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自分の役割


 夢と現実はリンクしていく。曖昧な境界線の中で漂いながら意識を戻そうとしているあたし。ゆっくりと瞼を開けるとそこには眩しい程の光に包まれていた。


 「う……眩しい」


 上手く声を出す事が出来ないと感じたけれど、あたしの考えとは違ってスンナリと零れた。声によって導かれていく……声が人を繋げていく感覚。


 『ジュビア!!』

 

 泣きそうな顔でサザが私に駆け寄ってくる。どうしてだろう、自分が変になってしまったのかと思ったくらいスローモーションに見えて仕方がない。


 <いつものジュビアでいる事がサザ(カレ)にとっての幸せ(・・)なのだよ>


 背中から聞こえてくる声に納得する自分。一瞬、誰の声か分からなくて戸惑いそうになったけど、ウオザメの声だと頭が再認識してくれている。こんな状況でも、何がどうなっているの分からなくても人間ってどうにかなるものなのね、なんて思って笑いそうになってしまう。


 いつものあたしってどんなあたしなのかしらね──


 ウオザメとの共鳴、そしてもう一人のサザとの接触により、ジュビアの中で日常が当たり前が変わろうとしている事に気付けないサザ。いや、気づかない方がそれこそ幸せなのかも、と思うあたし。


 誰にも気づかれないようにフッと嗤うと、あたしは全てを知る前のジュビアへと戻るの。他者からしたら演技(・・)していると思われても仕方ないわ。でもこうやって自分を守らないと、現実を受け止める事が出来ないのよ。


 それこそがあたしの……いえジュビア(・・・・)の弱さなのかもしれない。


 「サザどうしたの? そんな顔して。ほーら泣かない」


 あたしはゆっくりと身体を起こすと、サザがゆっくりと小さな体で抱きしめてきた。少し悲しそうな表情をしているあたしに気付く事なく、彼は今を見ている、そして生きているのね。


 瞳から零れそうな涙を拭いたくて、サザの顔をきちんと認識(・・)していたくて、あたしは優しく言った。


 「サザ、貴方の顔を見せて?」


 今までのあたしなら冗談ばかり言って自分の心を感情を誤魔化していただろう。それも今日で終わり。だからこそ今までのジュビアとさよならする為に、サザの涙が必要なのよ。


 なんてたって天使の雫は本当の意味の浄化をしてくれるのだからね。


 【俺様の世界とジュビア、お前の世界は表裏一体だ。だからこそ自分の役割を担う為に戻るんだ。過去の世界に──】


 勇者の名前なんて忘れたわ。あの人はそんな小さな存在なんかじゃない。この世の全てを作り上げた本物の創造主なのだから。


 (アゴウ……貴方の行動はきちんと変化している。過去を変えているわ)


 誰にもこの声は届かない。少し切ない気持ちになるけど、それはそれで仕方のない事だと思う。あたしはアゴウによって『チャンス』を与えられたのだから。


 もうこの子を……この人の手を離さないように。



 

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