仕事より踊っている方が楽しいに決まってるわよ!③
チート能力ならず普通にダリア王国からその時が来るであろう日に備えて、先祖様達が繋いでくれている生活に甘えていると言いたいのかしら。実際甘えているけど、使えるものは使わなきゃ損でしょーが。用済みと烙印を押される可能性もあるから小さな仕事でもいいから働きなさいっていうのよ。
あたしは踊っていればいいの、それだけで満足なの。
年中踊っているとファンも増える訳、チップももらえたりなんかして、踊り子に転職しようかな?とか思っちゃう。まぁダリア王国を裏切る事なんてするつもりがないから自分の中だけで消化してる感じね。
「ミゲルどこ行くのよ」
「いいから早くいくわよ」
「へいへい」
大した金額稼げる訳でもないのに、職業鑑定とかありえないんだけど。それこそ早く勇者様が出現してくれたら助かるんだけど、本来の仕事がはかどるっての。
でも……まてよ? 忙しくなってしまうという事は、踊りの時間が短くなるじゃん、いや短くなるだけならマシ。最悪踊り子引退? て状況になるんじゃない。それは阻止しないといけない、なんとしても。まぁ今の状況で国王からの依頼が来る事はないんだけどね、多分。
(最悪なタイミングで現れんなよ、勇者よ)
大賢者様の真似をしてみるけどあたしには似合わな過ぎて笑えてくる。ほっぺを膨らまして笑い声をあげるのを我慢してんだけど、今ミゲルに顔見られたらやばいよね。なーに妄想してんの、気持ち悪いとか暴言吐かれるもん。
(いくら占い師でも心の声は聞こえないよね)
ミゲルの能力はあたしの鑑定士としての能力と方向性は違うけど、かなりのもの。ダリア王国から守られているのはあたしだけじゃないんだよね、あたしの手を引っ張って強制連行するこのミゲルもそうなんだから、驚きよ。
隣同士で店を構えているって言っても、あたしは殆ど弟子に任せているし、ミゲルは仮面をかぶって顔を隠す正体不明の占い師といわれている。彼女の予知能力は全て的中する。勇者の出現も近いと言っていたんだけど、今回は外れかしらね。
今まで外れた事、一度もないから不安でしかないわ。
「仕事したくないー」
「心の声、漏れてるわよ」
「うぐ」
「嫌そうな顔してもダメ。子供じゃないんだから」
「えーあたし子供だもん」
「寝言は寝てから言いなさい」
サザはいいわよね、仕事しなくてもいいから。ま、親御さんが防具屋してるから相当儲かっているはずなのに、あの子はあたしみたいに駄々こねたりしない。そう考えると子供らしくないかもしれない。あたしの幼少時代とは明らかに違うサザの行動に振り回されている? もしかして。
「サザの方がジュビアより大人だわ」
「それあたしも思った」
関心していると軽くパンチが飛んでくる、それもお腹に。いつもの攻撃が出てきたか……ミゲルお得意の怪力パンチ。これをくらうと一週間痛むのよね、本当勘弁して。
(そう思っているのはミゲルの方か)
まるで他人事のように思いながら、引きずられ仕事場へと連れていかれるあたしってかわいそうな女よね。




