ダンテがキーワード?
あたし達は今この村に来て、目についた鍛冶屋に来ている。思ったよりも報酬は弾んでくれたからいい武器をそろえる事が出来るかもしれない。そんな期待を胸に抱きながらキョロキョロと物珍しく見ている。
サザ以外はきちんとしたものを持っているから揃える必要がないから鍛冶屋に来る事など殆どないに等しいからね。サザの様子を見ると、緊張している様子、初めての経験だからそうなるのは仕方ないかな。そんな所も可愛くて仕方ないのだけどね。
「ラルクって凄い数の鍛冶屋がありますね。話には聞いていましたが……ここまでとは」
「お姫様のサイレにとっても初体験って事ね」
サイレはあたしの変な言い回しに戸惑っているよう。いつも冷静な彼女を見ていると、ついつい意地悪したくなっちゃう。なんだかんだ言っても真面目なのよね。何を妄想してるんだか。
「くすくす」
「あんただって殆ど来る事ないでしょ。サイレを虐めるのはやめなさい」
「ん? 虐めてないわよ? あたしは率直な意見を言っただけだもの」
悪ぶれる様子のないあたしの反応を見て、頭を抱えるミゲル。本当、ミゲルってば年齢近い癖におばさん臭くてありゃしない。そんな事を考えていると、可愛らしいサザが駆け寄ってきた。どうしたのかしら、と思いながら彼に手を引かれて連れていかれると。
「はじめましてライカの鍛冶屋へ」
「あら。女性の鍛冶屋さんなのね」
「ええ。最近見習いから仕事を任される事になったんです。ダンテさんから話は聞いています」
ダンテの名前が出てくると思っていないあたしは頭の中で考えたりした。慣れていないから上手く伝えておいてくれたのかしら。そこまでしなくても大丈夫なのに、ダンテってば心配症なのだから。
「ささ。武器は用意しています。奥の部屋へどうぞ」
「……ええ?」
「あれ? 何も聞いてないんですか?」
あたしと女性の話がかみ合っていない事に気付くと、女性はそう問いかけてきた。
「何も聞いていないわ。ただこの鍛冶屋が一番いいと聞いているだけなのよ」
「ふふっ、ダンテさんらしいですね。それなら尚更行きましょうか」
「……ええ」
種明かしをしてくれると思っていたのに、彼女は楽しそうに微笑むばかり。サザを先頭にあたし達三人は疑問を抱えながらついていく事にした。
「サイレ、ミゲル、ダンテから何か聞いてる?」
「「何も……」」
「そうよね。あたしもなのよ」
ダンテの名前を出した瞬間、ミゲルの声のトーンが下がった気がした。あたしはさっきの仕返しとばかりに突っ込んで聞いてみる事にするの。
「ミゲル、どうしたの? ダンテの名前を出した瞬間にテンション下がってない?」
「……余計な事を思い出しただけよ」
「ふふっ。ミゲルってば」
「ん?」
真っ青なミゲルに対して頬を赤らめるサイレの表情が対照的で何故か寒気がする。なんとなくだけど、これ以上聞いてはいけない気がしたあたしは自己防衛の為、スタスタと前に向いた。