勇者スキル
目を閉じ、神経を昔の自分に重ねながら感覚を思い出させていく。少しの変化なら簡単に抑える事は出来るが、生成者との接触があったことを考えると、一度この世界の流れを変える必要があった。久しぶりに使うスキルをこの世界で発動させてしまうと影響を与える可能性は高い。しかし、試す価値はある。
——スキルを解放します
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勇者スキル「リアクション」発動
全ての生きとし生けるものを対象とする勇者スキルの一つ「リアクション」本来なら人が対象のものになるが、自然界を生き物として具現化させ、全てを元の形へと戻すように、上書きをしているゴウが独自に生成しt新しい勇者スキルの一つ。勇者のスキルは誰にでも使えるものではない。生まれ落ちた瞬間から奥深くに封印されている。勿論、選ばれし者だけが解放出来る代物だ。
ゴウだけが独占出来るスキルだったが、サザの出現で変わり始めているのが現状だった。
彼の中にいる生成者がリミッターを外す。枷が外れ自由になったゴウは天へ視線を注がすと両手で剣を重ね、天空へと刺激を与え始めていく。ガチャンと二つの剣の刃が声をあげると、赤い炎を纏った朱雀と氷で作られた青龍が姿を現し、地上を支配していく。瘴気雨は氷漬けになると、青龍と朱雀は連動して全ての闇を吸収して自分の力へと変換していった。
全部を吸い尽くすと、力の暴走が始まる可能性が高くなる。ある程度元に戻しておけば、ジュビアが中心となり、この世界の物語続いていく。
「ゴウ、まだなの?」
「もう少しで終わる。後は二人に任せるだけだ。どうした苦戦しているのか?」
ゴウが勇者スキルを発動させた事が原因で、リンの仕事が増えたのは確実だった。青龍と朱雀の食べ残しが次々とリンの上から落ちてきているのだから、ゴウに確認するのは仕方ないのかもしれない。ある程度リンの力がどれ程、なまっているのか確認したかった彼は、悪戯心合間って、見て見ぬふりをしていた。その事に気づいていたリンはプライドを捨て、口を開いたのだった。
「任せればいいのなら、手伝ってくれてもいいでしょ?」
「はいはい」
剣から手を離すと、見えない手で持ち上げられているように、宙に浮いたまま輝きを放っている。右手をリンの上へと向け、ニヤリと笑うと、全ての残骸が砂のように消滅していった。その力はリンを避けながら、どんどん処分して光へと変換していく。
「残骸を変異させた、少しの間ならお前を守ってくれる」
闇を光に変えて守護させるなんて思いつきもしなかった。例え、考えたとしても一瞬で書き換えれる訳ない。勇者として異世界から召喚されたゴウだからこそ、出来る技だった。