宿命への第1歩
今まで自分が何をしていたのか混乱してるあたしはゴウと名乗る剣士に連れなれながら、歩いていく。
「あっ!」
急に動き出した反動が今になってきたみたい。ヨロけたあたしをスッと体で支えると、彼の息が耳元にかかった。ビクッと体を震わせながら、距離を取りながら体制を整えると、そんなあたしの様子を見つめてきた。
「ありがとう……ございます」
体を密着してしまった。サザ以外にドキドキするなんて、あたしらしくない。助けてくれたのだから、お礼ぐらいはしなきゃ……とドギマギしながら伝えた。
「どういたしまして。力を使いすぎたのかもしれないね」
同意を求めるようにリンにアイコンタクトを送るゴウの魂胆に乗っかる事にしたリンは、今までの経緯を簡易的に説明してくれたの。
「君は普通の鑑定士ではないみたいだね。特別なものを見分けるために、生まれ持っているようだよ」
「どうして言い切るの?」
ふいにタメ語が出てしまったあたしは、慌てて口を塞ぐと、ゴウが優しい表情で語り出した。
「今は協力するのが一番だと思うよ。堅苦しいのは苦手だし、フランクで大丈夫だ。リンもいいね?」
ゴウからリンへと視線が映ると、無言で頷く彼女だった。その様子を見て、二人には絆があるようか気がしたの。気のせいかもしれないけど、二人の瞳からは信頼と尊敬が見え隠れしていたから──
「さて、話を戻そう。君は聖剣の伝説を知ってる?」
「……ええ、少し」
「それなら話が早い。今この世界はその物語と同じ道を辿っている。その証拠に瘴気雨が出ているからな」
話がすっ飛びすぎだけど、ゴウが指差した方向には沢山の瘴気の塊がうごめいている。今の所、この場所は地上の影響が働いているのか、形にはなっていなかった。
「君がいるから瘴気雨は近づけない。だけど今はまだ本来の力を取り戻していない……いつまで耐えれるかは未知数」
「あたしがいるから?」
「君はこの世界を安定へと導く鑑定士として生きてる。君が鑑定をしなきゃいけないのはこの世界そのものだ」
言っている意味が分からなくなっていたあたしは渋い顔をしながら、考え込むしか出来ない。聖剣の伝説は知っているけど、鑑定士なんてそもそも出てこなかったはず。
何をどうすればいいんだろう──
言葉にするのは簡単なはずなのに、上手く出てこない。普通ならパニックになってしまう事なのに、それをはいそうですか、って受け入れるのは簡単ではないわ。
ゴウの話を信じるか迷いながら、彼の瞳を見る。真剣な眼差しにひるみそうになってしまったあたしは、彼がどうしても嘘をついているようには、見えなかったの。