俺のだ
炎は魂の象徴だ。俺はそうやって炎に包まれながら生きてきた。何度も繰り返す記憶の中で自分が何をすればいいのか分からなかったが、なんとなく今の俺になら理解出来るような次元にまで到達している。この世界は俺の生まれた元の世界ではなかった。俺達が生きた世界は今は存在しない。まるで夢の中に溶けたようで、幻のおとぎ話として残っている。電子文明は退化し、人間達は変異を続け、複数の種族へと進化を遂げた。手にしていた文明を犠牲にする代わりに、魔法を手に入れたと言ってもいいだろう。アダムとイブに分かれた二人は形を変えながら、宿命へと進んでいたのかもしれない。
ジュビアを見つめながら、俺は今までの事を考えていた。割れた地面からせめて彼女だけは助けたいと想い、動いたが、これが正解なのかは分からない。
「本当ならサザがナイトなのにな。俺はこの子の親でしかないんだから──」
ジュビアを導く為に体を捨てた俺は、彼女が成長し、乙女になるのを待っていた。それまでは邪魔が入らないように、信頼出来る、彼女を守る事が出来る人物に託す選択をして、この未来が出来た。
赤く輝く瞳は、抱えきれない想いを隠しながら、地下へと降りていく。まだ時ではない。彼女が、ジュビアが記憶を確実に取り戻し、本来の姿を手にしないと、天界へ向かわす事は出来なかった。
無意識の中であの時、ジュビアは飛び立とうとしていた。それを静止させ、眠らしている。
「俺じゃなくて、サザがもうちっと動かなきゃ駄目だろう。いくら自分の役割に気づけていないといっても、あいつだって──」
「──見つけた」
悪態をつこうとしている俺に向けて懐かしい声が響く。それはかつて仲間だったリンの声だ。面倒くさいのに見つかったなと想いながらも、スルースキル発動、って感じに無視を決め込む事にする。
「……無視するとはいい度胸ね」
その瞬間だドンと衝撃が体に突き刺さる。普通の人間なら倒れているかもしれないが、神格化している俺には通用しない。それを分かって足止めをさせる為に攻撃をしたのだろうが、お構いなしだ。俺には俺の役目がある。そしてリンにもリンの役目がある。それが例え違う道を歩く事となっても、譲れないものだった。
「あーあ、神様って酷い。俺が一体何をしたって言うんだよ」
「あんたの故郷が消滅した事を知って暴走したでしょうが。なんで世界を繋げようとしているのか……」
独り言を呟いただけなのに、小鳥のさえずりのように邪魔してくる。この世界観を大切にしたいのに、カッコつけれる所はカッコよくいたい。空気の読めない奴だな。
「うるせぇなあ。空気読めよ、空気」
「やっと反応してくれた。元仲間として言うわ、ジュビアを渡しなさい」
「やだね。この子は俺のもんだもん」
頭では分かっているはずなのに、俺の口から出た言葉は隠していた気持ちだった。