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孤独と戯言


 どこを探しても彼女はいない。

 彼女の存在が近くにない事がこんなに心を蝕んでいくとは思っていなかった。


 このまま、誰とも会わず、一人になるのかと──



 


 ドクンドクンと黒曜石がサザの魂と呼吸を、鼓動を合わそうとしている。ふらふらになりながら、見えない道を歩く事しか出来ない彼が引き寄せているのはジュビアではなかった。きっと彼女と繋がっているのなら、こんな心がぐらぐらになる事はないだろう。サザに手招きをする黒い羽の使者は黒いほほえみを零しながら、ミゲルに耳打ちをする。


 「始めろ」

 

 ミゲルはにっこりと満足げに微笑むと二人の姿が見えていない彼の頬に手を添え、黒い言葉を浴びせ続けた。その言葉は使者には勿論、サザにも分からない。ミゲルだけが把握している魔術の一つだった。人の姿で転生出来た時は嬉しくて堪らなかった彼女を覚醒させたのもこの男の仕業だろう。


 「僕は……」


 グッと唸り声を上げると、自分の記憶が消滅していく現実に直面していく。愛しい彼女のダンスも、悲しそうな顔も、何もかも。ウィィンと黒曜石が黒く光るたびに、人間としての大切な感情を自分から手放していくような感覚を感じながら、止めれない崩壊へと進んでいく。


 「貴方は選ばれなかった、可哀想な人。仕方ないわよね、半分は人間で半分は堕天使の血を引く幻獣種だもの、どちらにも転べれない中途半端な存在、彼女は憂いれる器がなかっただけ。だけどあたし達は違う」

 「うるさい」

 「……どれだけ否定したくても、貴方は見捨てられたのよ。じゃなかったら探しにくるはずでしょ? それとも他に大切な人が出来たのかもしれないわね。それだったら貴方はおじゃま虫」


 聞きたくもないのに、ミゲルの声がサザの心へ侵入すると、光を食べていく。唯一の願いも、約束も最初からなかったように、消えてしまう。こうなってしまったのはレイザの存在が大きくなってしまった事に原因がある。幻獣種だったサザと堕天使だったレイザ、二人の存在が一つの体を取り合っているからだった。二人に共通する事は、ジュビアへの愛情と執着。世界が割れた時から、いつかはこうなる事は分かっていたはずだった。ジュビアが記憶を手放さなければ物語と同じように進んでいくだけだった。



 「ゆっくりゆっくり調教してあげる」


 その言葉が脳裏に響きながら、意識を手放したサザがいる。心の中で手を伸ばし助けてと子供の姿の頃のように──

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