第2話 ~ここは危険なダンジョン。
単純な話、多勢に無勢ってヤツ。今の俺ならそう簡単に殺られるようなことはない、魔物は当然のことながら探索者にも。…がしかし、例え弱い相手でも戦い続ければ疲れる。そして強くても、疲れてしまえば手足も出なくなる。そうなれば、格下にも負けてしまうだろう。
そういうわけで、都市に所属する探索者達が俺を狙って攻勢に出てきたのだ。大半は俺よりも弱いだろう、けれど俺以上も多くいると考える。…となれば逃げるしかない、大勢を相手に無双が出来ると自惚れることはしないさ。俺もぱっくんも死にたくはない、まだまだ生き続けたいから。
…にしても、何で今になってこうも出てきた? 襲い掛かってくる探索者を倒しすぎたか? 情けを掛けて殺さないように立ち回ったんだけど、…殺しておけば良かったか? …何にせよ、逃げる為に抵抗はさせて貰う。殺られてなるものかよ!
………とそんなわけで、逃亡の果てに辿り着いたのがここ富士・青木ヶ原樹海ダンジョンなのだ。ダンジョンの魔物は都市外の魔物よりも強い、特にこの富士・青木ヶ原樹海ダンジョンは。都市外に多く徘徊しているのはスライムやゴブリン等の弱い魔物、強い魔物は人里離れた場所にいるから遭遇率が低い。
通常のダンジョンも最初はスライムで階層が変わるごとに強くなる、俺が確認出来たのはオークの集団までかな。単体なら弱いんだけど、集団だと一気に強くなる。弓使いや魔法使いが混ざるからな、やっぱり連携は厄介だよ。どんなもんかとダンジョンへ潜った時に遭遇、何とか退けたけど…ソロでは厳しい。それ以来ダンジョンへは潜っていない、探索者と鉢合わす可能性も高いしね。
…でこの富士・青木ヶ原樹海ダンジョン、最初に遭遇したのがビッグスパイダー。黒と黄のシマシマ、早い話がジョロウグモ。めっちゃビビった、何せ音も無く上から降りてきたんだから。しかも速いし糸を飛ばしてくる、火の魔法とぱっくんがいなかったら死んでたね。ぱっくんが糸を吸収してくれたから立ち回れた、それに虫系だから火に弱いってーのも助かった。ぱっくん防御の隙にファイアーをぶつけまくったら倒せたわけよ、当てるのが難しかったけど。初っぱなから強力な魔物、それ故に日本最大級…というより日本最難関ダンジョンと判断したのさ。
因みに魔物の名前が分かるのは〈鑑定〉のお陰だ、それしか分からんけど。LV1じゃまだ低いようだ、LVを上げなければ詳しいことが分からない。魔物を知るにはやはりLV上げだな、地道に生きる為…頑張ろう。
このダンジョンで過ごしてから多分数ヶ月、…今の俺達がいるわけさ。お陰様でステータスが大きく上がった、さっき見ていたステータスね。基本は逃げて潜み、罠を仕掛けて戦い生き残っている。富士・青木ヶ原樹海ダンジョンの浅い所はもう大丈夫、そろそろ富士山の方を目指してみるべきか? ジャングルのような密林と化している樹海、その木々の間からたまに富士山が見えるから迷わないと思うし。
樹海を出て探索者達に追われるのも嫌だ、そう考えれば進むしかないだろう。この浅い所もいずれは探索者達が来ると考えれば、留まり生活するのは危険。それに何だかんだと考えるよりも、奥が気になって気になって。結局俺は男ってわけですよ、危険と分かっていても知りたい。慎重に進めばそう簡単に死ぬことはないだろう、…攻略を目指してやるぜ。
途中で死ぬかもしれないが今更だ、何度も死にかけてきたんだし。世界初かは分からんけど、日本初の攻略者になってやる。しかもそこらの普通のダンジョンではなく、格上の富士・青木ヶ原樹海ダンジョンの攻略。気違いの類いになるがやってやる、俺には何もないんだから。力の限りやってやるぜ! 頑張ろうな、ぱっくん!!
…というわけで、今いる場所より奥へ進んでみた。…そうしたらいたよ大蛇が、アナコンダっぽいデカイ奴! とりあえず戦う前に〈鑑定〉を使ってみよう、LV2になったらステータスが見えるようになったのだ。
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【ステータス】
個体名:青木ヶ原大蛇
種族:大蛇
筋力:C
頑丈:C+
器用:D
知力:E+
精神:D-
体力:C
魔力:E+
素早さ:D+
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見えるのはステータスだけでスキルは見えんのだけど、…青木ヶ原大蛇? …強くね? ステータスは俺の方が若干高い、…がスキルを合わせたらどうなるか。そのスキルが見えれば戦うか逃げるかの二択になるんだけど、…見えない現状では逃げる一択。今は逃げて〈鑑定〉のLVを上げ、相手のスキルが見えるようになってから再度挑戦しよう。
今までは〈鑑定〉のLVが1でステータスが見えなくとも戦ってきたが、今なら言える…蛮勇であったと。相手のスキルが分からんのは危険、今の俺がいるのは運が良かっただけだろう。石橋を叩いて何とやら、今から慎重に歩んでいくよ。…まぁ〈鑑定〉のLVが上がってステータスが見えるようになって、現実が見えるようになったのさ。自身と相手のステータスを見比べて、…本当によく生き残れたな俺。ぱっくんの存在が大きい、一人じゃとっくに死んでただろうね。
そういうわけで撤退だ撤退、気付かれる前に…って気付かれているっぽい! ヤバイヤバイ、形振り構わずに逃げるんだよぉ! 俺の方が速いし、逃げ切ってみせるさ!