シンプルな考え方
あたしとサザは手を繋いで王国を出た。勿論ミゲルとサイレも一緒だ。いつもの装いとは違う、国に選ばれし者達の勲章でもある姿で出発した。
あたしは紫色のマントを漂わせながら、黒いドレスを纏う。サイレは丈の短いスカートと上にふんわりと白い布を被っているのが特徴。ミゲルはまるで騎士のような国から指定された軍服だ。女三人の中で一番男らしい服装をしている。そんなあたし達の姿を不思議そうに見つめてくるサザは、いつも通りの服装だった。町民の服に国の掌紋の刺繍が施されている。
「ジュビア、どこに行くの?」
何の説明も受けてないサザは不思議な顔をしながら、目線を上へとあげた。その先にはあたしの顔が瞳にはっきりと映っているのだろう。口でも瞳でも問いかけてくる彼の姿を愛おしいと感じている自分がいた。
「冒険にいくのよ、きっと素敵な世界が待っているわ」
まだ子供、だからこそ大人の歪んだ思想にこの子を汚したくない。何も知らないままで純粋なままでいてほしいから、少しおどけたように言ったの。それが正しいか何て分からないけど、最善だったと思う。
「ふうん」
納得していない様子のサザ。そんな所も可愛く思えてしまうあたしって末期?あたしは繋いでいた手を離すとサザの頭をワシャワシャと撫でた。まるで小動物を可愛がるように。
「髪がなくなるよっ」
「こんな程度ではなくなりません、残念」
そそ、その笑顔よ、サザ。貴方には笑顔がよく似合う。そんな事を考えていると、後ろからくすくすと笑い声が聞こえてくる。
「ジュビアったら」
「ふふふ」
いつもと変わらない緊張感のないあたしに呆れたミゲルとサイレだ。ミゲルは一言呟くと、ため息を落としながら、頭を抱えた。反するサイレはただただ口を押え笑っている。
「なーにーよ、ミゲル、そんな辛気臭い顔して、サザとサイレを見習いなさい」
「うるさいわね、ジュビアの癖に」
反抗する言葉を言っているけど、ミゲルの表情が柔らかくなってきたのが分かる。勇者を創り出そうとしている国が敵でもあたし達ならきっと変えれる、変えてみせる。メンタルで負けたらダメなのよ。だからこういう空間も大切って訳。ずっとピリピリしていたら、ダウンしちゃうでしょ?
人間なんて、そんなものよ。深く考えだすときりがないけど、シンプルに片付けると簡単。そして人通しが繋がる事もシンプル、一滴の軌跡がきっかけでスムーズになる事だってある、あたしはそう信じてる。
そんなあたし達の様子を探っている人物がいる事にも気づかずに……




