特別なポーション
あたしとミゲルは時間が経つにつれ落ち着いていった。まぁ、あたしはいつでも落ち着いているんだけど、ミゲルがあんなふうに豹変するとは考えれなかった。そう考えるとサイレって、ある意味凄いのかも、と感心してしまうのよね。
あたし達はサイレ達の元へと向かった。サザはサイレが強制連行していったから一緒にいるものね。大人の荒れる姿は子供にとってはトラウマものだったと思うの。だから今更だけど、心配してる。
「ミゲル、体調悪いのは仕方ない事だけど、錯乱するのはどうかと思うわよ?」
あたしの言葉を聞いて、驚きを隠せないミゲル。体調が悪い事に、このあたしが気づいていないとでも思ったのかしら。おじさんから幼少の頃、ミゲルの悪い癖について教えてもらってたから分かるわよ、そりゃあ。
体調面とメンタル面で限界が来ると、さっきのように暴れてしまうらしい。話で聞いていたけれど、直視すると圧倒されたわ。
「ジュビア、気づいてたの?」
あたし達は少しずつだけど前に進んでいく。人込みをかき分けながら、サザの元へ。ミゲルは正直戻りたくないのだろう。戸惑いながらも、歩いているけど、速度が遅すぎるもの。
「当たり前よ、何年の付き合いだと思ってんの?」
本当はおじさんから聞いていたと言えばよかったのかもしれないけれど、あえて言わずにオブラートに包んでみたりした。以前から知られていたと知ってしまえば、ミゲルにとって都合が悪いだろう、と考えているから。
何も考えてないように見えて、一応考えているのよ。じゃないと長い付き合いなんて出来ないし、人間関係を円滑に纏めるとか無理だもの。相手がいての自分だからね。
「あたしはいいんだけど、サザがどう思うかよねー」
「……そんなに酷かったかしら?」
「相当ね」
ミゲルもサザの事を気にいっているから、余計心配しちゃうのよね。本音を言えばあたしだけのサザなんだけど、弱っている人間を跳ねのけてまで、独占しようとは思えない。そう考えると、あたしも甘いのだろうか。
「サイレもいるんだけど、大丈夫」
「……え、え。少し落ち着いたし。ジュビアに分けてもらったポーションのおかげでどうにかよ」
「ならよかった。あのポーションは特別だからね。メンタルにも効くし」
「何で作られているの? 初めてみるものだけど……」
聞かれて答えるべきかどうか悩んでしまう。ずっと隠してきたものをこんな事で使用するなんてあり得ない事だけど、どうしてもこのポーション以外のものではミゲルの暴走を抑え込む事は不可能だと感じたから使うしかないと判断したの。
「いつか分かると思うわよ? それよりも二人の元へ行くのが先決」
今はまだ言うべきじゃないと判断したあたしは、急かすように言葉を吐き、ミゲルの手を掴んで走り出した。