表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/86

自己紹介


 あたしは暗い所にいる。ここには何も誰もいない。寂しいなんて気持ち、今まで抱いた事なかったからこんな気持初めてで戸惑ってしまうの。こんな時サザが側にいてくれたなら、どれだけ安心出来るだろう。体を丸めて、現実から目をそらそうとしてみるけど、中々夢から覚めてはくれない。差入れもいて、ミゲルもいて、冒険の続きが出来ると思っていた、あの時はここまでバラバラになるなんて考えてもなかった。いつまでも友達で仲間なんて甘いことを夢見てた。


 「お前は踊り子か? それとも鑑定士か?」


 低い声で問いかけてくる声が聞こえてくる。一人ぼっちの世界に輝きを与えてくれそうな気がした。


 「……」


 以前のあたしなら、きっと両方と断言していただろう。だけど、正直、あたしは何の約にもたっていないし、何もしていない。本職は鑑定士なのに、その力を発揮する事も出来なかった。


 「お前は踊り子の前に「鑑定士」だろう。スキルを鑑定し、その人の能力値を引き上げる。それがお前の本来の力だ。物の鑑定はお前には難しいだろうな。しかしお前の祖父がある程度出来るように鍛えてくれたはずだ、思い出せ」

 

 この人には全てお見通しだったんだ。スキル鑑定士と調整士の事を知っているなんて、驚いた。だってあたしの役割は他の人とは違うもの。自分のスキルを段階的に成長させる事は出来ないけれど、他の人の潜在能力を覚醒へと導く事は出来る。その為には、その者が魂の記憶を取り戻す必要があるの。あたしとおじいちゃんしか知らない内容を知っているこのひとは、あたしにとって何等かの関係がある人だと感じた。自分の出生に繋がっている感覚がある。


 「その能力は他者にしか使えないと思っているだろう。それは間違いだ。お前自身の能力も挙げれるし、スキルも獲得出来る。その為にはお前自身が覚醒しないといけないがな」

 「あたし自身にも使えるの?」

 「知らなかったのか、俺が引き出してやる。少し痛みを伴うかもしれないが、耐えろ。そして乗り越えるんだ」



 その声があたしの心を支えたのは言うまでもない。サザ以外に安心感を与えてくれるこの声の主に引き寄せられている気がしたの。



  ■▢■▢■▢ ■▢■▢■▢



 「ん……」

 「まるで眠り姫だな、もう朝だぞ、起きろー?」


 夢から現実に引き寄せられる声を辿って、巡りついた現実は夢の中の声の主と同じだった。赤い髪、赤い瞳をしていて、勇者のようなマントをつけている。揺らいだ瞳をこすると、視界が馴染んできたのか、景色が明るくなってくる。


 「起きたのね、よかった」

 「ずっと心配してたもんな、リン。お前冷たそうに見えて優しいからなぁ」

 「ゴウはお黙り」


 わやわやと楽しそうに笑っている二人を見て、呆気にとらわれてしまう。これは夢の続きなんじゃないかって思ってしまうくらいに、ほのぼのとしてる。


 「あの……どなたですか?」

 「あ、自己紹介がまだだったな、俺は()()のゴウ、そしてこっちは()()()のリンだ」


 優しそうに微笑む二人はまるで親を連想させるように温かい。どこか懐かしさを漂わせながら、あたしの頭をよしよしする。

 

 今思えばこの出会いが本当の始まりだったのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ