変化を恐れる心
あたしの眼の前に聳え立つのはまがまがしい気配を放ち続ける黒曜石。地面に覆われていた空間の中で闇のエネルギーを吸い続け大きくなっている。ドクンドクンと鼓動が聞こえると、無意識に吸い寄せられていた。
「ジュビア、それに近づかない方がいいぞ。お前はまだこの地に慣れていない。触るとお前の能力、意識持っていかれるぞ」
「……は?」
「ゴウ、それなら私が浄化した方が早い。ジュビアは彼から離れちゃ駄目よ?」
「……うん」
急に言われても理解出来ないあたしを優しくほほえみながらケアしてくれるのがリンの役目になっていた。少し前までの仲間達と彼女とが重なって、まるで夢を見ているようにふわふわして現実感がない。これも全て黒曜石の影響かもしれないと思いながら、ゴウの後ろに隠れた。この場所はあたしには合わなさ過ぎる。正気に満ちたもう一つの世界と言っても過言ではなかったの。
「ルリリア・セイナ・アズール」
呪文を唱えると、黒い裂け目が現れた。時空を超えて出てきたのは魔法ステッキのようなものだった。見た目は木で出来ていて、彫刻のような繊細な模様が掘られている。両手でステッキを添えると、ブンブンとぶんまわしながら、力を放出していく。黒く染まっていた世界に一筋の光が現れたようなぬくもりが貫き、全てを純白に変えていく。
「私がいる限り、効果は持続するから安心して。後はジュビアにも同じ魔法をかけさしてもらったよ。私以外が解くことは出来ないからね」
「仕事が早いな。昔はかなりな時間が掛かったのに、今じゃ、一瞬か」
「ゴウ、あんたに言われたくない」
二人のやりとりを見ていると中がいいのか悪いのか分からない。だけどミゲルに裏切られて、サイ・レも消滅したあたしにとっては、二人の存在はかなり大きな支えになっている。なぜだか、懐かしさを覚えるくらい馴染んでいる自分に気づき始めているの。それは少し怖い事でもあった、サザとの全てが消えてしまいそうで、届かない場所に行ってしまいそうで、チクリと心臓が跳ねた。
「……心配?」
「え」
「サザくんの事」
「……」
今までのあたしならきっと頷いていたと思う、側に二人がいるのに、他の事を考えてしまう自分に弱さがあるから、足を引っ張ってしまうんじゃないかって不安が膨れてしまいそうで。
彼女は困った表情を見せながら、微笑んだ。そこに言葉は何もない。あるのはリンの手の温もりだけだった。ゴウに気づかれないように、配慮してくれているのが分かるから余計、苦しくなったのは秘密。




