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宿命


 誰かの温もりを感じている。今まで感じた事のない包み込んでくれる光のような温かさ。ずっと包まれていたい気持ちに浸りながら、少しずつ意識が遠のいていくの。


 「俺がいるから、安心して眠ればいいよ」


 意識が途絶える前に聞こえたのは聞いた事のない青年の声。とても甘くて優しくて、安心していくあたしがいる。


 別人なはずなのに、どうしてだかサザと重なっているような感覚がするけど、あたしの妄想よねきっと……いいえ、もしかしたら夢を見ているのかもしれないわ。


 ふんわりと香る匂いはサザと同じ匂いのように感じる。森林のいい香りも混ざって、あたしの心を疲れを溶かしていくの。


 「サ……ザ……」


 あたしの口から零れた音は青年の耳に入り、夢の中へと解けていく。今まで感じた事のない不思議な空間だった。




 ◇◇◇◇




 ジュビアに何が起こっているのか分からないミゲル達はただ淡々の過行く時間の中にいた。その中で全てを見ているサザとレイザ。二人は一つの体の中で生きている。二人のサザ(・・)と言えばいいのかもしれない。


 元々は別人として産まれた二人なのだが、アゴウの存在により世界の歯車が狂ってしまったのだ。そうして元々の次元は歪み、統合へと進んだ。



 二つの世界軸が一つへと合わさってしまったのだから──


 その『真実』を知るのはレイザとアゴウだけ。引き金を引いた張本人のアゴウは分かるが、そこに何故レイザが関わってくるのかサザは理解などしていない、いや出来ないのだ。


 「……レイザ(きみ)は僕をどうしたいの?」


 ジュビアが眠ったまま起きない現実を直面して、不安になっているのだろう。今まで何があっても笑顔で傍にいた『彼女』がいないのだから余計だ。ミゲルとサイレはそんなサザの気持ちを知ってか、片時も離れないようにしていた。


 誰にも聞こえない程の小さな呟きは空間の割れ目が喰らう。そうやってまた世界の修復がはじまっていく。サザはまだ気づかない。自分の呟き一つでこの世界にどれほどの影響を与える存在かを……



 <俺はその時(・・・)を待っている。この声は今のサザ(オマエ)には届かないだろうな。サザ……お前はまだ覚醒をしていないから余計に。俺の力を上回る事は出来ないのだからな>


 レイザはワインを口に含みながら天界を楽しんでいる。そこはそう……かつてアゴウを見守っていた存在達がいる居場所でもある。


 「レイザ、遊びに来るのはいいが。お前の目的はきちんと果たせ。それがアゴウの復活へと繋がっているのだからな」


 <今は楽しませてくれよ。サザは完全ではないからな、俺にもやり方があるし、自由を満喫する権利がある。サザ(アイツ)が本来の役目に気付けば違ってくるが、その予兆は何もない。俺の存在を確認出来る程度しか……な>


 クスクスと笑いながら声の主を茶化すように誤魔化している。その言葉の本当の意味を知っているのはレイザ本人。




 まだ始まったばかりの冒険。

 まだ始まりを告げていない宿命と共に……




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