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想いを力に


 一人の力だけでは変化は訪れなかったと思うの。皆が自分の役割を受け入れたからこそ、こうやって前に進む事が出来る。あの時のあたしは何も気づけなかった。ただ自由に、自分の思い通りに生きていければいいと心の奥底では自分本位な考えをしていた事に、今更になって気づいたの。


 その中心にはいつもサザがいた。離れている時も、辛い時も、苦しい時も、彼の存在を確かめながら、繋がっている想いがあると信じてこれたのかもしれない。


「あたしを救ってくれたのよ、貴方は。だから今度はあたしの番なの」


 表はジュビアと裏は門番の二つの縛りをこの空間に歪みをつけさせる事が出来れば、彼を苦しめている呪いを解く事が出来るはず、そう考える事で答えを編み出そうとしていた。賭けだったけど、四度の転生を繰り返しながらジュビアとして最終地点へと辿り着けたのは奇跡なのかもしれない。


 この手がサザの心を自由へと誘うきっかけになるのかは分からない。それでもあたしは諦める事が出来なかった。


「あたし達に予行練習させるなんて天空の守護者もタチが悪いわね。卓上の上で操られっぱなしじゃ、ムカつくじゃない」


 全ての矛盾が一つの形になり、複数の感情と人格が本当のあたしを作り出していく。


 いや、これがあたしの原型なのかもしれない。

 

 闇は光により徐々に瘴気を除去していく。微かに残るのは、サザが運命を受け入れる準備が出来ていない事が原因だと分かる。


「貴方も本当の自分を受け入れて、あたしと共に行きましょう」


 想いを言葉へ託すと、淡い光が満ちていく。今までの後悔を取り戻すように、やり直すように、あたしは泣いている貴方へと近づいていくの。何も出来なかった、弱いあたしは、もういない。


「ラジエージハンニバル」


 想いを力に変える。魔法とも浄化とも違う、この力は世界を壊し、再生する力を持っている。この世界は守護者達の気まぐれに作られた偽りの世界。亜空間を使い、複数の異世界と繋ぐ為に出来た碁盤のようなもの。そこに人の意思は求められない、全ては守護者達が思う通りにしか行動は出来ないのだから。


 創造者の使徒として恩恵を持つ存在とその周囲だけは違う。中心を求めるように、キャラクターが自我を持ち、自分で物事を決めていく。だからこそ、あたしの周りには何度も同じ時を生きた繋がりのある転生者しか集まらない。


 全ては世界を作り変える実験と、勇者達を作り出し、異世界へと召喚させる為の隠されたシナリオが隠れていた。


「サザ、あたしは貴方を知ってる。何度も何度も同じ時を過ごしてきたじゃない。親子の時も姉弟の時も親友の時も従者だった時も……」


 あたしは全ての装備を捨て、両手で霧を割いていく。自分の役割を思い出した、今のあたしには自分を守る武器も、装備も必要ない。立ち向かう勇気と、信じる気持ち、その二つさえあれば見えない武器が使えるようになる。


 それは心の強さ。

 だからあたしは何度でも手を伸ばすの。

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