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無意識の涙


 ウオザメとの接触は昔のあたしの面影を思い出してしまう結果となった。元々そういうシナリオの中で動かされていたのかもしれないと妙に納得する自分がいたの。色々な事があった楽しい事は勿論、悲しい事も……


 それは過去の出来事かもしれないけど、あたしの魂は受け継がれていて、その痛みを感じてしまう。もうあの世界とは違うのに、同じように見てしまうのよ。それがあたしの弱さなのかもしれないと思うけど。


 この世の完璧な人間なんていないと知っている過去のあたしはアゴウの背中を見ている。彼があたしに託した言葉を思いを添い遂げる為に、あたしはもう一度この世界へと……形を変えた『過去』の世界へと飛ばされたのだから。


 魂は年齢を重ねているけれど、肉体は昔そのものの自分。だけど少しずつ違っている物語に書き換えられている事実を目の当たりにする。過去のあたしは『ウオザメ』と出会う事はなかった。その代わり、もう一人の『サザ』と出会った。


 彼の事は霧で隠されているような存在なのかぼんやりとしか覚えていない。名前も顔も、だけどキラリと光る白髪とサザと同じ『甘い匂い』が漂っていたのは体が覚えている。


 <君はサザと出会った。彼の因果を解くのは、君だけだよ? ジュビア>


 風に運ばれてくる声は幻聴なのかもしれない。だけど妙ななつかしさを覚えてしまい、振り向いてしまうあたし。だけどそこには誰もいない、ただゆっくりと流れていく空間だけがあった。


 『ジュビアどうしたんですか?』

 「……大丈夫よ」


 今までのあたしと雰囲気が違うように見えたのだろうか。サイレは心配そうに走ってくる。体調が悪いのではと気遣ってくれる程だ。その反対にミゲルはあたしと少し距離をとっているように思えた。どうしてだろう、目を覚ましてからミゲルの様子が変わった。


 その意味は今のあたしには何も分からない、ううん。

 分かりたくない、知りたくもない。それが本音なのかもしれない。


 未来が見えるミゲルだからこそ、ゆっくりと動き出した運命の輪の破片を見てしまったのかもしれない。その答えはミゲル、彼女だけが知る真実でもある。


 あたしにも隠し事はあるのに、人の事は全て把握しておきたい、そう思うとどこまで自分は醜いのかと自分を壊してしまいそうな衝動に駆られてしまうの。


 そんな事、そんな気持ちを持っている今のあたしは『ジュビア』であって『ジュビア』ではないのかもしれない。そう考えると泣きそうになる。


 ──バタバタバタ


 『ジュビア、僕がいるから大丈夫だよ。君は僕が守るから』


 幼いサザはサイレを安心させるように自分があたしの傍にいるから先に行っていてと伝え、あたしに大人な部分を見せてくる。その姿が過去の名残が残っていて、胸が苦しくなってしまう。キュと唇を噛みしめて、両手で心臓の音が加速しないようにと深呼吸をする。


 「あ……れ……」


 頬が生ぬるい。何かが垂れている。天候は晴れだ。雨なんか降っていないのに、確実にあたしの頬を濡らしていくの。


 『どうして泣いているの?』


 サザに言われて初めて気が付いた。無意識に自分が涙を流している事に……



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