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黒い微笑み



 

 道は一つしかないようで本当は回路のような複雑なもので構成されている

 私達もその中の組み込まれている記憶のようなものだろう

 

 その現実に気付いている者は少ない


 私達を覗いても重要な役割を持ち『転生』した者達


 その中でも一握りだ





 『サザの成長速度が速いですね』

 『ええ。私も驚いてるわ。ジュビアは現実を直視出来ないようだけどね』

 

 ミゲルとサイレは二人でモンスターの討伐に来ていた。サイレ一人で討伐するのは簡単だが、それ以上にジュビアとサザから離れる必要性を考えていた。彼女はミゲルの意見を聞く為に外に連れ出したのだ。戦闘能力は一応、訓練の成果もあり上がっているミゲルの戦い方を見たいと言う想いもあった。


 『本来なら『お父様』に報告しないといけませんが、そうすると私達の行動範囲が狭くなりますから』

 『でもいつかは気づくでしょう? 監視役がいるみたいじゃないの』

 『……気づいていましたか』


 今まではサザの存在に気を取られていたサイレ。何か彼に隠された力があると思い探る事に力を注いでいた。周りの力の波動を見抜けなかったのはサザの能力のせいかもしれないと考える事もあるが、それは逃げ道を作る理由にしかならない。だからこそサイレはより自分を『未熟』だと呟いた。


 『私は見えているんだもの。でもね『言えない』のよ。運命を知りながら書き換えてしまうのはダメだったからね。でもその時期は過ぎたから、こうやってサイレ、貴女に話す事が出来るの』

 『ミゲルは初めから気づいていたのですか。私は──』


 グッと悔しそうな表情をするサイレを見て、幼さが見え隠れした。ミゲルは子供の頃のジュビアを見ているようで困ったように微笑む。今までだってそうだ、何度も告げるタイミングはあった。しかし『預言者』として『使命』を果たさなければならないミゲルには、難しかった。


 『サイレ、貴女には迷いがあるように見える。少しはこの討伐で憂さ晴らしでもしたらいいんじゃない? 私の前だったら本当の自分を隠す必要もないんじゃなくて?』

 『!!』

 

 確信を突いていくミゲルの言葉にどう返していいのか分からず、攻撃の手が歪む。大竜(カレ)の力にサイレの意思が飲み込まれていく──


 『私は……』

 

 サイレの体は動き続けている、しかし意識は半分大竜(カレ)に支配されようとしている。その姿を見て、ミゲルは言葉を創造し、背中を押す役割を担った。ジュビアにもサザにも出来ない、ミゲルだからこそ『預言者』だからこそ出来る事なのだ。


 「大竜。サイレを鍛えてあげなさい。あの子は見えていなさすぎる。このままだと使い物(・・・)にならない可能性が出てくるわよ」

 

 ぬらりとミゲルの言葉を聞いていた大竜は乗っ取りかけているサイレの体を動かしながら答える。


 『もう少し……で俺のものになる。そんな女を助けて『預言者』お前はどうする気だ?』

 「私は仲間の成長を確認したいのよ、彼女が私の成長を確認したかったように……ね」

 『フン、人間は分からん』

 「貴方はそのままでいいのよ大竜。それに鈍っている彼女を支配しても面白くないでしょう? 貴方が弱者を取り込んで勝ったと言えるような哀れな事する訳ないからね」



 『よく喋るな。これだから人間は嫌いなのだ』


 ミゲルの言葉に道を作られていく。大竜はサイレの束ねた髪を解きながら、黒い微笑みを落とした。

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