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それぞれの役割

 欠けたハートの宝石の片割れはサザの体の中で生きている。取り出す事は出来るけど、あえてそれをしなかった。荒れた世界を修復する為にあたしの宝石が必要になるの。サザのは違う役割を持っているから、そう簡単には現れない。


 目を覚ますと、苦しんでいたはずのサザがちょこんと座っている。何事もなかったかのように、落ち着いている。


「サザ」

「起きたんだね、ジュビア」


 それ以上の言葉は出てこない。話は宝石が取り持ってくれたから、そこで終わらせたのだ。この世界でする会話は、全て天界に繋がっている。これ以上、手の内を明かす必要がなかったの。だからこそ、何もない言葉を吐いて、アイコンタクトで確認すると、それに答えてくれる。それが合図だった。


 空間が変形の体制を取り始める。全てはあたし達の生きていく世界に戻る為に必要。その引き金を引いたあたし達は、ゆっくりと前に進んでいく。


 歩けば歩くほど、今まで存在していたはずの光景が崩れて、あたし達の知っている風景に移ろっていく。目の前には世界と世界を隔てる透明の壁があるけど、宝石を手に入れたあたし達には、なんの問題もなかった。


「行きましょう」


 天界が仕掛けた喧嘩に乗るつもりはない。ただ自分の世界が、これ以上利用されるのが嫌なだけ。だからこそ、あたし達の存在が鍵になる。


 シナリオでは炎龍が地を燃やす事で浄化が始まる。世界の解体をする為の下準備として、組み込まれた彼らの計画だ。浄化の力は全ての悪の根源を燃やし続け、消滅を促す。そして人々がこの世界に収容される前の状態へと戻していくの。そこにチャンスがある。天使の祝福を受けたアダムとイブが天の舞をする事で皆は器となる肉体を開けわたし、魂のみの存在になってしまう。それを書き換える事で、世界をあたし達のものにしちゃおうって戦法。うまくいくかは分からない。今まで試した存在がいないから尚更、結果がどう転ぶのか不透明なの。


「ずっと一緒にいてくれるわよね」


 繋がれた手がじんわりと暖かくなっていく。それはまるで心と心の対話そのもの。



 ◻︎◻︎◻︎◻︎


 

 広がる世界はあたし達がとじ込まれている間に様変わりしていた。緑が広がり、割れた地も綺麗に形を取り戻している。全ての闇の根源も最初からなかったように、静まり返り、大きな森に覆われ始めた。


 あたしはサザの目を見つめながら、頷くと、そっと手を離す。自分の役割を務める為に、動き出さなければならないからだ。


 全ての終焉を意味するサザのハートの宝石とあたしの持っている始まりを告げるハートの宝石を合わす事で欠けたハートが一つになり、世界の消滅が始まる。それを上書きするには、聖女の力を注いで、原型のない部分を合わせながら、天の舞をする。


「行ってくるね。サザは自分のする事をして」


 宝石を胸に押し込むと、心臓目掛けて管が作られていく。肉体と宝石がリンクするのを確認すると、聖女の力で羽根を作り、空目掛けて飛び立った。


 例えこの力を失ってでも、まだあたしには二つの能力が残っている。それが鑑定スキルと創造者の力だった。この二つの力は互いに支え合って存在している。だからこそ、この力を対価にする事は不可能だったの。

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