雷鳴
ミゲルの言うように全てを言うと均衡が崩れる恐れがある。だからこそ一部分しか伝えていない。それが自分を守る術だと言われても仕方のない事かもしれないが、僕は僕である為に、大切な人を守る為に仮面を被る事にしたんだ。
それが現在の僕の中では正解であり、未来の僕の中では不正解のように。
ミゲルが何を言ったのかは分からない。だけどアイツが重要な事は彼女には見えていないと言っていたから、大丈夫なのだろう。そんな事で翻弄されるなんて弱いな、と思いながらレイザに対してモヤモヤした気持ちを抱くようになっていく。
僕になくてレイザにあるもの──
本能では理解しているのだろう。自分が本来選ばれる人間ではない事に──
僕は空を見る、そしてもう一つの夜空の中で眠っている。
運命は回りながらも、少しずつ変異していくのだろうか。
人間ではないのに、お腹は空くものだ。それが不思議でたまらない。本当のサザはご飯を食べなくても生きていけるのに、どうしてだかこの姿のように生きていきたいと願うようになった。そんな事を考えながらパンをかじっているサザを見て、ホッとするミゲルがいる。
自分が役目を全うしないといけないのか彼女も理解しているだろう。それでも僕……サザの事を考えると言葉を詰まらせてしまう。サザならきっとミゲルのように冷静な対処は出来ない。ジュビアはミゲルの言う事に嘘はないと信じている。しかしサイレは難しい所だろう。
いくらミゲルの事を好いていても、現実離れしている話を信じるとは思えない。確たる証拠がないと受け止める事はないだろうし、信用も以前のようにはしてくれないだろう。
(……まぁ。元から信用していたかも怪しい所だけどな)
ため息を吐くと口から黒い霧が出てくる。最近は特にそうだ。体の軋みと精神の成長、そして闇を放出するようになった。まるで自分の願った事がそのまま、この世界に反映されていくような感覚の中でいる。
今までレイザの存在ばかりに気を取られていた自分が情けないとサザは思う。そんな事ジュビアは勿論、皆にも、レイザにも知られたくない。だからこそもっと大人にならなければならない。
『守りたい、ただそれだけ』
そう呟くとさっきまで綺麗な空だったのに、雷鳴が鳴り響く。まるで怒っているように、地面に堕ちていく。
シュウバとジュビアのように──