明るくが一番
まるでおとぎ話そのものを聞いても、納得も出来ないし、理解し難い。だけどあの言い方は全てを見てきたような感じがする。
数分話しただけなのにオーバーヒートしている自分に情けなく思うけど、仕方ないのかもしれないと無理矢理納得させる事にした。
自分の目で見て、体験してから考えても遅くないんじゃないかな──
「ジュビア、今はとりあえず進みましょう。体を動かせば気晴らしになると思うから」
なかなか表情を崩さないリンは困ったように眉を下げた。ゴウは言いたい放題言って、ケアをするのはリンの役目って事か。何も知らない二人の事だけど、少し分かった気になっていたあたしは、これ以上負担にならないように、笑い飛ばしたの。
「大丈夫よっ! ジュビア様はこれぐらいじゃあへこたれないから」
「そう」
何故なの? 明るくしようとお茶目さを見せたら、急に冷たくなったリン。こんな時だからこそ、明るくが一番なのに──
今までならミゲルがツッコミ役を買っていたから、どうにか笑いに繋がった事実をヒシヒシと思い知ると、寂しくなってくる。最初は皆で力を合わせてサザを守ってきたはずだったのに、何処で道を間違えたんだろう。
ズキズキする心から逃げるように、フルフルと頭をふると、ばっちーんとすごい音が響いた。
「何の音だ」
「あはは」
弱気な自分を奥底に追いやるように、あたしは両手で顔を思いっきり挟み込んでいた。その音が、思った以上に響いたらしい。どんか反応をすればいいのか分からず、苦笑いをしながら空気をぶった斬った。
二人の視線が痛いけど、空気に飲まれないように高らかと宣言する。
「あたしがいるから大丈夫! 二人ともついてきなさい」
何があっても、未来が見えなくても、そんなのどうでもいい。いつでもあたしはあたしらしく生きる、ただそれだけだ。
「待ってなさいよ、サザ」
自分からサザの元を去った事実を知らないあたしは大切な人を求める気持ちを言葉にしながら、二人の前を歩き出した。
そんなあたしを見つめながら、キャラを作っているゴウは笑いを堪えながら、足を早めていく。
「面白い奴」
彼の中で重ねていたリリアとあたしは全くの正反対で、ゴウは新鮮に感じている。遠い昔、リリアと出会った頃の自分と重ねていたの。
皆が皆複雑な記憶の中で溺れていた。過去に囚われていた自分はもういない。どんなに辛くても、寂しくても光はきっとあるから──
割れた地面の奥は道が出現し、今まで見てきた世界とは違った異質さがある。背中に背負っていた魚鮫を手に持つと、慎重に進み出した。
「いくわよ、相棒」