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卓上と共有

 いつも最後はすれ違ってばかりの運命。私達は何度も交わり、離れ離れになって、星屑の一部に散っていく存在だった。


「きっと次は、幸せになれるよ」

「そうだね」


 何度も願って願って、散っていく花びらのように希望は打ち砕かれていく。想いの強さが試されているなんて考える事なく、光を見失っていたのかもしれない。


「さて彼女達はどう動くかね」


 カタンと卓上に人の形をした小さなレプリカを動かしていく。その中心には二つの冠をしている二人のレプリカが光を放っていた。


「ルグア様、流れに乗るのではなかったのですか?」


 天使の輪から流れ出る力は卓上を包み込み、重要な人物達の行動を遅らしていく。より良い生命体を作り変える為に、模造された世界を飲み込ませ、新世界を呼び込む為に。


「作り物とは言え、より深く疑似体験をしてもらいたいのでな。その方が生きている実感が出来るだろう。通常よりもな」

「……貴方という方は」


 彼らからしたら一種の遊戯だ。天界はこうして人々を操り、気候も自然も、全ての色を支配している。

 ゴウゴウと燃え盛る炎を見つめながら、ラングニールの業火に喜びを震わした。


「これだから面白いのだよ、異世界人は」



 愉快そうに微笑む瞳の奥は冷たい空間が存在している。何かを重ねるように。それはきっと、あたし達にさえも分からない至高の光景なのだろう。



 

 パリンと見えない鏡が弾け飛ぶように、あたしとサザを遮っていた結界が敗れた。自分の想いを彼に注ぎ込むように発動した力が原因みたい。無理矢理切り分けられた二つの空間がせめぎ合いながら、ぶつかり弾けたの。


 一瞬、何が起こったのか理解出来なかったけど、考えるよりも、隠されたように現れたサザの出現に心が躍ったのを覚えている。


「サザ」


 私の知っているサザがそこにいる。子供だと思っていたのに、急成長し男性になって、驚かされた事も、遠い昔のように思えた。


 白い光に包まれているサザは苦しそうな表情から安堵へと変化していく。悪かった顔色も、冷たくなっていた体温も、安定したよう。


「ごめんね、サザ」


 一人にさせてごめんなさい。貴方の苦しみに気づけれなかった。あたしは何も出来ない、弱さに包まれている一人の女性だった。


 日常の幸せにも気づかずに、自由を求めた結果がこれなのかもしれない。ジュビアとしてだけじゃない、遠い記憶でも同じ事を繰り返していたのよね。

 

 あたしは一人じゃない。沢山の人に支えられて、喜びを分ちあって、悲しみを拭い合って、喧嘩する事も、意見が食い違う事も、その全てが当たり前だった。だけど、その全てに感謝を忘れていたのだと思い知った。


「ありがとう」


 複雑な感情が織り混ざり合いながら、宝石が生まれる。二人の感情がリンクしたからこそ、生まれたものだった。


「涙が……」


 あたし瞳から溢れた涙はツガイを探しながらかけたハート。まごころ、温もり、愛が圧縮されたような力を纏いながら、光っている。


「ん」


 ピクリと動きもしなかったサザが宝石に反応するように、瞼を揺らした。彼が何かを見ている気がして、心臓が合わさっていく独特な感覚を感じながら、瞼を閉じた。


「……ジュビア」

「サザ?」

「彼らが僕達を見てる。天界を見る瞳を持つ僕の視野を共有しているんだ。もう少しで現実世界に戻るから、よく聞いて……」


 響くサザの声が男性の声から少年の声に変わっていく。まるで時間が巻き戻っているように。


「だから君が……」


 静かに、彼の考えを受け取ると、リンクが切れた。そうやって、あたしはあたしに。彼は彼に覚醒していく。

 

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