本当の願い
一人の時間を大切にしようと思っていた。ミゲルが皆に話してくれる。その後に出ていく勇気を持つのが正直、怖いんだ。だからこそ、少し落ち着きたかった。またアイツが出てくるかもしれない。でも今の僕なら言葉に惑わされない自信がある。本当の敵はもう一人の自分……レイザなのだから。
アイツは自分を悪魔と語った。僕と瓜二つな顔をしているが、性格は反対だ。何かに絶望をした未来の自分でもあるのではないかと思ってしまう。だから僕とレイザが分けられている魂ならば、二つの未来が存在しているはずだ。
何処にもそんな根拠はないけど、直観でそう感じる。それがいい事なのか悪い事なのかはまだ判断は出来ない。その答えを握っているのは占い師でもあり預言者でもあるミゲルだろう。彼女には見えているはずだ。サイレは彼女に問いつめた事もあったと先ほどミゲルから聞いたけど、僕は問いつめる気はないと言うと安心していた。
『預言者であるからには『言っていい』事と『ダメ』な事があるのよ。調整をしないと人の人生を壊してしまうからね。時が来れば、私の役割が来るわ』
それまでは僕は自分を信じる事にする。ううん、一つのきっかけかもしれないけれど、これからも今のような気持ちでいないと戦う事が出来ない。沢山のものを失ってきたから分かる。仲間を、そしてジュビア、彼女を失う訳にはいかないんだ。
例えそこにどんな運命や宿命があったとしても僕達なら乗り越える事が出来ると信じて、時を待った。
数時間経った頃に、もういいかなと思いドアを開けた。するとそこにはジュビアがいた。僕の事を聞いたのだろう。目が赤い。泣いていたのかと思うと、つい無意識に彼女の瞳にキスをする。
『サザッ!?』
「もう大丈夫だよ」
僕が本当の僕になった瞬間だった。初めて出会った時の演じていた自分とは違う。男の僕。戸惑いながらも、照れている姿が可愛らしく思え、微笑んだ。すると安心したかのように、彼女は僕の体を抱きしめ、背中をさする。
『気づいてあげれなくてごめんね……サザは一人じゃないよ。あたし達がいるから』
「うん……うん」
まだ彼女の年齢よりは下だけど、ジュビアの体が震えている事に気付き、少し子供の彼女を見ている錯覚に陥る。こんな彼女は初めて見た。いつも人の事を元気づける存在だったから余計に。彼女の心を包み込むように、そっと手を回す。
「もう大丈夫だよ。だからジュビアも一人で抱え込まないでほしいな」
その言葉しか思いつかなかった。僕とは違う何かを背負っている彼女に気付いているからこその発言だ。
それが例え軽く思われてでも、後悔はない。
僕自身の本当の想いなのだから──