それぞれの相方
外側から見ると小さい鍛冶屋のように見えるけど、結構中は広いのね。あたし達は武器が用意されている奥の部屋へと足を踏み入れ、絶句する。
「何よ……コレ」
綺麗な装飾を施している武器が四つも用意されているじゃない。サザの武器だけ用意されていると思っていたあたし達は固まっていた。
「ダンテって何者?」
「私達の武器も用意されているとは思いませんでしたね」
サラッと口にするサイレは何か事情を知っているように思えた。例え聞いたとしても教えてくれなさそうだけど、一応聞いてみる事にしたの。
「サイレは知っているんじゃないの? この理由を」
「何をおっしゃっているのか分かりませんわ」
サイレのその言い方を聞いてピンときた。この女、絶対知っている。そう感じたのはミゲルも同じだったようで、何度も問いただしている。さっきまで距離を取って関わっていたのに、こういう所は以前のミゲルと同じで、何だか安心するあたしがいる。
「くすくす。皆さん仲良しなんですね」
「そうかしら?」
「ええ。ジュビアさんとサザ君を中心にワイワイしている感じで楽しそうです!」
楽しいのは否定しないけど、あたし達にはきちんとした目的がある。それが前提でこうやってパーティを組んでいるのだから、ここまで和気あいあいとしていていいのかな、って思ってしまうのよね。
その現実を忘れていたのは他の誰でもないこのあたしなのだけど。
「貴女は知っているのでしょう? ダンテがどういう立場の人間か」
「勿論です」
「教えてくれないかしら?」
「教えたいのは山々なのですが、口止めされているので難しいですね」
「ダンテかしら」
「……すみません」
女性は言いたそうにしているのに、口止めをされているせいで言う事が出来ない。鍛冶職人を口止めしているって事は他の村人に対してでもそうだろう。ダンテの店はかなりお金がかかっている風格だった。彼の来ている服も勿論、庶民では手に入れる事が出来ないものだろう。
紹介された店を選んでよかったと思う反面、何か仕組まれているような気がして心がざわつく。誰かが裏で手を回している、そんな考えが頭を過ぎってしまうの。
「そんな事より、武器達が待っていますよ。新しい主を……」
金属で固定されている四つの武器は存在感を現している。詳しくないあたしでも分かる。鍛冶職人達がどういうものを差し出しているのか……どう見ても一級品。
本来なら、受け取らない選択も出来た。だけどサザには武器が必要。あたし達の分はあるけれど、ダンテがここまで手を回してくれた気持ちを否定はしたくない。だからこそ、ニッコリと微笑みながら「ありがとう」と言葉を添える。
「左から順番にサイレ様の剣です。名前は『大竜』そしてサザ君の大剣『刈啞』ジュビア様の弓矢『魚鮫』ミゲル様の格闘武器『罪庵』です」
サイレとサザは分かる。ミゲルも元々力持ちだし、格闘経験があるから扱えるだろうけど、あたしは弓矢なんて扱った事ない。用意されたものに対して何か言う事はしたくなかったけれど、扱えない武器を所有出来ない。
「ちょっといいかしら……」
あたしは女性に声をかける。三人は武器を確認しているから、ゆっくりと話が出来ると思ったの。武器の説明は一通り受けたし、どうにかなるでしょ。
問題はあたしなのよ──