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夜道


 全てを見ていたアゴウは悲しく微笑んだ。こんな形で最愛の人との再会は酷でしかないのだから、当然だろう。元の世界を捨て、リリアと生きる道を選んだ彼にとっては彼女を傷つけてしまうだけにしか過ぎない。本当の事を思い出して、糸と糸を結びつけるように理解してしまうだろう。今は片鱗しか見えていないが、いつかは──


 『いいの? ゴウ』

 「……仕方ないさ。俺が悪いんだから」

 『そう、悲しそうだけど?』

 

 映像化されたリリアの魂はゴウにしか見えていない『幻影』だ。いつかは飲み込まれてしまいそうで怖く感じていたが、今となっては同化してもいいとさえ思うようになっていた。


 『ミゲルが動き出したね、どうする気? 二つの選択肢の内、彼女は『崩壊』の道を選んだようだけど、ジュビアからしたらただの裏切り(・・・・・・)にしか見えないよね。全ての記憶を改ざんした張本人とは知らずに』

 

 生前のリリアとは別人のように冷静に話している。そんな姿を見ているとやはり長生きしているのだなと思ってしまう。魂は二つに別れて、異世界と現世界へと堕ちた。その相方がジュビアだった。彼女は相方を探しながら、リリアへと繋がる為に、無意識にゴウを選んでいたのだった。


 天界の考えが分かっていたのだろう。リリアの能力でもある予知。それをジュビアは受け継いでいなかったが、ミゲルが揺さぶりをかけて、ここまで仕上げてしまったのだろう。それしか思いつかない。


 「彼女の事はリン達に任せればいいだろうな。俺とジュビアの監視からミゲルへと移行したようだし。あいつらと旅をしていた時の俺を知ってる癖に、何で分からないかね……」

 『仕方ないでしょ。彼女達は人間なんだから』

 「俺もだけど?」


 悪戯な笑顔を振りまいているゴウを見て、げんなりしている。その姿が世界を統合させる以前の何も知らずに冒険をしていた時と重なって、なんだか笑ってしまうのだ。


 『あんたって成長しているようで、なーんしてないのね』

 「そんな俺も好きだろう?」


 過去のリリアなら噛みついていただろう。そんな冗談も彼女にとっては癒しそのものなのだから。微笑みが零れて仕方なかった。


 『もう一人のあたし……ジュビアの事を頼むわね』


 違う世界で生きたもう一人の自分に嫉妬するなんてどうかしてる。そう思うけど建前はきちんとしなくてはその先に進む事は難しい。少しの感情の揺らぎが弱点になるからだ。ただ一人だけその感情を見ている人物がいる事に気付けない二人は、飲み込まれるように夜の中へと消えて行った。

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