選択の刻
自我を抑え込まれているサイレの魂は心の奥深くまで堕ちていく。中心核で生きている本当の自分と出会う為に、無意識に選んでいるのだ。その背中をミゲルが推しただけに過ぎない。迷いの渦に流されているサイレの精神は簡単に飲まれていたのだ。
『私は何の為に……』
国王の娘として求められてきたからこそ、今まで葛藤を抱えながらでも抑えてきた。慣れていたはずなのに、彼女の気づかない深層心理では沢山の刃に貫かれていた。言葉で縛られているサイレは自分の力を過信していた節がある。呪縛となり自分を支配していた『真実』に気付く事もなく、全ては自分の意思で決めていたと錯覚していたのだ。
夕食の時は過ぎた。
豪華な食事を楽しみながらも生末を楽しんでいる人がいる。
『サイレよ。お前に耐えられるかな?』
クククッと低い声が蛇のように彼女の元へと向かい、新しい傷をつけようとしている。
『ジュザリア・ゴウン』
言葉に力を乗せると、彼は一つの魔法陣を作り出し、現状を確かめるように鑑賞会を始める。美味しい酒とつまみに相応しい現実の果実を食す為に──
その声につられていく自然界。天候は荒れ嵐になっていく。ミゲルは全てを見ている。口にせずとも何が起こっているのかを理解して、ため息を落とす。
『やはり運命は……』
予知をする事は出来るが、現実を変える事は出来ない。ミゲルにその力はないのだから。一人一人が乗り越えるべき物事を清算しなくては理想の未来は訪れない。その未来はミゲルにとってもサイレにとっても新しい世界の創造の核になっていく重要事項。
『サイレ次第だわね。だけど本当に──』
右手で邪魔にならないように自分の居場所となる異次元空間を作り出していく。自分にこのような力が開花した事で少しずつ自らの運命は変化している。しかしミゲルの中にはそれ以上に恐れている事がある。
『あたしの立ち位置は少しだけど変化しているわ。だけど誰かに操られているような……』
二度目を繰り返すミゲルはサイレと大竜の生末を見届ける事しか出来ない。そこに自分が手を出してしまうとサイレ自体が闇に飲まれていく可能性が高いからだ。そして大竜と同化し、別人格として生成されてしまう。
そこにサイレの姿はない。
『あたしにとってもあんたにとっても選択の刻なのよ』
そうあたし達二人にとって──




