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空間把握


苦痛を堪えるミゲルを最初からいなかった存在のように見向きもしない。すれ違った瞬間、青い炎が彼女を包み込むと、どこからか声が響く。


ミゲルよ

お前はまた間違いを犯した──


この世界に産まれた意味を知らずに、ただただ操り人形のように粉々に壊れていく。ミゲルはいつの間にか自分の体が砂に変わっていた事に気付かずに、風がさらっていった。


「寝覚めは最悪だな。つまらんものを壊した」


一度体の主導権を握れば、ジュビアに見つかるまでは自由に動ける。レイザの中では縛りがある。本来は天空の使者としての勤めを担っている彼は、前世でサザと契りを交わしている。元々人間として生まれ変わる予定だったレイザは契約として受け入れ、サザが約束を果たすまでは、1つの体を分け合う事になっていた。


しかしサザが暴走した時には、契約の紋章は力を落とし、彼を解放出来てしまう。ずっともう1人の自分を見ていたレイザは、いつの間にか情を知った。邪魔をしてやるつもりだったのに、無意識に見守る立場に徹していたのだった。


「私のやり方を見てながら、先を決めればいい」


塞ぎ込んでしまったサザには届かない。レイザでは役不足だった。こんな時、ジュビアなら彼を導けるのに──


風が笑いながら、吹き荒れていく。スンスンと匂いを嗅ぐと微かに雨の匂いがした。地下にも雨は降る。しかし色が真っ黒になっている瘴気雨(しょうきう)と呼ばれるものだった。地上で見られる事は、まずない。


徐々に地版が歪み出し加速していけば、この世界ごと消滅してしまう。それを食い止めるには妖精族の血を引く者と愛された者が必要不可欠だ。


今まで何度も統合を繰り返してきたが、全ては失敗している。アダムとイブの存在と同じように、2人は自分達の使命に気づかなければならない。


この国の国王は何度も再生されるたびに、過去の記憶を少しずつ残し生き返りを繰り返している。ここが神の支配する世界と知って、全てを壊す為に、ジュビアとサザを利用したに過ぎなかった。


「──しかし奴が動くとは……な」


最初は作られた存在だった人々も生き返りを繰り返す事で感情を持ち、欲を知った。神が創りし碁盤の上に立たたされている事を、拒否するかのように。


どちらに転ぶのか、見物だなと思いながらレイザはシュンと空に飛び出した。


「どこにいるのかな、お前(・・)は」


空から見下ろしても人からしたら小さな点にしか見えない。だがレイザは空間を認識し、命の鼓動を見る事が出来る。サザの体でどこまで出来るのか確認したかったようだ。幻獣の力を解き放てていないサザは、レイザからしたらか弱い子供にしか見えない。だが、この体で空間把握が出来るのであれば、話は変わってくる。


全ては確認の為、自分に都合のいい理由づけをすると、レイザは目を閉じた。



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