()しておくとも」

「わかったわ、じゃあ博士(はかせ)また明日(あした)


 少女(しょうじょ)足取(あしど)りも(かる)(かえ)って()きました。

 しかし博士(はかせ)はそれを()余裕(よゆう)もなく、研究(けんきゅう)(ほう)()して必死(ひっし)(かんが)えます。


(ふゆ)……(ふゆ)とは(なん)だ?」


 分厚(ぶあつ)(ほん)をめくり、(ふゆ)について調(しら)べます。


(ふゆ)季節(きせつ)……(ふゆ)(さむ)い……(ふゆ)(よる)(なが)い……(ふゆ)は……」


 博士(はかせ)はあらゆる(ほん)資料(しりょう)(そろ)っている室内(しつない)調(しら)べて(まわ)ります。

 博士(はかせ)はあらゆる問題(もんだい)解決(かいけつ)できる優秀(ゆうしゅう)(あたま)時間(じかん)をかけて(かんが)えました。 

 だけど(なに)(おも)いつくことができません。


「おかしいなぁ、この場所(ばしょ)にはあらゆる知恵(ちえ)知識(ちしき)(そろ)っているというのにどうしてわからないのだろうか?」


 (いま)まで博士(はかせ)はどんな(なや)みもこの()解決(かいけつ)してきたのです。

 だからこのような(とき)(ほか)にどうすればいいのかわからないのです。

 (ほん)をめくり資料(しりょう)をあさり(あたま)(ひね)り、(むずか)しい数式(すうしき)()(なら)べて……それでも(こた)えを()すことはできませんでした。


 そうしているうちに(つぎ)()になり、約束(やくそく)(どお)少女(しょうじょ)がやってきました。


博士(はかせ)(わたし)(ふゆ)(さが)していたの……」

「すまないがこれはとても(むずか)しい問題(もんだい)なのだ……だがもう(すこ)しだけ時間(じかん)をくれればきっと(こた)えを()つけてみせるとも」

「あら博士(はかせ)まだ(ふゆ)()つけてなかったの? (わたし)はもう()つけたわよ」


 (うれ)しそうに(わら)少女(しょうじょ)言葉(ことば)()いて、博士(はかせ)はとても(おどろ)きました。


「おお、なんということだっ!! 私があらゆる()()くして()つけられなかった(こた)えを一体(いったい)どうやって()つけたというんだい?」

「それはね博士(はかせ)、こっちへ()てちょうだい」


 博士(はかせ)少女(しょうじょ)()われるがままに(そと)へとついて()きます。

 そして一歩(いっぽ)二歩(にほ)(ある)いたところで、少女(しょうじょ)(あし)()めて()(かえ)ります。


「どうかしら博士(はかせ)、わかったかしら?」

(すこ)()ってくれないか、(きみ)()かったのならば(わたし)にもわかるはずだ……ううん……」


 博士(はかせ)はその()(かんが)えようとしますが、(かぜ)(さむ)くてとてもそれどころではありません。


「いかんいかん、こんなに(さむ)くてはとても()からない……一度(いちど)部屋(へや)(もど)って(かんが)えようじゃないか」

「あら、それじゃあ駄目(だめ)博士(はかせ)……じゃあもう(すこ)(ある)きましょう」


 少女(しょうじょ)にそう()われると博士(はかせ)はついていくしかありません。

 (ゆき)()もった博士(はかせ)(にわ)をぐるりぐるりと(まわ)少女(しょうじょ)、その(あと)博士(はかせ)はついて(まわ)ります。


「さあ博士(はかせ)、これでわかったかしら?」

「ううむ、(おな)場所(ばしょ)をぐるぐると(まわ)ることが(ふゆ)関係(かんけい)あるのだろうか?」


 博士(はかせ)はその()(かんが)えようとしますが、()()もった(ゆき)()まった(あし)(つめ)たくてそれどころではありません。


「いかんいかん、こんなに(つめ)たくてはとても()からない……やはり部屋(へや)(もど)って(かんが)えるべきだ」

「あら、これでも駄目(だめ)なのね……じゃあもう(すこし)しだけ(ある)かないといけないわ」


 少女(しょうじょ)にこう()われてしまうと博士(はかせ)(あと)()いかけるしかありません。

 (にわ)から()てしばらく(ある)き、ふと少女(しょうじょ)(みず)たまりの(まえ)()まりました。


「さあ博士(はかせ)、あの(みず)たまりを()んでみて」

「ううむ、これが(ふゆ)だとは(おも)えないのだが……えいっ!!」


 博士(はかせ)(あし)(みず)たまりを()むと、ピキピキと表面(ひょうめん)にひび()れができました。

 (あま)りの(さむ)さに(こお)()いていたのです。

 その(あし)(うら)から(つた)わる感触(かんしょく)に、博士(はかせ)(なつ)かしさを(かん)じました。


「ううむ、(わたし)子供(こども)(ころ)はよく(ふゆ)にこうして(あそ)んだものだ……あっ!?」

「やっとわかったかしら?」

「ああ、そうだ……これが(ふゆ)だったね」


 そこでようやく博士(はかせ)()()きました。


(いえ)から()たらとても(さむ)(おも)いをした……この(さむ)さが(ふゆ)だったのだ」

博士(はかせ)部屋(へや)はいつでも居心地(いごこち)がいい温度(おんど)だもの、そこに()たらわからないわ」


 少女(しょうじょ)()(とお)り、機械(きかい)調整(ちょうせい)された室内(しつない)にいる博士(はかせ)温度(おんど)(ちが)いなどすっかり(わす)れていました。


()()もった(ゆき)足跡(あしあと)をつけて(つめ)たさに(ふる)える……これもまた(ふゆ)だったね」

博士(はかせ)部屋(へや)から()ないもの……()じこもっていたら()づけないわ」


 少女(しょうじょ)()(とお)り、部屋(へや)にある(ほん)資料(しりょう)()んで(ゆき)()らせる機械(きかい)(つく)れてもその(つめ)たさなどすっかり(わす)れていました。


(こお)()いた(みず)たまりや霜柱(しもばしら)()みつけて(あそ)ぶ……(ふゆ)(かん)じる(あそ)びだ」

博士(はかせ)無駄(むだ)なことはしないものね……それじゃあわからないわ」


 少女(しょうじょ)のいう(とお)り、(やく)()研究(けんきゅう)しかしてこなかった博士(はかせ)(あそ)ぶということをすっかり(わす)れていました。


「なるほど、ようやくわかった……(ふゆ)とは()つけるものではなくて(かん)じるものだったのだ」

「あらまた博士(はかせ)ったら(むずか)しいことを()って……(こま)った(ひと)だわ」

「これはすまないね、しかし(きみ)はなぜ(ふゆ)()っていながら(わたし)(たず)ねたんだい?」

「うちのパパとママが(ふゆ)()(ふゆ)()るというから、どこまで()ているか()になったのよ」

「なるほど、そう()うことだったのか」


 博士(はかせ)納得(なっとく)すると、少女(しょうじょ)満足(まんぞく)そうにうなずいて()()って()きました。

 それを見送(みおく)った博士(はかせ)もまた満足(まんぞく)そうにうなずいて自宅(じたく)へと(もど)っていくのでした。

 その途中(とちゅう)博士(はかせ)(こお)()いた(みず)たまりを()つけては()っていき()()もる(ゆき)には足跡(あしあと)をつけて(まわ)りました。


部屋(へや)(なか)でいくら(ほん)資料(しりょう)()んでもどれだけ時間(じかん)をかけて(かんが)えても、この感触(かんしょく)()ることはできないだろうなぁ」


 (つぎ)()から博士(はかせ)は、(なに)(なや)(ごと)をするときは(そと)出歩(である)くようになりました。

 すると不思議(ふしぎ)なことに部屋(へや)()じこもって(ほん)資料(しりょう)()んでいた(とき)には()づかなかった方法(ほうほう)()つけることができるのです。

 おかげで博士(はかせ)研究(けんきゅう)はもっと素晴(すば)らしいものになり、そんな博士(はかせ)(たす)けてもらおうとより(おお)くの(ひと)(たず)ねてくるようになりました。


 そして今日(きょう)博士(はかせ)のところに(ひと)がやってきました。


博士(はかせ)(わたし)(はる)(さが)しているの……どこにあるか()らないかしら?」

「あはは、簡単(かんたん)だとも……なあにちょっと(そと)()(さが)せばすぐに()つかるとも」

「それもそうね、じゃあ博士(はかせ)……一緒(いっしょ)(さが)してくれるかしら?」

「もちろんだとも」


 博士(はかせ)満足(まんぞく)そうにうなずくと、研究(けんきゅう)()()めて少女(しょうじょ)(とも)(はる)(さが)しに(そと)へと()かけていくのでした。

おまけ


「博士、私ねサンタクロースをさがしているの……一緒に探してくれる?」

「ううむ、これは難しい問題だ……もちろん協力するとも」


「博士、私ね白馬に乗った王子様を探しているの……一緒に探してくれる?」

「ううむ、これは難しい問題だ……もちろん協力するとも」


「博士、私ね素敵な旦那様を探しているの……一緒になってくれる?」

「ううむ、これは難しい問題だ……もちろん協力する……うむ?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >「博士、私ね素敵な旦那様を探しているの……一緒になってくれる?」 博士の見た目は書かれていないのに、わたくし、髭の生えた白髪のじいちゃんだろうと思っていたのです。 もしかして、博士、意外と…
[一言] おまけが素晴らしい。頭でっかちになってはダメという教訓も含めて楽しく読ませていただきました。読んだ後に心が暖かくなるお話でした。
[一言] なんでもできる博士とあどけない少女の問答が面白くて、夢中で読みました。 少女は頭でっかちになってしまった博士のために、天から遣わされた天使かと思っておりましたら、まさかの! 後書きの甘さに…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ