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踊ってばかりいないでさっさと鑑定しなさい。  作者: 法蓮


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仕事より踊っている方が楽しいに決まってるわよ!①

 いつも音の中心でいたい、この花の中で幻想と戯れてあたしはステップを踏む。雑草がある所からも花が新しく咲き、新しい命が誕生するこの瞬間が踊り子として最高の舞台。踊りは心で踊るのよ、舞台がなくても自分の踊りと歌があればそこが舞台へと変化する。人々の(すさ)んだ心に癒しを与えるのも私のすべき事。


 「ジュビア、また踊ってるの?」


 観客の中から微かに聞こえてくるのはいつも来てくれる男の子、名前は確かサザと言ってたのを記憶しているわ。可愛い可愛い私の最初のお客様だもの。最近では踊りを認めてくれるようになったから観客が増えたけど、何故かサザの声はどんなに小さな音でも聞こえてしまう。今までそんな人間と出会った事のなかったから自分でも驚いてる。


 踊り終えるとワッと歓声が広がる。あたしは満面の笑みで微笑んだりする、ほらよく言うでしょ女は愛嬌って、それよそれ。


 (まぁ唯一効かないのが一名いるんだけどね)


 以前は観客なんていなかったからサザの言葉に踊りながら返せていたけどここまで多くなると特別扱いをするってのもよくないのよね。純粋だからまだ大人のように状況を把握出来ないけど、そこも天使の姿なのかもしれない。


 集まっていた人達も踊りが終わり『鑑定士』ジュビアに戻ると散っていく。周りに堅物とか怖いとか言われているの気づいているんだけど、踊り子ジュビアになると別人になるような感じがして、心から楽しめる。仕事とプライベートを分けたいタイプだからすごーく助かるんだけどね。


 「ねーねージュビア。ぼくの事嫌い?」

 「どうして?」

 「さっき話しかけたのに無視するの何で?」


 うーん、この子にどうやって説明したらいいの?あたしの服の裾をか弱い力で引っ張る姿……可愛すぎるんですけど。そしてこのうるうるな瞳。いつもながら『お客さんいる時はお話出来ないの』と言っても『なんで?』で終わるのが見える。預言者じゃなくても予想つくわ。


 (こういう時は……あれ(・・)ね)


 あたしは両ひざを地面につき、サザの目を見つめる。そして言葉の代わりにごまかすように抱きしめた。ヤケだよ、ホント。だってどうしたらこの子の機嫌を直せるのか分からないんだもの。


 サザをギュッと抱きしめながら耳元で囁いてみたりする意地悪を決行してみる。男の人ならドキッとするんだろうけど、この子はまだ五歳。果たしてどんな反応が見れるのか楽しみだわ。


 (年甲斐もなくわくわくしてるってどういう事よ)


 自分で自分を突っ込んでしまうのは性格なのよね。口に出てないか不安になる時もあるけど、どうにか隠せれているようで一安心。


 「踊りは天国なのよ」

 「天国ってどこなの?」


 はえ? そうくるとか予想外なんですけど……まぁいいけどね。そんな所も子供らしくて可愛いし、なんたってこの清らかな瞳がたまらない。うーん、あたしと年齢交換してくれないかしら。さてさて次はどんな回答が出てくるのか楽しみになってきちゃった。もっと意地悪して純粋な天使を撃退しないと気がすまない。


 「綺麗な所よ、癒される場所」

 「ふぅーん、ジュビアは行ったことあるんだ」

 

 ぐはっ、行った事ある訳ないわよ、そんな所。行っちゃったら戻ってこれない一方通行の場所なのよ。例えとして言っただけなんだけど、サザには難しすぎるみたいで、なんだか笑ってしまう。あたしにもこんな純粋無垢な時代があったんだと思うと少し恥ずかしくなるけど、微笑ましくも思う。きっとサザもこうやって大人になって純粋さから汚れにかわっていくんだわ。少し残念。


 仲間になれると思えば問題解決なんだけどね──

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